「屋根が越境しています」と言われた大阪市の家|売る前に外せる・直せる・直せないに分ける
2026/09/24
越境があると、売れないんでしょうか?
親の家を売ろうと、土地家屋調査士さん(境界や土地の測量をする専門家)に測量を頼んだ。すると「屋根の軒と雨樋が、お隣に少し出ていますね」。査定に来た会社には「越境があると一般の方は嫌がるので、買取も考えては」。そう言われて、夜にスマホで「越境 売却」と検索している方へ向けて書きました。
先にお伝えすると、越境は「はみ出している物」ごとに3つに分けるだけで、打つ手がかなり決まります。この記事では、その分け方と、大阪市ならではの塀の補助、隣の方と交わす紙の中身まで、順番に一緒に見ていきます。
この記事で分かること
・はみ出した物を「外せる・直せる・直せない」に仕分ける方法
・ブロック塀の持ち主の確かめ方と、大阪市の撤去補助が使える塀・使えない塀(今年度は12月28日必着)
・直せない越境の覚書で、私道の承諾書と違う3つの中身と、告知書に書く1行
目次
第1章:「越境しています」と言われた日に確かめるのは4つだけ——向き・物・幅・根拠

「越境」と言われた直後にやることは、4つを聞くだけです。売れる・売れないを考えるのは、そのあとで十分間に合います。
「これくらいなら大丈夫やろ」。お父さんの代から、お隣とはずっとそうやってきたのかもしれません。ところが売る段になって測量が入ると、その「これくらい」が図面の上に数字で出てくる。そこで初めて「えっ、うちが?」となる方は本当に多いんです。
まず安心してほしいのは、大阪市内の昭和の住宅街では、屋根や樋が少し隣に出ている家は珍しくないということ。長屋や、狭い敷地にぎりぎりまで建てた戸建てが並ぶ地域なら、なおさらです。
言葉の意味も1段落だけ押さえておきます。越境(えっきょう)とは、屋根や塀、木の枝などが境界線(土地と土地の境目)を越えて、隣の敷地に入っている状態のこと。逆に、隣の物がこちらに入ってきている場合も、同じ「越境」と呼ばれます。
▶ 言われた相手に聞く4つのこと
調査士さんや不動産会社に「越境があります」と言われたら、次の4つを聞いてください。私はこの4つを「越境メモ」と呼んでいます。電話でもいいですが、あとで見返せるようにメールで聞くのがおすすめです。
1. 向き:うちが「出している」のか、隣に「出されている」のか。両方ある場合もあります
2. 物:屋根・軒・雨樋・エアコンの室外機・配管・塀・木の枝のどれなのか
3. 幅:何cm出ているのか。空中(屋根や樋)なのか、地面の下(塀の基礎や配管)なのか
4. 根拠:測量図の上で確かめた数字なのか、目で見た「たぶん出ている」なのか
メールの文面は、たとえばこれで十分です。
「先日ご指摘いただいた越境について、4点教えてください。①うちが出しているのか、出されているのか。②何が出ているのか。③何cmくらいか(空中か、地面の下か)。④測量図で確かめた数字か。よろしくお願いします。」
この4つが分かるだけで、話がぐっと具体的になります。逆に言えば、「越境があります」の一言だけでは、まだ何も決まっていないんです。

▶ 家の周りを一周して写真を撮る
4つを聞いたら、次の週末にでも家の周りを一周してみてください。スマホで、屋根の端、樋、室外機、塀、境目近くの木を、隣との境目が分かる角度で撮っておきます。
売却を任せていただいた家の写真撮影や資料作りは、私が自分でやっています。だから現地でこの「一周」を、売主様と一緒にすることがよくあります。図面だけでは分からなかった「室外機が置いてあるだけだった」といった発見は、たいてい現地で出てきます。
それから、私たちは自社で家を買い取る会社ではありません。だから「越境があるから買取で」と話を持っていく理由がないんです。越境=売れない、ではありません。物を見て、分けるところから始めましょう。
4つの答えと写真がそろったら、いよいよ仕分けです。次の章で、はみ出した物を3つの箱に分けていきます。
第2章:はみ出した物を「外せる・直せる・直せない」の3つに仕分ける

調査士さんのメールに「屋根の軒・雨樋・室外機が越境」と並んでいると、全部が同じ重さの問題に見えますよね。でも実際は、明日動かせる物もあれば、建て替えまで動かせない物もあります。ここをごちゃまぜにしたまま「越境物件」とくくってしまうのが、いちばんもったいないんです。
この章では、ひとまとめにされていた越境物を、物ごとに3つの箱に分けます。私はこれを「越境の3仕分け」と呼んでいます。これは最初の整理のための目安で、同じ屋根や配管でも工事の可否は建物ごとに違います。工務店や建築士に現地で確かめてもらってください。隣の所有物や共有物は、自分の判断で動かしたり撤去したりしません。分けた瞬間に、どこから手を付ければいいかが見えてくるはずです。
▶ 外せる
置いてあるだけの物、あとから付けた物です。エアコンの室外機、物置、物干し、植木鉢、アンテナなどがここに入ります。
これは売り出し前に動かすのが基本。室外機なら、配管の長さが許す範囲で自分の敷地の中に置き直せることがあります。外せる物が片づくと、越境のリストが1行、2行と減っていきます。
▶ 直せる
工事をすれば引っ込められる物です。雨樋、庇(ひさし:窓の上の小さな屋根)の一部、フェンス、伸びた木の枝などがここ。
直すか、直さずに値段で調整するかは、見積を取ってから決めます。これは次の第3章でくわしく話しますね。
▶ 直せない(今すぐの解消が難しい物)
建物と一体で、今すぐの解消が難しい物です。屋根や軒、外壁、基礎、塀の基礎、地面の下の給排水管などが候補になります。ただし、これらが一律に「建て替えまで直せない」と決まっているわけではありません。
家の構造や工事費を確認し、今すぐ引っ込めるのが現実的ではないと分かった場合の話です。そこで2つの方法で、次の持ち主へつないでいきます。1つは、隣の方と覚書(お互いの約束を書いた紙)を交わすこと。もう1つは、告知書(売主が家の状態を買主に伝える書類)に書くことです。第5章と第6章で順番に見ていきましょう。
▶ 迷ったときの3つの質問
「これはどっち?」と迷う物もあります。そんなときは、次の3つを順に考えてみてください。
1. 固定されているか:置いてあるだけなら「外せる」
2. 直すときに隣の敷地に入るか:入る必要があるなら、隣の方への声かけが先
3. 構造に触るか:屋根や柱、基礎に手を入れるなら、工務店や建築士に工事の可否を確認
それでも決めきれなければ、いったん「直せる」に入れて、見積で確かめるのがおすすめです。業者さんに「これ、引っ込められますか?」と聞けば、答えがはっきりします。

私は売却の仕事を20年してきました。買主様や金融機関(住宅ローンを貸す銀行など)が気にするのは、「その越境が、この先トラブルになるかどうか」です。だから仕分けも、買う側の目線から逆算しています。
私の経験では、先に外せる物を外しておくだけで、買主様との話がずいぶん軽くなった取引がありました。「越境が3つ」より「越境が1つ、しかも覚書あり」のほうが、聞く側の安心感はまったく違います。
仕分け表ができたら、次は「外せる」「直せる」に入った物をどうするか。直してから売るのか、そのまま売るのか、次の章で比べてみましょう。
第3章:「外せる」「直せる」は売り出し前に片づけるか、値段に含めるかを決める
▶ 外せる物は、原則として売り出し前に外す
室外機や物置、植木鉢は、動かす費用が比較的小さいことが多く、動かせば買主様の不安が1つ消えます。ここは迷わず、売り出し前に片づけてしまいましょう。
室外機の置き直しはエアコンの業者さんに、物置は中身を出してから移動を頼めます。実家の片づけの流れで一緒に済ませると、手間も少なくすみます。
▶ 直せる物は「見積」と「買主が気にするか」で比べる
樋や庇、フェンスは、直すと工事費がかかります。費用は家の形や足場の要不要で大きく変わるので、ここでは金額は書きません。まずは工務店さんに見積を取ってください。
そのうえで、選べる道は2つです。
・直してから売る:買主様に「越境はもう解消しています」と言える
・見積書を付けて、値段で調整する:「直すならこのくらいかかります」と見積書を見せ、その分を値段の話に含める
どちらが手元に残るお金(手取り)に合うかは、物件ごとに違います。担当者と一緒に、見積の額と売り出し価格を並べて決めてください。
ひとつ知っておいてほしいのは、買主様が建て替えを考えている場合です。古い家を壊して新しく建てるつもりの方にとって、樋を直してあるかどうかは、ほとんど関係ありません。直した分が値段に乗らないこともあるので、「どんな買主様が来そうか」も一緒に考えておきましょう。
私たちは自社で買い取らないので、「直すのも面倒でしょうから買取で」とは言いません。直す・直さない・値段で調整する、を同じテーブルに並べて比べる。それが売却専門の立場でできることだと思っています。
▶ 直すために隣の敷地に入るとき
樋を切り詰める工事などで、足場を隣の敷地に置かせてもらう必要が出ることがあります。民法209条(隣の土地を使わせてもらえる場面のルール)は、2023年の改正で整理されました。修理のために隣地を使える場面が、前よりはっきりしています。
ただ、法律があるからといって黙って入っていいわけではありません。法律上は一定の要件で承諾がなくても隣地を使える場合がありますが、原則として目的・日時・場所・方法を事前に通知し、相手の損害が最も少ない方法を選ぶ必要があります。住家への立入りには承諾が必要です。私は、先に説明して作業方法を調整する順番をおすすめしています。拒まれたときに無理に立ち入らず、専門家に相談してください。
▶ 隣の木の枝がこちらに出ているとき
逆に、はみ出されている側の話も少しだけ。2023年4月1日から、民法233条(越境した枝のルール)が変わりました。隣の木の枝がこちらに出ていて、次のどれかにあてはまれば、自分で切れるようになっています。
・持ち主に切ってほしいと伝えたのに、相当の期間がたっても切ってもらえない
・必要な調査をしても、持ち主やその所在を知ることができない
・枝が折れて危険が迫っているなど、急迫の事情がある
とはいえ、売る前に自分で切って関係がこじれてしまうと、そのあと覚書をお願いしにくくなりますよね。まずは「売ることになったので」と伝える。それでも難しければ、告知書に「隣地から枝が越境」と書いて買主様に伝える。私は、この順番のほうが結果として売りやすいと考えています。告知するだけで越境そのものが解消するわけではなく、撤去や費用負担をどうするかも契約前に整理します。
制度の確認:法務省・隣地使用と越境した枝の切取りの解説。
外せる物と直せる物の方向が決まったら、次は大阪市ならではのブロック塀の話です。こちらには、今年中に決めることがあります。
第4章:ブロック塀は「誰のものか」で打つ手が変わる——大阪市の撤去補助は12月28日まで

ブロック塀は、持ち主が誰なのかと、大阪市の撤去補助が使えるかどうかで、打つ手が変わります。今年度の申請の締切は12月28日(月)必着。カレンダーに書き込みながら読んでみてください。
実家の裏の塀、あれは誰が建てたんだろう。そう聞かれて答えられる方は、実はあまりいません。「親父がお隣さんと一緒に積んだって言ってた気がする」くらいの記憶が普通だと思います。
▶ まず持ち主を確かめる3つの手がかり
1. 測量図:境界線と塀の位置を見比べます。塀がこちらの敷地にあるのか、線の上にまたがっているのか、隣側なのか
2. 境界標:境界の目印(コンクリートの杭や金属のプレート)が塀のどちら側にあるか
3. 親の代の話:隣と費用を出し合って建てたのか。親戚や、お隣の方の記憶も手がかりになります
線の上にまたがっている塀は、お隣と共有のことがあります。共有の塀は、自分ひとりの判断で壊したり作り直したりはできません。まずはお隣と話すところからです。
▶ 大阪市のブロック塀撤去補助の条件
大阪市には、危ないブロック塀の撤去を後押しする補助制度があります。2018年の大阪府北部地震のあと、地震で塀が倒れて人がけがをするのを防ぐために設けられた制度です。条件は次のとおりです(2026年9月24日に大阪市のページで確認)。
・対象は、道路などに面した高さ80cm以上で、安全性が確認できない塀
・申請できるのは塀の所有者
・補助額は「対象長さ×限度額単価×2分の1」「税抜きの補助対象経費×2分の1」「撤去15万円・新設25万円の上限」のうち最も低い額(千円未満切り捨て)。撤去と新設は別々に計算します
・隣の家との境界にある塀は対象外
・原則として工事の契約をする前に申請が必要。契約済みでも着工まで十分な期間がある場合は申請できることがあるため、窓口に確認します
・今年度の申請は2026年12月28日(月)必着。工事と支払いを終えたうえでの完了報告は2027年2月26日(金)必着
・窓口は大阪市立住まい情報センター4階(電話 06-6882-7053)
新設の対象は、補助を受けて撤去した範囲内に設ける軽量フェンス等です。道路の幅などによってセットバックも必要になります。詳しい条件は大阪市の補助制度の案内と窓口で確認してください。
同じブロック塀でも、道路側の塀なら補助が使えるかもしれない。けれど、お隣との境の塀は使えない。ここが大きな分かれ目です。私はこの判断の流れを「塀の分かれ道」と呼んでいます。

▶ 間に合わせるための逆算の一例
道路側の塀を売る前に直すなら、たとえばこんな段取りになります。
1. 10月:工務店に見積を頼む。あわせて窓口に「この塀は対象になりそうか」を電話で問い合わせる
2. 11月:申請書類をそろえて申請する(工事の契約はまだしない)
3. 12月28日:これが必着の締切。余裕をもって出しておく
これはあくまで一例で、実際の審査や工事の時期は窓口で確かめてください。申請期限だけに合わせるのではなく、2027年2月26日の完了報告までに工事・支払いを終えられるかを逆算します。売り出しの準備と並行して進められるので、「塀が終わるまで売り出せない」ということにはなりません。
とはいえ、「補助があるから直すべき」とは、私は思っていません。直さずに告知書に書いて、そのまま売るという判断も十分にあります。補助は「直すと決めたときに、負担を軽くする道具」くらいに考えてもらえればと思います。
大阪市の地元で売却をしていると、こうした市の制度と売る時期がぴたりと重なる場面によく出会います。全国向けの越境の記事にはまず出てこない話なので、道路側の塀がある方は、一度窓口に聞いてみてください。
さて、ここまでで「外せる」「直せる」と塀の話が終わりました。残るは、動かせない屋根や軒。次の章では、隣の方と交わす紙「覚書」の中身を見ていきます。
第5章:「直せない」越境は覚書で次の持ち主へつなぐ——私道の承諾書と違う3つの中身

屋根の軒が隣に10cm出ている。建て替えるまでは引っ込められない。そんなとき、買主様や住宅ローンを貸す銀行は、「隣の方とは話がついていますか?」と聞いてくることが多いです。その答えになるのが覚書です。
この章では、直せない越境を覚書で次の持ち主へつなぐ方法をお話しします。何を約束し、売却時にどう次の持ち主へ引き継ぐのか。そこがポイントです。
▶ 覚書の3点セット
覚書は、ただ「越境を認めます」と書けばいいわけではありません。最低限、次の3つを入れておきたいところです。
1. 範囲:どの物が、どこに、何cm出ているのか。測量図と写真を付けて、はっきり特定します
2. 直す時:今すぐ撤去を求めない。そのかわり、建て替えや大きな改修のときには引っ込める
3. 引き継ぎ:この約束を、お互いの次の持ち主にも引き継ぐという一文
意外と見落とされるのが3つ目です。覚書は、お隣が家を売ったら、新しい持ち主に当然に引き継がれるわけではありません。「次の持ち主にも引き継ぐ」「売るときは相手に覚書の内容を伝える」という条項を設けたうえで、実際の売却時に内容を説明し、承継の合意を得る手続も必要です。一文を書くだけで、新しい持ち主を自動的に拘束できるわけではありません。文面と承継方法は専門家に確認します。

▶ 私道の承諾書との違いは「お互い様」
前に私道の記事で、道を使わせてもらう承諾書の話を書きました。取りに行く時期や頼む順番はそちらにまとめてあります → 家の前の道が私道だった|大阪市の戸建てを売る前に見る3枚と、承諾書はいつ取るか
私道の承諾書は、通行や掘削などを認めてもらうための書面です。越境の覚書は、現状を確認し、将来の解消などを合意するための書面。私道も越境も当事者や内容によって形は違いますが、越境ではお互い様になることもあります。うちの樋がお隣に出ていて、お隣の塀の基礎がうちに入っている。そんなケースは大阪市の古い住宅街では珍しくありません。
だから切り出し方も変わります。「お願いします」ではなく、「今の状態を、お互いに紙にしておきましょう」と言えるんです。
▶ 隣の方への切り出しの一言
とはいえ、顔見知り程度のお隣さんに話しかけるのは気が重いですよね。そんなときは、こう言ってみてください。
「家を売ることになったので、次に住む方とも揉めないように、今の状態を一緒に紙にしておきたいんです」
相手を悪者にしないのがコツです。「そちらの塀がはみ出しているので」から入ると、どうしても身構えられてしまいます。売るのはこちらの都合なので、「次の方のため」「お互いのため」という言い方のほうが伝わりやすいです。
私の信念に「買は情報、売は信頼」という言葉があります。隣の方は交渉の相手ではなく、これからも境を分け合う人。次の持ち主にとってもそうです。だから私は、隣の方との関係を傷つけない進め方を何より先に考えます。
ひとりで話しに行くのが不安なら、ご希望があれば、私が一緒に伺えるかどうかご相談ください。ただ、覚書に判を押すかどうかはお隣の方が決めることなので、「必ず取れます」とはお約束できません。そこは正直にお伝えしておきます。
▶ 文面は専門家に確かめる
覚書の文面は、ネットのひな形をそのまま使わず、司法書士さんや弁護士さんに確認してもらいましょう。範囲を特定する図面は、測量を頼んだ土地家屋調査士さんが作ってくれることが多いです。測量の種類については、こちらの記事にまとめています → 不動産売却で大阪府物件の現況測量と確定測量を使い分けてトラブル回避する具体策
長い年月はみ出したままだと、取得時効が気になる方もいるかもしれません。長く使っていると権利が認められることがある制度です。その場合は、弁護士さんに相談してください。
覚書がまとまれば安心、まとまらなければ売れない。そう思いがちですが、実はどちらの場合も、最後にやることは同じです。次の章でお話しします。
第6章:覚書が取れても取れなくても、告知書には全部書く——「知っていて書かない」越境がいちばん高くつく
▶ 書かなかった越境は、あとで責任を問われることがある
実際に、境界の塀の越境を買主に説明しなかったことで、売主や仲介会社の責任が問われた例があります。「隣と揉めたことはないし、わざわざ言わなくても」と思う気持ちは分かります。でも越境は、引き渡しのあとで買主様が測量や建て替えの相談をしたときに、見つかることがあるんです。
▶ 私たちの売り方:免責で売るからこそ、細かく書く
私たちが売却をお手伝いするときは、基本的に「契約不適合責任の免責」という特約を付けて売ります。契約不適合責任とは、引き渡したあとに契約と違う不具合が見つかったとき、売主が負う責任のこと。免責とは、それを売主様が負わないという約束です。
ただし、売主様が知りながら買主様に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません。告知書(物件状況報告書)に具体的に残すことが大切です。だから私たちは、告知書と付帯設備表(エアコンや給湯器など、付いている設備の一覧)の2枚を、売主様と一緒に細かく書きます。
越境も同じです。分かっていることは全部書く。分からないことは「不明」と書く。それが、あとで売主様自身を守ってくれます。告知書の書き方は、こちらの note でくわしく書いています → 契約の前に売主が書く2枚。告知書と付帯設備表は「不明」と書いていい
▶ 告知書に書く1行の例
たとえば、こんな書き方になります。
「北側隣地へ屋根の軒・雨樋が越境(約◯cm・測量図のとおり)。覚書は取得済(または取得中)」
物・向き・幅・根拠・覚書の状態。第1章の「越境メモ」で集めた情報が、そのまま1行になるんです。最初に4つを聞いておくと、ここで慌てずに済みます。
浸水の記事でも同じことを書きましたが、「先に見せる」売り方のほうが、結局は話が早く進みます → 「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行
▶ 覚書がまとまらないときの3つの道
お隣の方がご高齢で話が進まない、相続で持ち主が分からない。覚書がまとまらないこともあります。そのときの選択肢は3つです。
1. 告知して、一般の買主様に売る:住宅ローンを使う買主様は、銀行の判断で付きにくくなることがあります
2. 現金で買える方を探す:ローンの審査に左右されない買主様に絞って探す
3. 買取業者に出す:私たちは自社では買い取りません。ただ、買取のほうが売主様のためになる場合は、できるだけ高く買ってくれる業者を探します
大事なのは、最初から3番に飛びつかないこと。3つを並べて、手取りと時期を比べてから決めましょう。仲介と買取の違いは、こちらで整理しています → 不動産売却で大阪府に最適な仲介と買取の違いと選び方徹底比較
私の経験では、越境は後から出てくるほど、買主様側の値引きの材料になりやすいです。先に全部見せておけば、「分かったうえで買う」方と話ができます。
それから、私たちは囲い込み(売却を任された物件を自社で抱え込み、他社からの購入希望を通さないこと)をしません。越境の情報も含めて、同じ資料をどの買主様、どの不動産会社にも出します。「うちの越境、ちゃんと伝わってるのかな」という心配はいりません。
ここまでで、越境の分け方から伝え方まで一通りそろいました。最後の章で、今日からやることを整理しておきましょう。
第7章:まとめ+今日からやるべきこと
▶ まとめ
・越境は「はみ出した物」で、外せる・直せる・直せないの3つに分ける(越境の3仕分け)
・ブロック塀は、持ち主と補助の条件(道路側・80cm以上・契約前に申請・12月28日必着)で決める
・直せない物は、覚書の3点セット(範囲・直す時・引き継ぎ)と告知書の1行で次の持ち主へつなぐ
「越境しています」と言われた夜は、売れないのでは、安く手放すしかないのでは、と頭がいっぱいになります。でも、物ごとに分けてみれば、今日やること、今月やること、隣の方と話すことが、1つずつ見えてきます。
▶ 今日できること
1. 越境を指摘した調査士さんや不動産会社に、「越境メモ」の4つ(向き・物・幅・根拠)を第1章の文面でメールする
2. 家の周りを一周して、屋根の端・樋・室外機・塀・木を、境目が分かる角度で写真に撮る
どちらも30分ほどでできます。写真はあとで仕分け表に貼れるので、撮りすぎるくらいでちょうどいいです。
▶ 1週間以内にすること
1. 第2章の「越境の3仕分け表」を埋める。迷った物は「直せる」に入れておく
2. 道路側に80cm以上のブロック塀があれば、大阪市立住まい情報センター(06-6882-7053)に補助の対象か聞く
3. 「外せる」物は移動の段取りを、「直せる」物は工務店に見積を頼む
境界そのものの確認がまだの方は、先にこちらの記事も読んでみてください → 不動産売却で大阪府の境界ポイント確認が売却成功のカギとなる理由とトラブル防止策
増築した部分の登記が気になる方は、こちらも参考になります → 未登記の増築がある大阪市の戸建てを売る|売り出し前に見比べる3枚
▶ 相談したくなったら
ここまで自分で進めてみて、迷うところが出てきたら、公式LINEから気軽に送ってください。「この仕分けで合っているか見てほしい」「告知書にどう書けばいいか分からない」、そんな一言で大丈夫です。
公式LINE(友だち追加)→ 公式LINEで相談する
「仕分け表を見てほしい」の一言と、撮った写真を送っていただければ、私が目を通してお返事します。売るかどうか決まっていない段階でも大丈夫です。
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
越境という言葉は、どうしても重たく聞こえます。けれど、その中身はたいてい「樋が少し」「室外機が少し」の積み重ね。1つずつほどいていけば、次の方へ渡せる形に整っていくことが多いと、私は感じています。
親の家を、揉めずに、ちゃんとした形で次の人へ。そう思って検索したあなたなら、もう半分は進んでいます。まずは今日、4つの質問をメールで送るところから。その一歩が、売却の準備と、お隣との気持ちのいい関係の両方につながっていくと思います。







