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「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行

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「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行

「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行

2026/09/23

「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行

査定に来た担当者に、こう言われた。「この辺りは浸水想定区域なので、契約前の重要事項説明でハザードマップを見せて説明します」。帰ってからマップを開いたけれど、自宅の色が何を意味するのか分からない。奥さんに「浸水のこと、何か言われたん?」と聞かれて、うまく答えられなかった。安くなるのか、昔の道路冠水まで言わないといけないのか、そもそも自分が買主に説明するのか…。3つの疑問が絡まったまま、夜10時にスマホで検索している。そんなあなたに向けて、この記事を書いています。

私は大阪市淀川区で、不動産の売却だけを専門にしている紙谷といいます。宅建士(宅地建物取引士。契約前の重要事項説明ができる国家資格)として、契約のたびに区のハザードマップを開いて買主様に説明している側の人間です。この記事では「値下げ材料になるのか」を3つに分けて考える方法をお話しします。あわせて、売り出し前に見ておく1枚と、告知書に書く1行を、私の実務のとおりに書きます。

この記事で分かること

・水防法に基づく水害ハザードマップがある場合、宅建士は契約前に物件の位置を説明する。大阪市の内水図なども分けて確認する

・値下げ材料になる場合・ならない場合を「区域だけ/被害歴あり/2026年に新しく入った」の3つで分ける

・売り出し前に見る1枚(区の水害ハザードマップの地図面)と、告知書に書く1行(浸水歴)

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一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応を心がけており、お客様のお困りごとを解決に導く不動産売却を手がけています。丁寧なヒアリングを通じて、理想的なプランを大阪でご提案している会社です。

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目次

    第1章:「浸水想定区域です」と言われた日に、実は何が起きているのか

    第1章:「浸水想定区域です」と言われた日に、実は何が起きているのか

    この章では、査定の席で「浸水想定区域です」と言われたとき、法律のうえで何が決まっているのかを整理します。売主様の役割がどこまでなのかも、一緒に。「黙っていればいいのか」という迷いを、まずここで手放してもらえたら、と思って書きました。

    ▶ 1社目は何も言わず、2社目だけが言った理由

    淀川区の戸建てにお住まいのAさん(54歳・仮名)は、奈良への住み替えを考えて2社に訪問査定を頼みました。1社目は間取りと築年数を見て金額を出しただけ。2社目の担当者は「淀川氾濫の想定区域なので、契約前の重要事項説明でマップを見せて説明します」と言った。同じ家なのに、片方だけが浸水の話をする。「1社目は気づいていないのか、それとも隠しているのか」と、帰り道でモヤモヤしたそうです。

    答えは、たぶんどちらでもありません。2020年8月28日に宅建業法(宅地建物取引業法)の施行規則が改正されました。それ以来、宅建士には義務があります。契約前の重要事項説明で、水防法に基づいて作られた洪水・雨水出水(内水)・高潮のハザードマップがある場合、その上に物件の場所を示して説明する義務です。大阪市の内水図は水防法に基づく図ではありませんが、市は参考として併せて説明するよう求めています。津波の想定も、水防法の説明義務と混同せず確認します。「説明するタイミングは契約前」と決まっているので、査定の席で触れるかどうかは担当者の姿勢しだい。1社目が言わなかったのは「まだその段階ではない」と考えただけかもしれません。査定額に織り込んでいるかどうかは、また別の話です(ここは私の推測です)。

    ▶ 売主様が黙っていても、買主様には必ず伝わる

    大事なのはここです。水防法に基づく水害ハザードマップがある場合、売主様が何も言わなくても、契約の前に宅建士がマップを開いて買主様に物件の位置を示します。しかも、区域の外にある家でもマップ上で位置を示すことになっています。だから「黙っていれば気づかれないかも」という選択肢は、最初から存在しないんです。

    これを聞いて「じゃあ隠しようがないのか」とがっかりする方もいますが、私は逆だと思っています。説明するのは宅建士である私の仕事で、売主様がやることは「自分が知っている事実を私に伝える」だけ。買主様の前で浸水の説明をする役目は、売主様にはありません。

    ▶ 売主様の疑問は3つに分かれる

    Aさんが夜にスマホで検索していたことを整理すると、疑問は3つです。「下がるのか」「告知書(物件状況報告書。売主様が物件の状態を書く書面)に何を書くか」「誰が説明するか」。この3つは絡まっているように見えて、実はバラバラに答えられます。

    答えの置き場も決まっています。「下がるのか」は、区の地図面を1枚見てから、3つに分けて考える(第2章・第3章)。「何を書くか」は、告知書の1行(第4章)。「誰が説明するか」は、3者の分担表(第5章)。この記事では、これを「見る1枚・書く1行・分ける1表」と呼んで、順番に渡していきます。

    私たちは売却専門で、自社で買い取ることをしません。だから「区域だから買取で」と話を流す動機がなく、3つの疑問に売主様の側から正直に答えられます。次の章では、まず「下がるのか」を考える前に必要な1枚、区の水害ハザードマップの読み方から一緒に見ていきましょう。

    第2章:売り出し前に見る1枚——区の水害ハザードマップ「地図面」の読み方

    第2章:売り出し前に見る1枚——区の水害ハザードマップ「地図面」の読み方

    この章では、大阪市の水害ハザードマップの「どのPDFを、どう見るか」を説明します。読み終わるころには、自宅の色と「どの想定の色なのか」を自分で読めるようになります。

    ▶ 見るのは「地図面」のPDF

    大阪市の水害ハザードマップは24区ごとに作られていて、各区のページにPDFが3種類あります。「啓発面」「地図面1」「地図面2(差込版)」の3つ。売主様が見るのは「地図面」です。啓発面には避難の心得だけでなく、想定の計算条件や公表年月も載っています。地図面で場所を見たら、啓発面で図の条件と日付も確かめてください。

    淀川区の地図面には、5種類の想定が載っています。私たちの事務所がある淀川区でも、物件ごとに5種類の図を見比べて確認します。

    淀川区の掲載図の5種類と公表年月。淀川は平成29年6月、神崎川は令和5年12月、天竺川・高川は令和2年1月、高潮は令和2年8月、内水は令和3年3月、津波は平成25年8月。津波は府の令和8年3月31日公表の想定も確認する

    ▶ 色は「想定される浸水の最大深」

    地図の色は「想定条件で計算された浸水の最大の深さ」を表しています。実際の浸水がこの深さを超える場合もあり、安全の上限を示したものではありません。ここでAさんがつまずいたのが「自宅が0.5〜3mなのか、3〜5mなのか分からない」という点でした。色が似ているうえに、想定の種類が変わると同じ場所でも色が変わるからです。

    「で、結局うちは何色なん?」と言いたくなると思います。ですので、最初に覚えてほしいのは「色を1色に決めなくていい」ということ。淀川氾濫の想定では3m以上でも、内水氾濫の想定では0.5m未満、ということはふつうに起きます。想定ごとに違って当たり前です。

    メモするときは「淀川氾濫:◯色、高潮:◯色」のように、想定の名前と色をセットで書いてください。「うちは3m」ではなく「淀川氾濫の想定では3mの色」まで言えると、話が正確になります。買主様との会話でも、私との打ち合わせでも同じです。

    まずは地図面で想定の種類と深さを確認します。水が引くまでの時間(浸水継続時間)など、地図面だけでは分からない条件は、河川管理者などの公表資料も確認します。色だけですべてのリスクが分かるわけではありません。

    ▶ 住所で探すなら「マップナビおおさか」

    PDFを拡大して自宅を探すのが大変なときは、大阪市の地図サービス「マップナビおおさか」で住所を入れる方法もあります。ただし、大阪市は、重要事項説明には市が掲載する水害ハザードマップを添付し、マップナビおおさかは補足資料として使うよう案内しています。私も区の地図面を用意し、同じPDFで物件の位置を確認します。

    確認先:大阪市・宅地建物取引業者向けの案内淀川区の水害ハザードマップ

    ▶ 地名ごとの「うちは深い・浅い」は書かない

    「淀川区の◯◯は深い」「東淀川区の◯◯は浅い」といった地名単位の話を、私はこの記事で書きません。区の中でも通り1本で色が変わることがあり、私が確認していないことを書くと、あなたの家の色と違ったときに困るからです。自宅の色は、自分の目で地図面を見て決めてください。

    さて、自宅の色と想定の種類が分かったら、いよいよ「値下げ材料になるのか」です。次の章で3つに分けて見ていきましょう。

    第3章:値下げ材料になるのか——「区域」「被害歴」「新規指定」の3つで分ける

    第3章:値下げ材料になるのか——「区域」「被害歴」「新規指定」の3つで分ける

    この章では、いちばん気になる「安くなるのか」を、ひとまとめにせず3つに分けて考えます。読み終わったとき、買主様側から「ハザードマップの件で値引きを」と言われても、根拠を聞き返せる状態になっている。それがこの章の目標です。

    ▶ 「区域=安くなる」で一括りにしない

    20年この仕事をしてきた私の感覚では、区域かどうかよりも「その家に何があったか」のほうが、値段と買主様の反応を左右しやすいです。仲介各社の実務解説を読み比べても、「区域に入っているだけでは大きく下がることは少ない。ただし過去に被害があった家や、新しく区域に入った家は別」という書き方が多く、私の見方と同じでした。

    ネットには「浸水深1mで何%下がる」「7〜8割まで下がる」といった数字も見かけます。でも私は原典(元の研究や資料)を確認できていないので、ここでは使いません。数字が独り歩きすると、売主様が必要以上に安く手放す理由になりかねないからです。

    ▶ 「浸水想定の3分け」

    私が使っている判断軸を「浸水想定の3分け」と呼んでいます。自宅がどれに当たるかを、第2章のメモと照らしてみてください。

    浸水想定の3分け。①区域だけ(被害歴なし)/②被害歴あり/③2026年に新しく入った、の3列に「状態」「値段への出方」「売主様がすること」を並べた表。下段に、値引きを求められたら「どの想定の、どの深さを根拠にした金額ですか」と聞き返す、という一文

    ①区域だけ(被害歴なし)
    大阪市は広い範囲が何かしらの想定区域に入っていて、周辺の家も同じ条件で売買されています。私の見方では、周辺の成約事例と比べて値段を決める時点で、区域であることはすでに織り込まれていることが多い(ここは私の推測を含みます)。売主様がすることは、地図面の色と想定の種類を把握しておくこと。それだけです。

    ②被害歴あり(床下浸水・床上浸水など)
    これは告知の対象です。買主様は「修繕にいくらかかったか」「保険はどうなるか」を見積もる材料にするので、値段に出ることがあります。ただし、下がるかどうかは「いつ・どこまで・どう直したか」の中身しだい。売主様がすることは、第4章で書く「1行」を正確に用意することです。

    ③2026年に新しく区域に入った
    2026年3月31日に大阪府が津波の浸水想定を見直して公表しました。4月には、芥川(国管理区間)と東横堀川の浸水想定区域図も新しく公表され、大阪市の水害ハザードマップのページに案内が加わっています。前は入っていなかった家が新しく入った場合、公表前の成約事例には「新しい想定」が反映されていない可能性があります。価格への影響は、事例の時期と物件の条件を比較して考えます。どの区がどう変わったかは私も確認しきれていないので、市の掲載図と府などの最新想定を見比べます。ページの更新日だけで、図が新しくなったとは判断しません。売主様がすることは「いつから入ったのか」を私と一緒に確かめることです。

    ▶ 買主様の火災保険料が変わるという事実

    もうひとつ、値段そのものではなく買主様の維持費に関わる話があります。2024年10月の火災保険改定では、水災(水害の補償)のリスクを市区町村別の5区分(水災等地)で保険料に反映する仕組みが導入されました。損害保険料率算出機構が示す「5等地は1等地の約1.2倍」は、火災保険全体の参考純率の比較です。実際の契約保険料が一律に1.2倍になるという意味ではなく、保険会社や補償条件によって見積額は変わります(損害保険料率算出機構の説明資料)。大阪市の各区がどの等地かは私は確認していませんので、気になる方は保険会社に聞いてみてください。買主様がここを見て「維持費が高くなるから」と交渉してくることはありえます。事実として知っておくと、慌てずに済みます。

    ▶ 値引きを求められたら、こう聞き返す

    買主様側から「ハザードマップの件で◯◯万円引いてほしい」と言われたとき、そのまま飲む必要はありません。私を通して、こう聞き返してください。「どの想定の、どの深さを根拠にした金額ですか」。①区域だけの家であっても、浸水の深さなどが周辺事例と本当に同条件かを確認し、値引きの根拠を検討します。②や③なら、根拠が明確になったうえで検討すればいい。応じるかどうかの考え方は、note「値下げしましょうと言われた夜に」で別に書いています。

    私たちは自社で買い取らないので、「区域だから安く買い取ります」と言う側に立ちません。売主様が買取を望まれる場合や、買取のほうが売主様のためになる場合は、高く買ってくれる業者を探すのが私たちの仕事です。「区域だから買取で」と一足飛びに決める前に、この3分けで自宅を見てほしいと思っています。

    では、②の「被害歴あり」に当たる方は、告知書にどう書けばいいのか。「2018年の台風で道路が冠水したのは覚えている」というAさんのような方も同じです。次の章で1行の書き方を見ていきましょう。

    第4章:告知書に書く1行——過去の床下浸水・高潮・道路冠水をどう書くか

    第4章:告知書に書く1行——過去の床下浸水・高潮・道路冠水をどう書くか

    この章では、告知書(物件状況報告書)に浸水歴をどう書くかを、1行のテンプレートにして説明します。「書いたら売れなくなる」という気持ちが、「書かないほうが後で壊れる」に変わることを目指します。

    ▶ 私たちは「免責」で売るからこそ、1行を細かく書く

    私たちが売却するとき、基本は「契約不適合責任・設備保証の免責」という特約で売ります。売主様は引き渡した後の不具合の責任を負わない、という取り決めです。でも「引き渡したあとは知りません」ではありません。免責の特約があっても、売主様が知っていながら買主様に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れないからです。

    だからこそ、告知書と付帯設備表の2枚は、売主様と一緒にできるだけ細かく書きます。浸水歴は、その中でも「知っていたのに書かなかった」と後で言われやすい項目のひとつ。ここを曖昧にしないことが、売った後に「聞いていない」と言われないための、いちばん確かな備えだと私は考えています。

    ▶ 「いつ・どこまで・どう直したか」の1行

    書く単位はシンプルです。「いつ」「どこまで」「どう直したか」の3つを1行にします。

    浸水歴の1行テンプレート。「いつ」「どこまで(道路冠水のみ・床下・床上)」「どう直したか」の3つの箱を足し算でつなぎ、Aさんの例「2018年9月の台風21号のとき、前面道路が冠水。床下・床上への浸水はなし」と、3段の書き方の例を示した図。知らない要素は「不明」でよい、という注記つき

    Aさんの場合はこうなります。「2018年9月の台風21号のとき、前面道路が冠水。床下・床上への浸水はなし」。道路が冠水しただけで家に水が入っていないなら、そのとおり書けばいい。この1行があるだけで、買主様は「この家はあの台風のときにここまでだった」と具体的に分かります。必要以上に想像をふくらませずに済むんです。

    「どこまで」は3段で書き分けます。

    どこまで書き方の例
    道路冠水のみ「◯年◯月の台風時に前面道路が冠水。建物への浸水なし」
    床下浸水「◯年◯月に床下浸水。◯年◯月に床下の消毒・乾燥を実施、業者名◯◯」
    床上浸水「◯年◯月に床上◯cmまで浸水。床材・壁の張り替えを◯年◯月に実施、業者名◯◯」

    「どう直したか」は、工事の領収書や写真が残っていれば添えます。直したことを書くのは、値段を下げないためというより、買主様が「今の状態」を判断できるようにするためです。

    ▶ 知らないことは「不明」でいい

    ひとつだけ、お願いがあります。知らないことを、無理に書かないでください。告知書に書くのは、売主様が知っている事実だけ。「たぶん大丈夫だった」と推測で「なし」と書くほうが、あとで困ります。分からなければ「不明」と書いてかまいません。

    ▶ 相続した親の家で、浸水歴が分からないとき

    「親が住んでいた家で、2018年の台風のときどうだったか知らない」という相談は珍しくありません。そのときは、次の順で確かめてみてください。

    1. 近所の方に「あの台風のとき、この辺りはどうでしたか」と聞く

    2. 区役所に、当時の浸水の記録(罹災証明などの申請があったか)を問い合わせる

    3. 親のスマホやアルバムに当時の写真がないか探す

    ここまでやっても分からなければ「不明」です。「調べたが不明」と伝えてもらえれば、私が買主様にそのまま説明します。きょうだいで相続した家を売るときの進め方は、こちらの記事で書いています。

    きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料

    告知書の項目全体(浸水以外の雨漏り・シロアリ・境界など)は、note「契約の前に売主が書く2枚」で詳しく書いています。この記事では浸水歴の1行に絞りました。

    1行が書けたら、次は「誰が、いつ、何を説明するのか」。「自分が買主に説明するのか」という不安を、次の章の分担表で解いていきましょう。

    第5章:誰が何を説明するのか——「売主様が伝える/私が説明する/買主様が確かめる」の分担表

    第5章:誰が何を説明するのか——「売主様が伝える/私が説明する/買主様が確かめる」の分担表

    この章では、浸水想定区域の家を売るときに、売主様・私・買主様がそれぞれ何をするのかを1枚の表にします。読み終わるころには、あなたの役割が1行で言えるようになっているはずです。

    ▶ 3者の分担表

    分担表。売主様が伝える(過去の事実を私に伝える・告知書の1行を書く・内覧で聞かれたら「詳しくは担当から」)/私が説明する(最新の区のマップを添付して位置を示す・重要事項説明で説明する・更新されうることも伝える)/買主様が確かめる(マップと告知書を見る・火災保険料を確かめる・修繕の見積もりを取る)の3列
    誰が何をする
    売主様過去の事実(浸水歴・道路冠水・修繕)を私に伝える。告知書の1行を書く
    私(宅建士)最新の区のマップを添付して物件の位置を示し、重要事項説明で買主様に説明する。マップが今後更新されうることも伝える
    買主様マップと告知書を見て、火災保険料や修繕の見積もりを自分で確かめる

    売主様の役割は、この表の1行目だけです。買主様の前で「この辺りは浸水想定が…」と説明する場面は、ふつう売主様にはありません。内覧で買主様から直接聞かれたら「詳しくは担当の紙谷から説明します」と返してもらえれば大丈夫です。

    ▶ 私の実務では、資料作りから重説準備まで自分で行う

    写真撮影・図面や掲載文などの資料作り・内覧の立ち会い・重要事項説明の準備まで、すべて私(紙谷)自身が行います。だから「誰が説明するか」を工程として書けます。媒介契約(売却を任せる契約)のときに、浸水歴を聞き取りながら、告知書もその場で一緒に確認する。売り出し前に、その1行を最終確定する。契約の直前に区のマップを取り直して、重要事項説明書に添付する。この流れの中で、売主様にお願いするのは「事実を教えてください」の1点だけです。

    ▶ マンションの場合、上層階でも「区域内」と説明される

    「10階に住んでいるのに、浸水想定区域と言われるのはおかしくないですか」という質問をよくいただきます。私の実務では、重要事項説明は建物の所在地に対して行います。ですので、上層階のお部屋でも「この建物の場所は区域内です」と説明します。全日本不動産協会のFAQにも、上層階だけ扱いが変わるという記載はありませんでした(私が確認した範囲での話です)。

    ただし、説明されることと、買主様がどう受け取るかは別です。上層階の場合、買主様は2つを別々に判断します。お部屋そのものに水が入る可能性と、1階の電気設備やエレベーター、駐車場がどうなるか、です。売主様側でできるのは、階数と、管理組合に電気設備の位置や過去の対応の記録があれば確認しておくこと。ここは値段の話というより、買主様が安心して判断できる材料を出す、という位置づけです。上層階でも、水防法に基づくマップがある場合に物件の所在地を説明する義務は変わりません。設備の位置や過去の対応を確認する部分は、私の実務上のすすめです。

    ▶ 「囲い込みはしないですか?」と同じ不信に答えると

    売主様からよく聞く「囲い込みはしないですか?」という言葉の奥には、「不動産会社は自分の都合で動くのではないか」という不信があります。浸水想定の話も同じで、「隠して売れと言われるのでは」「区域だから安く買い取ると言われるのでは」という不安が顔を出します。

    私の答えはこうです。説明の当事者は私で、売主様に隠しごとを頼むことはありません。私たちは囲い込み(売却依頼を受けた物件を自社で抱え込み、他社からの購入希望を通さない行為)もしません。売却専門で購入や投資を扱わないからです。両手(売主・買主の両方から手数料をもらう取引)のために情報を止める動機が、構造として薄いんです。

    役割が分かったら、あとは「いつやるか」です。次の章で、査定前から重説前までの4つの時点に落としていきます。

    第6章:いつ確認するか——査定前・媒介契約時・売り出し前・重説前の4時点と、2026年の更新

    第6章:いつ確認するか——査定前・媒介契約時・売り出し前・重説前の4時点と、2026年の更新

    この章では、ここまでの「見る1枚・書く1行・分ける1表」を、売却の流れの中の4つの時点に置き直します。「今すぐ全部やらなきゃ」ではなく、時点ごとに1つずつ確かめればいい、と分かってもらうのが目的です。

    ▶ 確認する4時点

    確認する4時点。査定前(売主様:区の地図面PDFで自宅の色と想定の種類をメモ)→媒介契約時(売主様と私:浸水歴を伝え、告知書も一緒に確認)→売り出し前(売主様と私:告知書の1行を最終確定)→重説前(私:最新の図を取り直して添付)を1本の線に置いた図。下段に2026年の新しい想定の公表と、ページ更新日と図の公表日の違い
    時点誰が何をする
    査定前売主様区の地図面PDFで自宅の色と想定の種類をメモする
    媒介契約時売主様と私浸水歴(道路冠水・床下・床上・修繕)を私に伝える。その場で告知書も一緒に確認する
    売り出し前売主様と私告知書の1行を最終確定する
    重説前市の掲載図と府などの最新想定を確認し、説明用の図を取り直して重要事項説明書に添付する

    Aさんのように査定が終わったばかりの方は、まだ1つ目の時点です。地図面を見てメモするだけで、今日やることは終わり。次に媒介契約を結ぶときに、2018年の台風のときの話を伝えてください。私はその場で告知書も一緒に開いて、書ける範囲をその日のうちに確かめます。あとは一緒に進められます。

    ▶ 2026年は「売り出し中に図が変わる」が現実に起きている

    なぜ「重説前に取り直す」のかというと、マップは更新されるからです。2026年だけでも、こんな動きがありました。

    ・3月31日:大阪府が津波の浸水想定を見直して公表

    ・4月:芥川(国管理区間)・東横堀川の浸水想定区域図が新しく公表され、大阪市の水害ハザードマップのページに案内が追加

    ・8月2日:淀川区のページの更新日。ただし、これは想定図そのものの公表・更新日とは別

    売り出しを始めたときと契約のときで、図が違う可能性があるということです。宅建士は最新の図で説明し、今後も更新されうることを買主様に伝えます。売り出し中に図が変わったら、私が最新の図で説明し直します。売主様が自分で追いかける必要はありませんが、「変わることがある」とだけ知っておいてください。どの区の想定がどう変わったかは、私も全部を確認できていません。図の公表年月は啓発面などで確かめ、市の掲載図と府などの最新想定を併せて確認します。2026年9月23日の確認時点で、淀川区のページは津波について平成25年8月公表の図を案内しているため、府が令和8年3月31日に公表した新しい津波想定とは分けて確認する必要があります。

    確認先:大阪府・令和8年3月31日公表の津波浸水想定大阪市・水害ハザードマップの案内

    私たちは淀川区に事務所があります。区のページが更新されるたびに、私が地図面を見直しています。地元の区の図を日常的に開いている業者かどうかは、担当者に聞いてみると分かります。「最新の地図面はいつ更新されましたか」の一言で十分です。

    ▶ 台風の時期に内覧があるとき

    9月から10月は台風の時期です。2018年9月4日の台風21号では、大阪で観測史上最高の潮位329cmを記録しました。この時期に内覧が重なると、買主様から「台風のとき大丈夫でしたか」と聞かれることがあります。そのときは、告知書に書いた1行をそのまま口にしてもらえれば十分です。「2018年の台風のときは道路が冠水しましたが、家には入りませんでした」。事実だけを、足さず引かず。詳しい話は私が引き取ります(ここは私の経験からのすすめで、決まりではありません)。

    ここまでで、3つの疑問は全部ほどけたはずです。最後の章で、今日からやることを3段にまとめます。

    第7章:まとめ+今日からやるべきこと

    第7章:まとめ+今日からやるべきこと

    この章では、ここまでの内容を3行にまとめて、記事を閉じた直後にできる行動を3段で書きます。読み終わったら、区のマップのPDFを開いていてほしいと思っています。

    ▶ この記事のまとめ3行

    1. 水防法に基づく水害ハザードマップがある場合、宅建士は契約前に物件の位置を説明する。大阪市の内水図や最新の津波想定も、法的な位置づけを分けて確認する

    2. 値下げ材料になるかは「区域だけ/被害歴あり/2026年に新しく入った」の3分けで考える。区域だけなら周辺と同条件で織り込まれていることが多く、値引きには「どの想定の、どの深さが根拠か」を聞き返す

    3. 告知書に書くのは「いつ・どこまで・どう直したか」の1行。知らないことは「不明」でいい

    ▶ 今日できること

    自分の区の水害ハザードマップのページを開き、「地図面」のPDFで自宅の位置を探してください。想定の種類ごとに色をメモします。「淀川氾濫:◯色、高潮:◯色」のように、想定名と色をセットで。5分あればできます。

    ▶ 1週間以内にすること

    家族に「2018年の台風のとき、家はどうだった?」と聞いて、浸水歴を1行にしてみてください。道路冠水だけだったのか、床下まで来たのか、直したのか。相続した家なら、親族や近所の方に同じことを聞いてみる。分からなければ「不明」と書いておけば大丈夫です。この1行が、媒介契約の場で告知書を一緒に開くときに、そのまま使えます。

    ▶ 相談したくなったら

    「自分の家が3分けのどれに当たるのか分からない」「上層階のマンションで、どう伝えればいいか迷う」。そんなときは、公式LINEに「区名・物件の種別(戸建て/マンション/土地)・マップの色」を送ってください。私が見立てを返します。売るかどうか決めていなくてもかまいません。

    公式LINE(友だち追加):公式LINEで相談する

    サイト( https://heroes-property.jp )やメール( info@heroes-property.co.jp )からでも受け付けています。ただ、地図面の写真を送りやすいLINEが、いちばんやりとりしやすいです。

    関連する記事もあわせてどうぞ。

    ・旧耐震の家を売るときの考え方 → 不動産売却で築40年超の大阪府大阪市マンションを旧耐震でも高く売る実践ポイント

    ・きょうだいで相続した家を売る進め方 → きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料

    ・境界が分からない家を売るとき → 不動産売却で大阪府の境界ポイント確認が売却成功のカギとなる理由とトラブル防止策

    おわりに

    ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

    査定の席で「浸水想定区域です」と言われた日は、たぶん胃が重かったと思います。でも、この記事を読み終えた今のあなたは、区の地図面の見方を知っています。値下げ材料になるかを3つに分けて考えられて、告知書に書く1行の形も分かっている。昨日の夜の自分より、ずいぶん先に進んでいます。

    浸水想定区域の家は、大阪市ではめずらしくありません。私たちの事務所がある淀川区の地図面にも、5種類の想定が示されています。区域かどうかより、「事実を正確に把握して、正直に伝えて売る」ことのほうが、ずっと重い。それができれば、売った後に「聞いていない」と言われる心配は、ずいぶん小さくなるはずです。

    まずは今夜、区のマップのPDFを開いてみてください。色をメモするところから、一緒に始めましょう。

    株式会社ヒーローズプロパティ 紙谷 一徳

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