前の会社で内覧した人に売れる?|不動産会社を変えた大阪市の家と2年
2026/10/16
「検討中のお客様がいらっしゃるので、更新していただけたらと思いまして」
夕方にかかってきた担当者さんの電話を切ったあと、夕飯の片付けをしながら、ずっとその一言が頭から離れない。変えたら、あの人を逃すのかな。変えたあとにあの人が来たら、私が約束を破ったことになるのかな——そんな夜を過ごしている方に向けて書きました。
先に答えを3行で
1. 売ることはできます。ただし、任せていた期間が終わってから2年は注意が要ります。前の会社を「外して」その人と契約すると、前の会社から報酬を請求されうる決まりが、標準の契約書のひな形にあるからです。
2. 最初に確かめるのは、その方が「どの会社の案内で来たか」と、紹介から今までの経緯です。前の会社が自分で連れてきたお客様なら、前の会社に買主様側の仲介として入ってもらう形があります。してはいけないのは、前の会社を外して、買主様と直接契約することです。
3. 今日は媒介契約書(売り出しを不動産会社に任せたときの契約書)を出してください。満了日と「直接取引」の条に付箋を貼るところまでで十分です。
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。更新するか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「検討中のお客様がいるので、更新を」と言われたら、まず中身を3つ聞く

「前向きに検討されている方が、お一人いらっしゃいます」
この言葉、3週間くらい同じ形で聞いていませんか? この章では、「検討中」という一語の中身を3つの質問で確かめる方法をお話しします。中身が分かれば、こわさの半分は消えます。
▶ たとえば、こんな売主様です
少し具体的な場面で考えますね(人物も数字も、説明のための例です)。
Aさん、47歳。医療事務の仕事をしながら、ご主人と高校1年の娘さんと3人で暮らしています。住まいは東淀川区の3LDKのマンション(築21年・約72㎡)です。娘さんの通学と、ご主人の実家の近くに移るための住み替えで、新居は売れてから決めるつもりです。
7月27日に、1社だけに任せる専任媒介で、3,380万円で売り出しました。この例の専任媒介の契約期間は3か月なので、満了は10月26日。これまでの内覧は4組です。そのうち1組について、担当者さんから「前向きに検討中です」と聞き続けています。
毎週の報告メールは「引き続き検討中です」から先がありません。更新を断ればその1組を逃す気がするし、担当者さんにも悪い。ご主人にどう説明すればいいかも分からない。そんな状態で、10月14日の夜、娘さんが寝たあとのダイニングでスマホを開いた——というのがAさんです。
▶ 「検討中」には3つの段がある
同じ「検討中」でも、中身はまったく違います。私はいつも、次の3つの段に分けて考えています。

1段目は、内覧のあとに「前向きに考えます」と口で言っている段です。正直なところ、ここで止まったまま話が消えることも少なくありません。家探しをしている方は、ほかの物件も同時に見ているからです。
2段目は、書面の申込みが出ている段。値段や引渡しの時期を書いた購入申込書(買いたい値段や条件を書いた紙)が、担当者さんの手元に届いています。
3段目は、そのうえで住宅ローンの事前審査まで通っている段です。事前審査は、銀行に「この人にいくらまで貸せそうか」を先に見てもらうことです。ここまで来ると、買う意思と資金の見込みを具体的に確かめられます。ただし事前審査は本審査の承認や契約成立を保証するものではありません。現金購入なら、ローン審査の代わりに資金と条件を確認します。
▶ 担当者さんに聞く3つの質問
電話やメールで、次の3つをそのまま聞いてみてください。
1. 「その方から、書面の申込み(購入申込書)は出ていますか?」
2. 「住宅ローンの事前審査には、もう出されていますか?」
3. 「その方の窓口は、どちらの会社ですか? 御社のお客様ですか、それともレインズ(不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み)を見た別の会社のお客様ですか?」
3つ目は意外に思うかもしれません。でも、内覧に来た人がどこにつながっているかは、第2章からの話にそのまま効いてきます。名前や連絡先を聞く必要はありません。「どの会社の窓口か」だけで十分です。
聞き方は、責めるような言い方にしなくて大丈夫です。担当者さんも、買主様の気持ちを確かめきれていないことはよくあります。「更新するか決めたいので、今どの段なのか教えてください」と目的を添えると、答えてもらいやすいです。
▶ 書面の申込みは、自分の目でも確かめられる
2025年1月から、レインズには「取引状況」を登録することが決まりになりました。状況は「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つです。
売り出しのときに受け取った「登録証明書」に、二次元コードが付いていないか見てください。スマホで読み取れば、今どの状況で登録されているかを売主様が自分で見られます。書面の申込みが出ていれば、ここが「書面による購入申込みあり」になっているはずです。登録証明書の見方は、こちらの記事に詳しく書いています → レインズ登録を自分で確認する方法!売主向けの手順を解説
▶ 段ごとの決め方
・1段目(口頭だけ):更新するかどうかの理由にしない。その方が本気なら、満了の後でも買う道はあります(第2章〜第4章)
・2段目(書面の申込みあり):申込みの日付と満了日をカレンダーに並べて、満了までに話がまとまりそうかで決める
・3段目(事前審査も通っている):会社を変える話はいったん止めて、その方との話を進めるほうが自然です。申込みが入った後の流れは、こちらの記事で書いています → 申込みが入ったら内覧は止める?|大阪市の家で止める日と掲載を下ろす日
近畿レインズのまとめでは、2026年9月の大阪市の中古マンションの成約は383件でした。前の年の同じ月は523件です(近畿レインズ・2026年9月度資料)。決まる数が少ない時期は、「検討中」のまま日がたつことも増えると、私は感じています。だからこそ、段を確かめる意味があります。
「そもそも会社を変えるべきか」を、内覧の数や問い合わせの数から考えたい方もいると思います。その判断は、note に別の記事で書きました → 「値下げしましょう」と言われた夜に。反響の4段で分かる、価格か見せ方か
この記事は「内覧した人をどうするか」に絞ってお話しします。
私自身は、売主様への報告書に、他社から来た問い合わせも書いています。「検討中」と書くときは、どの会社の、どの段のお客様なのかまで添えます。更新を決めるときに売主様が必要とするのは、その中身だと考えているからです。
では、もしAさんが会社を変えると決めたら、あの1組はどうなるのか。次の章で、契約書に書いてある「2年」の話を一緒に読んでいきましょう。
第2章:内覧した人は誰につながっているか——満了から2年の決まりを読む

「変えたあとに、あの人が買いたいって言ってきたら……私、契約違反になるの?」
この章では、その漠然とした不安の正体を、契約書の1つの条から読み解きます。読み終わるころには、「何をしたら問題になって、何なら問題になりにくいか」の線が見えているはずです。
▶ 内覧した人の連絡先は、売主様の手元にない
まず、当たり前のようで大事なことから。内覧に来た人の名前や連絡先は、通常、売主様の手元にはありません。持っているのは、その人を案内した会社です。
案内した会社は2通りあります。売り出しを任せた前の会社そのものか、レインズで物件を見つけて買主様を連れてきた別の会社か。第1章の3つ目の質問で「窓口はどちらの会社ですか?」と聞いたのは、このためです。
Aさんが会社を変えても、その人と前の会社(または別の会社)とのつながりは切れません。あの人がまた家を見たいと思ったら、たいていはその窓口の会社を通して連絡が来ます。
▶ 標準の約款に書いてある「2年」
国土交通省が示している専任媒介契約の標準の約款(契約書のひな形)には、おおよそ次の決まりがあります。
契約の期間中、または期間が終わってから2年以内に、前の会社の紹介で知った相手と、前の会社を排除して売買の契約をした。 そのときは、前の会社は、契約の成立に寄与した割合に応じた報酬を請求できる。
(出典:国土交通省「標準専任媒介契約約款」。言い回しは分かりやすく直しています)
多くの不動産会社は、この標準の約款をもとに契約書を作っています。手元の媒介契約書の後ろのほうに、「直接取引」といった見出しで似た条が入っていないか見てみてください。ここが、冒頭の「付箋を貼る」場所です。
▶ 要の言葉は「排除して」
この条で一番大事なのは、「2年」よりも「排除して」のほうです。
前の会社が紹介してくれた人と、その会社を排除して契約を進めた。売主様と買主様だけの直接契約に限らず、別の仲介会社を通した場合にも問題になることがあります。そのときに「ここまで案内して、話を進めてきたのはうちですよ」と、関わった分の報酬を請求できる、という決まりです。
裏を返すと、会社を変えたこと自体や、前の会社で内覧した人がもう一度興味を持つこと自体を禁じている条ではありません。問題になりうるのは、「外して」契約したときです。
▶ 誰の案内で来た方かで、考え方が変わる
ここは正直、とてもデリケートなところです。私の考え方を、場合を分けて書きます。

・前の会社が、自分で連れてきたお客様:会社を変えたあとに、前の会社から「うちのお客様が買いたいと言っています」と連絡が来ることがあります。このときは、前の会社に買主様側の仲介として入ってもらう形が自然です
・レインズを見た別の会社が、連れてきたお客様:前の会社の担当者さんが案内したお客様ではありません。しばらくして、そのお客様が別の会社を通してもう一度来ることもあります。買主様は、どの会社を通して買うかを自分で選べますし、その会社の担当者さんが熱心に動いてくれた、ということもあるはずです。ただし、案内した会社が別であることだけで、前の会社の紹介や契約成立への寄与がなくなるとは限りません。新しい会社に以前の内覧を伝え、契約書と経緯を確認したうえで、前の会社への連絡・調整が必要か判断してもらいます
・どちらの場合でもダメなこと:前の会社を外して、売主様と買主様が直接契約することです。条の言う「排除して」に一番近い形です
Aさんで考えてみます。前の担当者さんから「うちのお客様が、まだ興味があるそうです」と連絡が来て、前の会社に買主様側として入ってもらう。関係者が合意し、前の会社も実際に仲介に関わる形を相談します。役割と報酬の負担・配分も、契約前に整理しておきます。マンションのエントランスでその人に声をかけられ、2人で値段を決めてしまう。これがダメな形です。同じ「あの人に売る」でも、通り道でこれだけ違います。
実際の契約でどう扱われるかは、それぞれの契約書の書き方や経緯で変わることもあります。気になる方は、次の「自分の契約書で確かめること」を見てください。
▶ 自分の契約書で確かめること
上で引いたのは「専任媒介」の標準の約款です。実際の契約が標準約款に基づくか、特約があるかも含め、まずは自分の契約書を確認します。「2年」はこの条項の対象期間であり、2年間売れないという意味ではありません。期間だけで一切の請求がなくなるとも決めつけないでください。
見るのは3つです。
1. 期間が終わった後、何年が対象か
2. 「排除して」「直接」などの言葉で、どんなときが対象になっているか
3. 請求できるのが「報酬」なのか、それとも「費用」や「違約金」なのか
読んでみて分からなかったり、前の会社と話が食い違ったりしたら、その場で決めないでください。契約書を持って、弁護士や、大阪府の宅建業の相談窓口に聞くのが安心です。
ここで1つ、私の立場の話をさせてください。仲介の会社は、ある売主様にとっては「前の会社」になり、別の売主様にとっては「次の会社」になります。私も同じです。だから私は、自分がどちらの側に立っても同じ線で動くと決めています。前の会社が自分で連れてきたお客様が来たら、前の会社に入ってもらう形を相談する。自分が前の会社の側なら、売主様が次の会社で売ることを止めない。それだけです。
決まりの線が見えたら、次は「満了の前に何をしておくか」です。更新しない連絡に1行を足しておくと、その後の話がずっと進めやすくなります。
第3章:満了の前に、前の会社へ聞くことと伝える1行

「更新しません、って、どう言えばいいんだろう。角が立たないかな」
この章では、変えると決めたときに、内覧した人を失わない形で前の会社に連絡する手順をお話しします。用意するものから、送る1行まで、そのまま使える形にしました。
▶ 用意するもの(3つ)
テーブルの上に、次の3つを並べてください。
1. 媒介契約書(第2章で付箋を貼ったもの)
2. レインズの登録証明書
3. これまでの報告書(メールなら、印刷するかスクリーンショットを1つのフォルダにまとめる)
ここまでで15分ほど。この3つがあれば、前の会社とも新しい会社とも、同じ紙を見ながら話ができます。
▶ 手順1:満了日をカレンダーに書く
媒介契約書の「有効期間」の欄を見て、満了日を家族のカレンダーに書き込みます。Aさんなら10月26日です。
標準の約款では、媒介契約は売主様が申し出なければ更新されません。黙っていたら自動で延びる、という形ではないということです。ただ、「更新しませんでした」と口で済ませるより、記録が残る形で伝えておくほうが、あとの話がはっきりします。
▶ 手順2:前の会社に聞く2つ
満了の1〜2週間前に、担当者さんに次の2つを聞きます。
1. 「これまで内覧した方は、何組でしたか?」
2. 「検討中の方から、書面の申込みは出ていますか?」
名前や連絡先は聞かなくて大丈夫です。むしろ聞かないほうが、「直接連絡するつもりはない」ことが伝わります。答えは報告書の束にメモを1枚足しておいてください。
▶ 手順3:更新しない連絡に、1行を足す
更新しないことを伝えるとき、文面の最後に次の1行を足します。
「御社のお客様で検討中の方がいらっしゃいましたら、次の会社での掲載のあとも、御社を窓口にしてご案内いただければと思います」
この1行で、2つのことが伝わります。前の会社のお客様を外すつもりがないこと。そして、その方が次の掲載を見て申し込むときは、前の会社に買主様側として入ってほしいこと。第2章の「外していない形」を、先に伝えておくわけです。
担当者さんにとっても、自分のお客様の行き先が見える1行です。更新を断る連絡が「今までありがとうございました」だけで終わらないので、角も立ちにくくなります。
メールでかまいません。送ったメールは消さずに残しておきましょう。更新しない連絡の書き方や手続きの流れは、こちらの記事にまとめています → 大阪の不動産売却で会社変更する手順と失敗しない注意点
▶ 住み替えで期限がある方は、日付を1行で
新居の引渡しや、お子さんの学期の区切りなど、動かせない日付がある方は、そこから逆に数えて1行で書いておきます。
たとえば「3月末に引っ越したい → 2月中に引渡し → 1月中に売買契約 → 12月中に申込み」。こう並べると、満了の判断を「検討中の1組」のために1か月先送りしたとき、どこが詰まるかが見えます。私の経験では、11月中に買主様が決まっていれば、年内の引渡しに間に合う場合があります。ただしローンの本審査、登記、引っ越し、金融機関の休業日などで変わるので、保証できる日程ではありません。
切り替えの相談をするときは、最初に3つを用意してください。「満了日」「内覧した方がいたかどうか」「契約書の写し」です。前の会社のお客様がいるなら、その方も含めて最初から段取りを組めるからです。
ここまで手を動かしてみて「うちの満了日だと、間に合う?」と思ったら、公式LINEで聞いてください。満了日と、報告書の1枚目の写真を送ってもらえると話が早いです。→ 公式LINEで相談する
さて、ここまでは「変える前」の話でした。次の章は、変えた後に「やっぱり買いたい」という連絡が来た日のことです。
第4章:変えた後に「やっぱり買いたい」と言われたら——3つの場面

「前に見たあのマンション、まだ売っていますか?」
会社を変えて3週間。そんな連絡が、思いもしない形で届くことがあります。この章では、よくある3つの場面ごとに、誰に何を伝えればいいかをお話しします。どれも共通するのは、たった1つのことです。
▶ 場面1:前の会社から「うちのお客様が買いたいと言っています」
前の担当者さんから連絡が来るパターンです。ここで売主様が「じゃあ、お願いします」と自分で進めるのは控えてください。まず新しい会社に「前の会社から、内覧した方が買いたいと連絡がありました」とすぐ伝えます。
そのうえで、関係者の合意を確認し、前の会社に買主様側の仲介として入ってもらう形を相談します。売主様側・買主様側の役割と報酬の扱いも、契約前に整理します。第2章の「外していない形」です。前の会社が自分で案内したお客様なので、この形がいちばん自然です。
▶ 場面2:前に別の会社の案内で見た方が、また別の会社を通して来た
前の会社に任せていたときに、レインズを見た別の会社がお客様を連れてきて、内覧してもらった。会社を変えてしばらくしてから、その方が、今度はまた別の会社を通して申し込んできた——こういうこともあります。
この方は、前の会社の担当者さんが自分で案内したお客様ではありません。買主様は、どの会社を通して買うかを自分で選べます。今の会社の担当者さんが、熱心に探して営業してくれた結果ということもあるでしょう。ただし、案内した会社が別であることだけで、前の会社の紹介や契約成立への寄与がなくなるとは限りません。新しい会社に以前の内覧を伝え、契約書と経緯を確認したうえで、前の会社への連絡・調整が必要か判断してもらいます。
新しい会社の担当者さんには、「前の会社のときにも見に来た方です」と伝えます。それだけで済ませず、紹介・案内・交渉の経緯を報告書などで確認してもらってください。
▶ 場面3:買主様が売主様に直接声をかけてきた
マンションの場合、内覧に来た方と、共用部やエントランスで顔を合わせることもあります。「あのお部屋、まだ売っていますか? 直接だと、いくらになります?」と聞かれることも。
その場では、値段を答えないでください。「売り出しは不動産会社にお願いしているので、そちらに連絡してもらえますか」と、新しい会社の連絡先を伝えるだけで十分です。ここで値段の話を始めると、第2章の「ダメな形」に近づいてしまいます。
▶ 3つに共通するのは「自分だけで進めない」
3つの場面は入口が違いますが、守ることは同じです。
1. 新しい会社に、すぐ伝える
2. 前の会社が自分で案内したお客様なら、前の会社に入ってもらう
3. その場で値段や条件を決めない
前の会社を外して、買主様と直接まとめてしまうことだけは、どの場面でもしないでください。申込みが入った後に、ほかの内覧をどう止めるかは、こちらの記事で書いています → 申込みが入ったら内覧は止める?|大阪市の家で止める日と掲載を下ろす日
▶ 私は、どの会社のお客様も同じに扱う
私は囲い込み(任された物件を自社で抱え込み、他社からの購入希望を通さないこと)をしません。前の会社のお客様も、レインズで物件を見つけた別の会社のお客様も、私にとっては同じ「買主様」です。
実際に、レインズを通じて他社様から購入希望のお客様をご紹介いただき、成約した取引もあります。前の会社のお客様でも、それと同じです。
部屋止め(申込みが入った物件を、ほかの方に案内しないこと)をするのは、基本は買主様の住宅ローンの事前審査が通ってから。この扱いも、自社の買主様か他社の買主様かで変えません。内覧を止める判断と、レインズの取引状況の登録は別です。書面の申込みなどの事実を機構のルールに沿って登録します。売買契約が成立したら、ネット広告の掲載を終了し、レインズでは成約の報告を行います。
場面への備えができたら、最後にもう1つ考えてほしいことがあります。そもそも「変える」以外の道はないのか、です。
第5章:変えない道も並べる——担当だけ変える・見せ方を見直す

「会社を変えたら、売れるようになるんでしょうか」
この章では、「変える/変えない」の2択から一歩下がって、ほかの道も並べてみます。Aさんのように「誰にも不義理をしたくない」方ほど、選べる道は多いほうが楽になります。
▶ 変えても、変わらないことがある
先に正直なことを書きます。売れない理由が値段や物件の条件にあるなら、会社を変えても売れ方はあまり変わらないことが多いです。20年この仕事をしてきて、そう感じる場面を何度も見てきました。
だから、変える前に「何が理由で動いていないのか」を担当者さんと1回だけ話してみてください。内覧が入っているのに決まらないのか、そもそも問い合わせが少ないのか。それだけでも、選ぶ道が変わります。
▶ 会社を変えずにできる2つの道
1. 同じ会社で、担当者さんだけ替えてもらう:会社の窓口に「担当を替えていただけますか」とお願いする道です。会社は同じなので、検討中の方とのつながりもそのまま残ります
2. 同じ会社のまま、写真や紹介文の見せ方を見直す:写真の撮り直し、間取り図や紹介文の書き直しを頼む道です。会社を変えずに、売り方だけを変えます
2つ目について、私が実際に見直した家の話を note に書いています → 【売却日誌・解説】半年動かなかった家で、私が最初に見直した3つ

| 道 | 内覧した人の扱い | 手間 | 向く人 |
| 会社を変える | 紹介の経緯を引継ぎ、前の会社の関与と報酬を確認 | 写真・図面・掲載のやり直し | 売り方そのものを変えたい方 |
| 担当だけ替える | 同じ会社なのでそのまま | 少ない | 会社には不満がなく、やり取りが合わない方 |
| 見せ方を見直す | 同じ会社なのでそのまま | 撮り直しや書き直しの日程 | 問い合わせが少なく、写真や紹介文に心当たりがある方 |
▶ 会社を変えると、何が変わるのか
会社を変えたときに変わるのは、作業の単位で言うと、写真・図面・紹介文・掲載先・内覧の立ち会い・報告の中身です。私の場合、写真撮影も図面や紹介文づくりも内覧の立ち会いも、すべて私自身がしています。掲載先は SUUMO です。
こう書くと「だから私に」と言いたいように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。変わるものが分かれば、「それなら今の会社に頼んで変えてもらえばいい」と判断できる場合もある、ということです。変えない道を選んでも、それは立派な判断です。
Aさんなら、まず「その1組は何段目か」を聞き、その答えを見てから、この表のどれにするかを家族と話すことになります。選べる道が3つあると分かっているだけで、担当者さんへの返事も落ち着いてできるはずです。
次の章では、相談のときによく聞かれる質問に短く答えます。
第6章:よくある質問
▶ Q. 囲い込みはしないですか?
しません。前の会社を含め、どの会社を通じて来た買主様にも同じ資料をお渡しします。報告書には、他社からの問い合わせも書いています。
▶ Q. 前の会社に、変えたことを言わないといけませんか?
更新しないと伝えれば足ります。新しい会社の名前まで伝える必要は、ふつうはありません。ただ、前の会社のお客様で検討中の方がいたなら、第3章の1行を添えておくと、あとでもめにくいです。
▶ Q. 会社を変えたら、どのくらいで売れますか?
変えたから早くなる、とは言えません。分かれ目は、変えた後の3か月で何を見直すかです。値段なのか、写真や紹介文なのか、掲載先なのか。新しい会社と最初に「何を変えるか」を決めておくと、期間の見通しも立てやすくなります。売却の期間全体の目安は、こちらに書いています → 大阪の不動産売却の期間は?早く売るための具体的な流れと短縮法
▶ Q. 前の会社から「うちを通さないなら報酬を」と言われたら?
その場で、払う・断るを決めないでください。まず契約書の条文と、これまでの経緯(いつ誰が内覧し、誰がどう連絡してきたか)を紙に書き出します。それを持って、弁護士か、大阪府の宅建業の相談窓口に相談するのが安心です。第2章で書いたとおり、請求できるかは「外して」契約したかどうかと、契約書の書き方で変わります。
第7章:まとめ+次のアクション——付箋を1枚貼るところから
▶ まとめ
・「検討中」は3つの段に分けて中身を聞く。口頭だけなら、更新の理由にしない
・満了から2年の決まりは、「前の会社を外して契約したとき」の話。前の会社が自分で案内した方なら、前の会社に入ってもらえば、会社を変えた後でもその方と話を進める道はある
・どの場面でも、自分だけで進めない。まず新しい会社に伝え、買主様と直接まとめない
▶ 今日できること(1つ)
媒介契約書を出して、満了日と「直接取引」の条に付箋を貼ってください。条が見つからなければ、「排除」「直接」「2年」の言葉を探すと見つかりやすいです。
▶ 1週間以内にすること(3つ)
1. 前の会社に「検討中の方から、書面の申込みは出ていますか?」と聞く
2. 登録証明書の二次元コードで、レインズの取引状況を見る
3. 家族と「変える・担当だけ替える・見せ方を見直す」のどれにするか話す
▶ 相談したくなったら
付箋を貼って「この条、うちの場合はどう読むの?」「満了日まで、何から手を付ければいい?」と思ったら、公式LINEで聞いてください。
送ってもらえると話が早いのは、満了日と、報告書の1枚目の写真です。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。
相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
「担当者さんに悪いから」「見に来てくれたあの人に悪いから」。会社を変えるかどうか迷う方の多くは、まわりの人のことを先に考えています。その優しさは、売主様として大事なものだと私は思います。
だからこそ、黙って我慢するのでも、黙って変えるのでもなく、中身を聞いて、1行を足して、新しい会社にきちんと伝える。そうすることで、行き違いを減らし、次へ進む段取りを相談できます。今日は付箋を1枚だけ。そこから始めてみてください。
次に読むなら
更新しない連絡の書き方や、変えるときの手続き全体を知りたい方に
検討中の方から書面の申込みが出た後の流れを知りたい方に
売り出しから引渡しまで、全体でどのくらいかかるかを知りたい方に







