未登記の増築がある大阪市の戸建てを売る|売り出し前に見比べる3枚
2026/09/18
目次
第1章:「面積が違いますね」と言われた家で、何が起きているのか

この章では、担当者に言われた「面積が違う」という言葉が、家の中で何が起きている状態なのかを整理します。先に結論を言ってしまうと、それは「うちだけの異常事態」ではないことが多いんです。
土曜の夜、リビングのテーブルに2枚の紙を並べている。1枚は登記事項証明書(法務局が出す、登記の中身を証明する書類)、もう1枚は固定資産税の課税明細書。奥さんと「たしかに数字が違うな」と見ている。そんな場面を想像してみてください。たとえば東淀川区の昭和52年築の木造2階建てで、登記簿の床面積は68㎡、課税明細は92㎡。お父さんが昭和60年頃に台所を裏に張り出して、2階にも1部屋足した。図面も、確認済証(建築確認が下りたことを示す書類)も、見たことがない。そういう家です。
▶ 3つの書類は、3つの別々の役所が作っている
最初に知っておいてほしいことがあります。家にまつわる書類は「登記」「建築確認」「固定資産税」の3つに分かれていて、担当する役所がそれぞれ違うんです。
・登記(建物の床面積・構造などを記録するもの)→ 法務局
・建築確認(建てる前に法律に合っているかを確かめる手続き)→ 大阪市
・固定資産税(毎年かかる税金)→ 大阪市の市税事務所

ここで「自動では連動しない」というのは、課税されていても登記や建築確認まで済んだことにはならない、という意味です。登記情報が市へ通知される仕組みはあります。建築確認は大阪市のほか、指定確認検査機関が扱う場合もあります。
この3つは、それぞれ別の手続きです。増築したことを法務局に届けていなくても、市税事務所は現地を調べています。「家屋補充課税台帳」という帳簿に載せて、増えた分にも税金をかける。だから「税金はずっと払ってきたのに、登記がない」ということが普通に起きるんです。ここがズレの出発点なんですね。
▶ 大阪市の築古の戸建てでは、珍しくない
大阪市には木造の住宅が約30万2,300戸あります。そのうち昭和55年以前に建ったものが約9万3,400戸です(総務省「令和5年住宅・土地統計調査」の大阪市分より)。長屋も市内に約3万1,200戸残っています。そのうち何割が増築されていて、何割が未登記なのか、という統計はありません。ただ、事務所のある淀川区や、隣の東淀川区・西淀川区の木造の家には、自分で足を運びます。そこで「登記と実物が違う」には何度も出会ってきました。特に昭和40〜50年代築の家です。親の代に台所や洗面所を張り出したもの、2階を1部屋増やしたもの、庭に離れや物置を建てたもの。どれも当時はごく普通のことだったんです。
相続で受け取った実家で「面積が違う」に気づいた方も、話の筋は同じです。相続登記(亡くなった方から相続人へ名義を変える登記)そのものの話は、別の記事に書いています。相続登記の基本 → 【放置は罰金!大阪市での相続登記と不動産売却をお得に進める3つの鉄則】 / 相続登記していない家を売る手順 → 大阪の相続登記してない家を売る手順!義務化の注意点と現金化術 / 名義変更の手順と費用 → 不動産売却(大阪)を成功へ!相続登記と名義変更の手順・費用
「珍しくない」とお伝えしましたが、「だから放っておいていい」という話ではありません。売るときにはこのズレが、ある場所で引っかかるからです。それが「買主さんのローン」。担当者があの一言を言った理由を、次の章で一緒に見ていきましょう。
第2章:買主のローンが止まる本当の理由——金融機関は「登記と現況の一致」を見ている

この章では、「ローンが通りにくい」の中身をほどきます。「違法建築だから売れない」と頭の中で変換してしまっている方は、ここで一度その言葉を置いてみてください。
買主さんが住宅ローンを組むとき、金融機関はその家を担保に取ります。担保というのは、返せなくなったときに金融機関が家を売ってお金を回収するための「押さえ」のことです。登記には「抵当権」という形で記録されます。
ここがポイントなんですが、金融機関はこの担保の評価を、登記記録に書かれた床面積と構造を前提に行います。登記が68㎡なのに実物が92㎡だと、「どの建物を担保に取るのか」が書類の上で決まらない。すると審査が前に進まなくなる。これが「ローンが止まる」の正体です。
▶ 「売れない」ではなく「買主の資金調達の入口で止まる」
家そのものに値段がつかないわけではないんです。現金で買う方なら住宅ローン審査の問題は避けられます。ただし、登記義務や建築上の問題がなくなるわけではありません。ただ、大阪市の築古の戸建てを買う方の多くは、自分や家族が住むために住宅ローンを使う方です。その入口で止まると、買える人の層が狭くなる。ここは事実として、そのままお伝えしておきます。
もうひとつ、私が売主様にいつも先に話しておくのが「契約のあとに分かった場合」です。売買契約にはたいてい「ローン特約」(買主のローンが通らなかったら契約を白紙に戻せる約束)が付いています。契約してから未登記の増築が分かり、審査が止まり、期限までに間に合わなければ白紙。そこから売り出しをやり直すと、数か月が空転します。ローン特約の仕組みはこちらで詳しく書いています → ローン特約で白紙に?大阪市不動産売却を確実に成功させる5つのコツ
増築で床面積などが変わった場合も、原則として変更から1か月以内に変更登記を申請する義務があります(不動産登記法51条)。売却の進め方を選べることと、登記義務があることは分けて考えてください。
ちなみに、登記のない建物を取得した人には、取得から1か月以内に表題登記を申請する義務があります。表題登記とは、建物の存在と床面積・構造を最初に登記に載せる手続きのことです。怠ると10万円以下の過料(罰金に似た、行政上のペナルティ)の定めもあります(不動産登記法47条・164条)。事実として書いておきますが、これで怖がらせたいわけではありません。私が言いたいのは「先に見ておけば、止まらない」ということだけです。
▶ 金融機関が見ている点を、売主様にも見えるようにする
私は「買は情報、売は信頼」だと思っています。買主さんは物件の情報を集めれば比べられますが、売主様は担当者が裏で何をしているか見えない。だから、金融機関が何を見ているかを売主様に見える形にして、先回りするのが私たちの仕事だと考えています。
では、その「先回り」は具体的に何をすればいいのか。答えは、3枚の書類を並べることです。次の章で、1枚ずつ見ていきましょう。
第3章:売り出す前に見比べる3枚——登記事項証明書・課税明細書・現況、ズレの4パターン

この章がこの記事の中心です。3枚をそろえて、並べて、ご自宅がA〜Dのどのパターンかを判定するところまでやります。読み終えたら、次の査定で担当者に「3枚を見比べてどう売りますか」と聞ける状態になります。
▶ 1枚目:登記事項証明書(建物)
法務局で取れる、建物の登記の中身を証明する書類です。窓口でもオンラインでも、郵送でも取れます。見るのは「表題部」と書かれた上のほうの欄で、ここに4つが載っています。「床面積」は、1階と2階が別々に書かれています。「構造」は「木造瓦葺2階建」のような書き方。「附属建物」は、離れや物置など、主な建物とは別に登記されたもの。そして「家屋番号」。相続登記が終わっていれば、下のほうの「権利部」に今の名義人が出ています。
▶ 2枚目:固定資産税の課税明細書
毎年春に届く固定資産税の納税通知書に付いている紙です。見るのは「家屋」の欄の床面積と、「家屋番号」の欄。ここで覚えておいてほしいのが、家屋番号の欄が空欄なら、未登記の可能性を確かめるサインだということです。市税事務所は登記がなくても課税するので、その場合は家屋番号の代わりに市の管理番号だけが載っていたりします。課税明細書が見当たらなければ、市税事務所で「名寄帳」(その人が持っている不動産の一覧)を取れば同じ情報が分かります。
▶ 3枚目:現況(今の家そのもの)
3枚目は紙ではなく、今の家です。晴れた日に、外周を1周歩いてみてください。裏に張り出した部分、屋根の色が途中で変わっている部分、庭の離れ、物置、屋根付きの車庫。次に各階を歩いて、登記の図面と明らかに違う部屋がないかを見る。全部スマホで撮っておきます。メジャーで大まかに測れれば、なお良いです。「うちは何もいじってない」と思っていた方が、外周を歩いて初めて父の増築に気づいた、ということも本当にあります。
▶ 3枚合わせ判定表——ズレの4パターン
3枚を並べたら、次の表に当ててみてください。

| 型 | 3枚の状態 | 何が起きているか | 次に頼む相手 |
| A | 登記あり。課税明細のほうが広い | 増築部分が未登記(私の感覚ではいちばん多い型) | 土地家屋調査士 |
| B | 登記なし(家屋番号が空欄)。課税明細はある | 建物ごと未登記 | 土地家屋調査士 |
| C | 登記も課税明細も、現況より小さい | 増築が課税にも載っていない | 土地家屋調査士+市税事務所(追徴の話は税務の領域) |
| D | 離れ・物置・車庫が、登記にも課税明細にも載っていない | 附属建物が未登記 | 土地家屋調査士 |
※図と表は、調査を始めるための目安です。面積の差や家屋番号の空欄だけで未登記と断定せず、附属建物を含む登記記録と現況を照合します。物置・車庫は、構造などにより登記対象となる建物に当たらない場合もあります。
土地家屋調査士(建物の表題部や土地の測量を扱う専門家。名義変更を扱う司法書士とは別の資格です)という名前は、このあと何度も出てきます。
Cの型だけ少し注意が要ります。課税にも載っていない増築は、過去の分の税金がどうなるかという話が別に出てくることがあります。そこは市税事務所や税理士さんに確認してもらう領域です。私たちは「売る段取り」を担当し、税金の細部は専門家に委ねます。
なお、ここで見ているのはすべて「建物」の面積です。土地の面積がズレている場合は測量の話になり、書類も相手も変わります。土地のほうはこちらの記事へ → トラブル回避!大阪市不動産売却での現況測量・確定測量の違いとは
▶ 「担当者に3枚を並べてもらってください」
私は査定に伺ったとき、この3枚を自分で見比べてから販売図面を作ります。写真も図面も掲載文も私が自分で作るので、ここでズレに気づいておかないと、あとで自分が困るからです。逆に言うと、担当者がこの3枚を見ていないまま「いくらで売れますよ」と言っているなら、それは少し急ぎすぎかもしれません。「3枚を並べて見てもらえますか」と、売主様のほうから言っていただいて大丈夫です。
さて、ここまでは「登記」の話でした。でも第1章で、家の書類は3つの役所に分かれていると言いましたよね。もう1つの軸、「建築確認」を次の章で見ます。大阪市ならではの事情があるので、ここは飛ばさず読んでください。
第4章:大阪市の防火・準防火地域では1㎡でも確認申請——「確認なしの増築」をどう扱うか
▶ 「10㎡以下の増築は確認申請がいらない」の落とし穴
ネットで調べると「10㎡以下の増築なら確認申請は不要」とよく書いてあります。これは建築基準法6条2項の話なんですが、この例外が使えるのは「防火地域・準防火地域の外」だけです。防火地域・準防火地域とは、火事が広がりにくいように、建物の燃えにくさの基準が決められた区域のこと。その中では、増築は1㎡でも確認申請が要ります。過去の増築は、増築した当時の区域指定や法令も確認する必要があります。
大阪市は市域の広い範囲が準防火地域に指定されています。どのくらいの割合かという数字は、私も持っていません。ただ、ご自宅がどちらかは「マップナビおおさか」という大阪市の地図サイトで住所を入れれば確認できます。淀川区や東淀川区の住宅街も、開いてみると準防火地域の色が付いているところが多いですよ。
だから、親の代に「台所をちょっと張り出しただけ」という小さな増築でも、大阪市では確認申請が必要だった可能性が高い。そして当時は、近所の大工さんに頼んで、申請なしで建てるのがごく普通だった。「確認なしの増築」が築古の家に多いのは、そういう理由です。
▶ 「書類がない」と「必要な確認を受けていない」を分ける
ここで一つ、丁寧にお伝えしたいことがあります。確認済証が手元にないだけなのか、必要だった建築確認を受けずに増築したのかは、別の話です。必要な確認を受けていなければ、手続き上の違反の問題があります。書類がないだけで、すぐに違法とも適法とも判断はできません。「既存不適格」という言葉があります。建てた当時は法律に合っていたけれど、その後の法改正で今の基準には合わなくなった建物のことです。違法建築とは扱いが違います。
ただ、ご自宅の増築部分がどれなのか。「確認を取っていないだけで基準には合っている」のか、「基準にも合っていない」のか、「既存不適格」なのか。この線引きは建築士さんや大阪市の建築の窓口が判断する領域で、私たち不動産会社が「大丈夫です」と言い切ることはできません。
▶ 売主様がやることは3つ
だから売主様がやることは、次の3つに絞っていいと思います。
1. 確認済証・検査済証(工事が終わったあとの検査に合格した書類)を家の中で探す。押し入れの奥の建築当時の封筒、権利証と一緒に保管された書類の束、そのあたりが定番の場所です
2. 見つからなければ、大阪市で「台帳記載事項証明」(建築確認の記録が台帳に残っているかを証明する書類)を取ってみる。建てたときの確認の記録があるか、増築の記録があるかが分かります
3. 見つかった書類(または「なかった」という事実)を、担当者に渡す

※図の「確認済証がある」は、増築部分まで含む確認・検査の履歴を確かめる入口です。確認済証の有無だけで現在の適法性は決まりません。「既存不適格」は建築当時適法だったことが前提で、必要な確認を受けていなかったことを正当化するものではありません。
この2軸で見ると、「登記を直せば済む家」と「建築確認の問題が別に残る家」が分かれます。前者なら、話は次の章の「直す・直さない」に進めます。後者は、建築士さんの意見を先に聞いてから売り方を決めるほうが安全です。
では、「登記を直す」と決めた場合、誰に頼んで、いくらかかって、何か月見ればいいのか。次の章で幅で押さえていきましょう。
第5章:直してから売る——表題部変更登記の費用・期間と、売り出し日からの逆算
▶ 頼む相手は土地家屋調査士
増築部分を登記に反映させる手続きは「建物表題部変更登記」といいます。これを頼むのは土地家屋調査士です。相続登記でお世話になった司法書士さんではないので、注意してください(両方の資格を持っている先生もいます)。
▶ 費用は「資料がそろえば10万円前後」が目安
日本土地家屋調査士会連合会が2022年度に、全国の調査士事務所に行ったアンケートがあります。それによると、木造2階建の増築で建物表題部変更登記を頼んだ場合の報酬は、全国平均で税抜91,082円でした。中央値は87,665円です。ネットで「数十万円」と見て身構えていた方は、「あれ、思ったより……」と感じたかもしれません。ただしこれは、建築確認済証など資料がそろっている条件での数字です。
確認済証も図面もない場合は、調査士さんが現地を測って図面を起こすところからになるので、その分が上に乗ります。いくら乗るかは事務所と家の状態で変わります。だから私からは数字で断言せず、「見積もりを2か所で取ってみてください」とお伝えしています。
建物ごと登記がないBの型は「建物表題登記」という別の手続きになります。同じアンケートでは、木造2階建の新築で全国平均85,174円(税抜)が目安です。こちらも確認済証がそろっている条件なので、ない場合はやはり上に乗ると見ておいてください。相続した未登記建物では、相続関係や遺産分割の内容を確認したうえで、相続人名義で表題登記をする手続きが必要です。必要書類や所有権保存登記までの流れは、土地家屋調査士と司法書士に確認します。その分、期間も費用も上乗せになることがあります。
▶ 期間は「数週間〜」、そこから売り出し日を逆算する
期間は、資料がそろっていて調査士さんがすぐ動けるなら数週間から。法務局の審査も入るので、繁忙期や相続が絡む場合はもう少し見ておいたほうが安心です。
ここで大事なのが「売り出し日からの逆算」です。私はよく、売却のスケジュールを「3つの時計」で考えるように売主様に話しています。詳しくは note に書きました → 家を売るのは何か月?答えは「3つの時計」で決まる 。登記の時計は、そこにもう1本足す形になります。
進め方は2通りあります。
・直してから売り出す:調査士に依頼 → 登記完了 → 販売図面を作って売り出し。登記と現況の不一致という審査上の課題を先に解消できるので、売り出しがいちばんきれいです。そのぶん売り出しが数週間〜数か月あとにずれます
・並行して直し、金融機関が求める期限までに終える:調査士に依頼した時点で売り出しを始める。調査中なのか申請済みなのか、実際の進捗を正確に伝えたうえで買主さんを探す。契約から決済(残代金を受け取って家を引き渡す日)までの間に登記を終える形。売り出しは早められます。ただ、買主さん側の金融機関が「申請中」でも審査を進めてくれるかは金融機関ごとに違うので、先に確認が要ります
「直してから持ってきてください」と言って止めてしまう会社もあれば、並行で進める段取りを組む会社もあります。私は、住み替え先の話が動いている売主様には、並行で進めることを勧める場面があります。どちらが正解というより、売主様の「いつまでに」で決まる話です。
▶ 「先に増築部分を壊す」は慎重に
たまに「登記と合わせるために、増築した部分を先に壊してしまえばいい」という発想が出てきます。たしかにズレはなくなりますが、家の使える面積が減って価値も下がるので、私はあまりお勧めしていません。残置物を先に処分して損をする話と同じ型です → 大阪市の実家を不動産売却|残置物を先に処分すると損する3つの理由
なお、ここで話しているのは建物の「表題部」の登記です。所有権の移転や抵当権の抹消といった、売買のときの登記はまた別の手続きで、そちらはこの記事にまとめています → 不動産売却の登記を大阪で進める手順!費用や必要書類を全解説
ここまで読むと「直すのが正解」に見えるかもしれません。でも実は、直さずに売る道も仲介の中にちゃんとあります。次の章で、その選択肢を手取りの目線で並べてみましょう。
第6章:直さずに売る道もある——条件を明示して売る場合の買主の層と手取り
▶ 直さずに売る、3つの形
1つ目は、「未登記の増築あり。登記は買主が引渡し後に行う」と告知書と契約書に明記して、実需の買主さん(自分や家族が住むために買う人)に売る形です。対象になるのは、現金で買う方か、金融機関が個別に「この条件でも融資します」と判断してくれた方です。通る保証はありませんが、実際にこの形で進む取引はあります。
2つ目は、買主さんが登記費用を負担する代わりに、その分を価格で調整する形。「登記費用相当額を売買代金から引く」といった内容を覚書(契約の補足として交わす短い書面)にして残します。1つ目と組み合わせることが多いです。
3つ目は、高く買ってくれる買取業者を探す形。私たちは自社で買い取ることはしません。ただ、売主様が買取を希望される場合や、買取で進めたほうが売主様のためになる場合は別です。複数の買取業者に声をかけて、いちばん条件のいいところを探します。買取の出口がないわけではないんです。
▶ 直す・直さないの比較表

| 直してから売る | 並行して直す | 直さず条件明示で売る | 買取業者を探す | |
| 登記費用 | 売主が先に負担(10万円前後〜) | 売主が先に負担 | 買主負担(価格で調整) | 業者側で処理 |
| 期間 | 登記完了後に売り出し | すぐ売り出し。契約〜決済で登記 | すぐ売り出し | 最短 |
| 買主の層 | ローン利用の実需まで広い | やや広い(金融機関次第) | 現金または個別判断の実需 | 業者のみ |
| 価格への影響 | 小さい | 小さい | 差が出ることがある | 仲介より低くなりやすい |
| 手取りの考え方 | 売値 − 登記費用 − 仲介手数料 | 同左 | 売値(調整後)− 仲介手数料 | 買取価格 − 仲介手数料等の諸費用 |
※図の「買取価格そのまま」は、手取りの確定額を意味しません。買取業者への売却でも仲介を依頼すれば仲介手数料がかかる場合があり、印紙代・抵当権抹消費用・税金・ローン残債なども確認します。ほかの列も共通の諸費用を省いた比較用の式です。
「価格への影響」のところは、正直に言うと「差が出ることがある」としか書けません。家の状態と買主さん次第で、ほとんど変わらないこともあれば、はっきり効くこともあるからです。担当者に「直す・直さないで手取りはどう違いますか」と聞いて、数字で答えてくれるかどうかを見てください。
▶ 直す・直さないの3問
どれを選ぶか迷ったら、この3つに答えてみてください。
1. 売り出しまで、何か月ありますか?(住み替え先の引渡しや、相続税の申告期限などから逆算して)
2. 登記費用(10万円前後〜)を、売る前に出せますか?
3. ローンを使う買主さんも含めて、広く売りたいですか?
3つとも「はい」なら「直してから売る」。1が「あまりない」で2・3が「はい」なら「並行して直す」。2が「難しい」なら「直さず条件明示で売る」。「とにかく早く、手間なく」が最優先なら「買取業者を探す」。ざっくりこう振り分けられます。
▶ 告知書に「未登記の増築あり」と書く
どの形を選んでも共通して大事なのが、告知書(物件状況報告書。家の状態を売主が買主に知らせる書類)に「未登記の増築がある」と書くことです。私たちは基本、契約不適合責任(引渡し後に見つかった不具合の責任)を売主様が負わない特約で売ります。ただし、売主様が知っていて告知書に書かなかった事項には、この免責が効きません。だからこそ、告知書は売主様と一緒に細かく書きます。告知書と付帯設備表の書き方は note にまとめています → 契約の前に売主が書く2枚。告知書と付帯設備表は「不明」と書いていい
▶ 私たちがどちらにも誘導しない理由
登記事務所は「直してから」に、買取業者は「直さず買取」に、それぞれ誘導する動機があります。私たちは売却専門で、自社で買い取ることもしないので、売主様の条件に合わせて、複数の売り方を比較してご提案します。だから「囲い込みはしないですか?」と聞かれたときと、同じ答え方になります。「買取にも登記にも、誘導する理由が私たちにはありません」。
ここまでは「売り出す前」の話でした。でも、この記事にたどり着いた方の中には、もう契約してしまってから分かった方もいるはずです。次の章は、その方のために書きます。
第7章:契約したあとに分かったら——ローン特約の期限までにできること

この章は、すでに売買契約を結んだあとで「未登記の増築がある」と分かった方に向けて書きます。「白紙になるしかない」と思っているなら、まだ期限までにできる手が3つあります。
たとえば、契約から2週間後に買主側の仲介から電話がかかってくる。「金融機関から、登記と現況が合わないので審査を進められないと言われました」。ローン特約の期限まであと3週間。売主様の頭には「白紙」の2文字しか浮かばない。そんな場面です。
▶ 手その1:「何がそろえば審査が進むか」を確認する
まず、買主側の仲介を通じて金融機関に「何がそろえば審査が進みますか」と聞いてもらいます。登記の完了が条件なのか、申請したことが分かる書類で足りるのか、調査士の測量図で足りるのか。ここは金融機関ごとに違うので、決めつけずに聞くのが先です。ここを聞かずに「無理でした」で終わる担当者も、残念ながらいます。
▶ 手その2:調査士に急ぎで頼み、期限を延ばす覚書を交わす
同時に、土地家屋調査士に「急ぎで」と伝えて依頼します。そのうえで、買主さんと「ローン特約の期限と引渡し日を◯日まで延ばす」という覚書を交わします。買主さんも、気に入って契約した家をあきらめたくないことが多いものです。事情を正直に話せば、応じてもらえることが少なくありません。登記だけ急いで期限を延ばし忘れると何も残らないので、覚書が先です。
▶ 手その3:買主さんの資金計画の変更を相談する
金融機関がどうしても動かない場合は、買主さんに資金計画の変更を相談してもらいます。「自己資金を増やす」「別の金融機関に申し込む」といった形です。ここまでやって難しければ、そのときに白紙を受け入れて、第3章に戻って3枚をそろえてから売り出し直す。何もせずに白紙になるのとは、次の売り出しの準備がまったく違います。
担当者がこの3つを動いてくれないなら、まず責任者や別の専門家に相談してください。売買契約後の仲介会社変更は、媒介契約や報酬、買主側との調整が絡むため、簡単に切り替えられるとは限りません。媒介契約中の会社変更の考え方はこちら → 大阪の不動産売却で会社変更する手順と失敗しない注意点
▶ 仲介会社が「契約後」を書きたがらない理由
正直に言うと、この章は不動産会社があまり書きたがらない内容です。契約後に未登記が分かるというのは、売り出し前に3枚を見ていなかったということです。書けば「自分たちの見落とし」を認める形になる。私がここを書けるのは、売り出し前に3枚を見比べる工程を、自分の仕事の中に置いているからです。だからこそ、この章に来る前に、第3章で止まってほしい。それがこの記事のいちばんの願いです。
では最後に、今日からやることを3段でまとめます。
第8章:まとめ+今日からやるべきこと
▶ この記事のまとめ
・登記・建築確認・固定資産税は別の役所で、自動では連動しない。大阪市の築古の戸建てでは珍しくないズレ
・ローンが止まるのは「違法だから」ではなく、金融機関が担保の評価を登記の床面積・構造で行うから
・売り出す前に、登記事項証明書・課税明細書・現況の3枚を並べて、A〜Dの型を判定する。頼む相手は土地家屋調査士
・大阪市は準防火地域なら1㎡でも確認申請が要る。確認済証を探し、なければ台帳記載事項証明を取る。線引きは建築士・行政に委ねる
・「直してから売る」「並行して直す」「直さず条件明示で売る」「買取業者を探す」の4つを、3問で振り分ける。どれを選んでも告知書には書く
・契約後に分かっても、期限までにできる手は3つある
▶ 今日できること
1. 法務局で、建物の登記事項証明書を取る(オンラインでも申請できます)
2. 固定資産税の課税明細書を探す。見つからなければ市税事務所で名寄帳を取る
3. 外周と各階を歩いて、増築・離れ・物置をスマホで撮る。そして第3章の3枚合わせ判定表に当てる
▶ 1週間以内にすること
1. 確認済証・検査済証を家の中で探す。なければ「マップナビおおさか」でご自宅が準防火地域かどうかを見る
2. 担当者に「3枚を見比べてどう売りますか」「直す・直さないで手取りはどう違いますか」と聞く。返事が「買取しかないですね」だけなら、別の会社にも同じ質問をしてみてください
3. 土地家屋調査士に見積もりを取る。できれば2か所
▶ 相談したくなったら
ここまで読んで「うちはどの型だろう」と迷ったら、公式LINEで「面積が違うと言われた」と一言だけ送ってください。「担当者に何て言えばいいんだろう」でも大丈夫です。3枚の写真を送っていただければ、私がどの型かを見て、次に誰に何を頼めばいいかをお返事します。売るかどうかを決めていなくても大丈夫です。
・公式LINE(友だち追加)→ 公式LINEで相談する
・電話 06-6842-7377 / メール info@heroes-property.co.jp(LINEが使いにくい方はこちらへ)
なお、登記の細部は土地家屋調査士、建築確認の判断は建築士や大阪市の窓口、税金の細部は税理士さんの領域です。私たちは「売る段取り」を担当し、そこは専門家と一緒に進めます。
おわりに
長い記事を、最後まで読んでくださってありがとうございました。
「面積が違いますね」と言われた夜は、自分の家が急に欠陥品のように思えて、不安になったと思います。でも、それは親の代の普通の暮らしの跡で、大阪市の築古の家では珍しいことではありません。3枚を並べれば、何が起きているかは見えます。見えれば、直すか直さないかを、あなたが自分で選べます。
私は、売主様が「担当者に言われるがまま」ではなく、「自分で見て、聞いて、選んだ」と思える売却がいちばんだと思っています。この記事が、そのための最初の1枚になればうれしいです。焦らず、まずは登記事項証明書を1枚、取りに行くところから始めてみてください。








