認知症の親名義の大阪市の実家、後見を申し立てる前に確かめる4つのこと
2026/09/14
日曜の夜、施設の面会から帰ってきて、お母さんの通帳と請求書を食卓に並べている。そんな時間に、この記事を開いてくださったのかもしれません。「認知症 親 家 売却」で検索すると、「勝手に売れません」「成年後見制度とは」「認知症でも買い取れます」が並びますよね。どれも読んだのに、答えがない。「うちの親は今、売れる側なのか」「後見を頼んだら誰が来て、いつまで払うのか」「年末に間に合うのか」。
この記事で扱うのは、成年後見(家庭裁判所が、親の財産を管理する人を選ぶ制度)を申し立てる前に確かめておきたい4つのこと。順番は、売る側の段取りとお金の面から。読み終わるころには、親がAかBかを判定する物差しと、今日やることが1つ決まっているはずです。
目次
第1章:「認知症=売れない」ではない。診断と意思能力は別のものと知る
この章では、「認知症と診断された=もう家は売れない」という思い込みを、いったんほどきます。そのうえで、あなたの親が「今なら本人が売れる側」か「後見が要る側」かを、誰がどう判定するのかをはっきりさせます。
▶ 「売ってええよ」の翌週に「誰が売るて言うた」
たとえば、こんな場面。淀川区の実家に一人で住んでいたお母さんが、春に有料老人ホームに入った。面会のたびに「あの家、売ってええよ」と言ってくれる。ところが翌週に行くと「誰が売るて言うた」と怒る。「これ、売っていいのかな」と迷ったまま、司法書士さんの無料相談に行く。そこで「認知症なら成年後見が要ります」と言われて固まった…。
医学上の「認知症」という診断と、法律上の「意思能力」は、別のものです。意思能力とは、「この契約が何で、自分に何が起きるかを理解して、自分で判断できる力」のこと。しかも、契約ごと・その日ごとに見られます。診断名が付いた瞬間に自動で「契約できない人」になるわけではないんです。
逆に言うと、「軽度だから大丈夫」とも自動では言えません。判定するのは診断名ではなく、その日その場で本人が何を理解して何を言えるか、なんですね。
▶ 判定するのは不動産会社ではありません
じゃあ、誰が判定するのか。不動産会社ではありません。売買の最後の日を「決済」といいます。残りのお金の受け渡しと名義変更を、同じ日にやる場です。その名義変更を担当する司法書士さんが、親本人と面談します。「売る意思があるか」「内容を理解しているか」を確かめるのは、この人です。医師の診断書や意見書は、その裏付けになります。
私たちは、「大丈夫です、売れます」と請け負うことはしません。ポストに入っている「認知症でも買い取れます」というチラシ。あれは、この判定を不動産会社が引き受けているように読めます。でも、実際に決済で確認するのは司法書士さんです。判定は専門家に委ね、私たちは「判定が取れる状態を、売り出し前に作る段取り」を担当する。ここが立ち位置の違いだと思っています。
▶ 分岐表:あなたの親はA・B・Cのどれか
| 区分 | 親の状態 | 進み方 |
| A |
司法書士との面談で、「売る」という意思と契約の内容を自分の言葉で示せる |
親本人が売主として売る(第2章へ) |
| B | 面談で意思を示せない。日によって大きく揺れる |
成年後見の申し立てが要る(第3章〜第6章へ) |
| C | まだ元気で、会話も判断も普段どおり |
前編の記事へ。「動けるうちに」の段取りを書いています |
AとBの境目にいる方が、実はいちばん多いのではないでしょうか。「本人は売ると言っている。でも意思能力があるかは、誰も判定していない」という状態です。
▶ あなただけではありません
大阪市が公表している、2026年4月1日現在の数字があります。要介護認定の調査から推計した「認知症高齢者等」(日常生活に支障がある段階=自立度Ⅱ以上の方)は、市内で105,056人。そのうち43,278人が、特別養護老人ホームやグループホームなどの施設、あるいは病院にいらっしゃいます(大阪市「認知症高齢者等の数」 )。4万人を超えるその一人ひとりの後ろに、「実家をどうするか」を考えている家族がいる。あなたの食卓の悩みは、同じ夜、大阪市のあちこちの食卓にも並んでいます。
確認①「今なら本人が売れるか」でA・Bに分かれ、Bは確認②後見人は誰か→③報酬はいつまで→④年末に間に合うか、を順に通る分岐図。Cはまだ元気な方で前編へ
この記事では、この4つを「後見の前の4つの確認」と呼んで、章ごとに1つずつ埋めていきます。まずはAの方、つまり「今なら本人が売れる」側の落とし穴から。次の章で一緒に見ていきましょう。
第2章:軽度で本人が「売る」と言えるとき、決済で止まらないために売り出し前に確かめること
▶ 決済の朝、司法書士さんから電話が来る
私の経験では、いちばん避けたいのはこの場面です。
子が親から委任状(「この契約は子に任せる」という書面)をもらい、代理人として買主さんと売買契約を結ぶ。手付金も受け取り、決済日も決まる。買主さんは住宅ローンの実行日を組み、引っ越し業者も予約する。そして決済の朝、施設に出向いた司法書士さんから電話が来る。「今日は、ご本人の意思確認が取れませんでした」。
その日の決済は中止です。買主さんのローン実行はやり直し、引っ越しはキャンセル、場合によっては契約そのものが白紙に戻ります。あとから「意思能力がなかった」と契約が無効になるより、はるかにましではあります。それでも、売主側も買主側も、本当につらい朝になります。
なぜ起きるのか。委任状は「本人に意思能力があること」が前提の書類だからです。委任状を書いた日と、決済の日は別の日。その間に状態が変われば、委任状があっても決済は進みません。
▶ 売り出し前に確かめる3点
だから順番を変えます。「売り出してから確かめる」ではなく、「確かめてから売り出す」です。
1つ目:司法書士さんに、売り出し前に本人と面談してもらう。 決済で意思確認をする司法書士さんに、「決済当日を想定した事前の面談」をお願いします。施設まで来てもらえることが多いです。ここで「この状態なら決済で確認できそう」「難しい」の感触を、先に聞いておく。もし「難しい」なら、この時点でBに切り替えます。売り出してからより、ずっと傷が浅いですよね。
2つ目:主治医に、診断書か意見書を相談する。 「家の売却契約を理解して判断できる状態か」について、主治医の先生に所見を書いてもらえるか相談してみてください。面談の裏付けになりますし、あとから「本当に意思能力があったのか」と問われたときの記録にもなります。
3つ目:親族の同意を、書面で残す。 奈良に住む弟さんが「母さんの家やのに」と口が重いなら、なおさらです。「母がこう言っている」「面談でこう言われた」「売却代金は母の施設費用に使う」を、日付入りで文章にして共有する。LINEでも構いませんが、あとで読み返せる形にしておくのがコツです。
委任状の書き方や、売主と買主が別の日に署名する「持ち回り契約」の注意点は、こちらの記事で書いています
第3章:後見を申し立てる前に知っておく3つの現実(誰が・いつまで・取り下げられない)
この章では、成年後見を「手続き」ではなく「制度」として見ます。親の財産の管理者を家庭裁判所が決め、原則として亡くなるまで続く制度、という意味です。大阪家庭裁判所が公表している資料をもとに、3つの現実と、費用・期間を並べます。
「後見人は裁判所が決めます」「報酬は亡くなるまでです」。司法書士さんの無料相談でそう聞いて固まった、という声を、私たちもよく耳にします。ただ、知ったうえで申し立てるのと、知らずに申し立てるのでは、その後の納得感がまったく違います。
▶ 現実1:後見人は、あなたとは限らない
「自分が後見人になって、自分で売るつもりだった」。そう考えている方に、まずお伝えしたいことがあります。大阪家庭裁判所の資料には、申立人が推薦した候補者が「必ず選ばれるとは限りません」と、はっきり書かれています。事案によっては、弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職が後見人に選ばれます。全国の数字では、2024年に親族が後見人等に選ばれたのは全体の約17%。8割以上は親族以外です。
想定していなかった第三者と一緒に、親の家の売却を進めることになる。これが1つ目の現実です。専門職が付いた場合、その報酬は親の財産から支払われます。
▶ 現実2:家を売り終わっても、後見は終わらない
同じ資料には、こうも書かれています。申立てのきっかけになった用事が終わった後も、本人の判断能力が回復するか亡くなるまで、後見は続く。「家を売るためだけに頼んだのに、売った後も報酬が続く」。これが、2026年に制度が改正された背景でもあります(第6章で扱います)。
報酬の目安は、東京家庭裁判所が公表している表だと、基本が月額2万円。管理する財産(預貯金や有価証券などの流動資産)が1,000万円を超え5,000万円以下なら月3〜4万円。5,000万円を超えると月5〜6万円が目安です。大阪家庭裁判所が同じ表を公表しているかは、私たちでは確認できていません。実際の額は家庭裁判所が個別に決めます。
ここでFPの視点を1つ。家を売る前は、親の預金が600万円(想定値)なら目安は月2万円。ところが家が2,000万円で売れて預金が2,000万円台になると、管理財産が1,000万円を超えます。目安は月3〜4万円へ。「売ったあとのほうが、報酬が高くなる」構造なんです。
条件付きで試算してみます。売却まで1年は月2万円、売却後に月3万円が7年続くとすると、2万円×12か月+3万円×84か月=276万円。親が83歳で、8年間後見が続いた場合の想定です。年数も財産額も家庭によって違うので、ぜひご自分の数字を入れてみてください。
▶ 現実3:申し立ては、自由に取り下げられない
3つ目。申し立ての取下げには家庭裁判所の許可が要り、申立人が自由に取り下げることはできません。しかも資料には、「候補者が後見人に選任されない」という理由では取下げが許可されない可能性が高い、と明記されています。「知らない専門職が付くなら、やめます」は通らない。そう考えておいたほうがいいです。
▶ 費用と期間、そして大阪市の窓口
大阪家庭裁判所のチェック表に載っている費用は、収入印紙800円と登記用2,600円、郵便切手3,990円。医師の鑑定が必要になった場合は、鑑定料として10万円程度を裁判所の連絡に従って納めます。申し立てから審判(裁判所の判断)までは、書類がそろった標準的なケースで1〜2か月程度。鑑定が入るとさらに期間が要ります。
管轄は、親の住民票の住所ではなく「実際に生活している場所」です。お母さんの施設が大阪市内なら大阪家庭裁判所の本庁。ただし施設が堺市なら堺支部、岸和田市なら岸和田支部になります。実家が淀川区でも、施設の所在地で決まる点は覚えておいてください。手続の流れは大阪家庭裁判所の資料で確認できます
→ https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/2020/koken/R20526_koken_tetsuduki.pdf
▶ 1枚の家計表に並べる
私たちがFPの視点でおすすめしたいのは、後見の報酬・施設費用・売却額を、1枚の表に並べることです。想定値で書くとこんな感じ。
| 項目 | 月あたり | 備考 |
| 施設費用 | 約22万円(想定値) | 入居契約書の月額 |
| 年金収入 | 約10万円(想定値) | 差額は約12万円 |
| 後見人の報酬 |
2〜4万円(東京家裁のめやす) |
売却後は上がる可能性 |
| 預金残高 | 約600万円(想定値) | 差額+報酬で、何年もつか |
| 実家の売却見込み額 |
査定書の価格 |
第4章の査定書がここに入る |
「預金が何年もつか」「売れば何年延びるか」「報酬を引いた手取りはいくらか」。この3行が見えると、申し立てるかどうかを、感情ではなく数字で決められます。申し立てそのものは司法書士さんや弁護士さんの領域ですが、この表を持って相談に行くと話が早いはずです。
さて、後見人が付いたとして、家はどうやって売るのか。ここに「家庭裁判所が見るのは査定書」という、あまり知られていない事実があります。次の章です。
第4章:後見人が売るとき、家庭裁判所が見るのは「査定書」。買取と仲介で許可の取り方はどう変わるか
▶ 施設に入っていても、実家は「居住用」
大阪家庭裁判所の「居住用不動産処分許可の申立てについて」には、本人の居住用不動産の範囲がこう書かれています。今は住んでいなくても、病院や施設を出たときに住むことになる家は含む。そして、処分には裁判所の許可が必要で、許可を経ずに結んだ契約は無効。
お母さんが施設にいても、淀川区の実家は居住用不動産です。後見人が売るには、家庭裁判所の許可が要ります。この一次資料はここで読めます → https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/file/ofc4019.pdf
▶ 必要書類に「不動産業者作成の査定書」がある
売却の場合の添付書類として、資料に挙がっているのはこの4つです。
●処分する不動産の全部事項証明書(登記簿の写し)
●固定資産評価証明書
●不動産契約書(案)のコピー
●不動産業者作成の査定書
査定書については、「鑑定書に準じた詳しい記載内容の査定書を仲介業者等に作成してもらってください」とあります。さらに、査定価格より低い価格で売る場合は、「なぜ低額で売却することになったのかの説明書」も添付するように、と。
この2行から、3つのことが読み取れます。
1つ目、査定書は「根拠を書いた価格」であること。 チラシの「無料査定 ○○万円」の1枚では足りません。近隣の成約事例、路線価や公示価格との関係、建物の評価、周辺の売り出し事例、そこから価格を出した過程。これを書いた査定書を、仲介業者が作ります。これは私たちの本業そのものです。
2つ目、買取価格が査定を下回れば、説明書が要る構造であること。 買取(不動産会社が自ら買主になる売り方)は、市場で売るより価格が下がりやすい。すると「なぜ低額で売るのか」の説明書が必要になります。逆に言えば、市場価格で売れるなら説明書は要りません。「安く売ったほうが許可が通る」のではなく、「査定に近い価格で売るほうが、書類は少ない」んです。
3つ目、申立ては「取引が成立する一歩前」に行うこと。 資料の指示はこうです。家庭裁判所に事情をあらかじめ連絡したうえで、取引の交渉を始める。申し立てるのは「取引が成立する一歩前の段階で」。あわせて、取引日は「余裕を持って設定しておいてください」とも。順番はこうなります。
査定書の作成→販売活動→買主が決まり契約書(案)→家庭裁判所に処分許可を申し立て→審判→契約・決済の6段階。添付書類と「裁判所に見せられる3点セット」を添えた流れ図
私たちは、買主さんと結ぶ契約書に「家庭裁判所の許可が下りることを条件にする」という特約を入れます。許可が下りなければ契約は白紙に戻り、買主さんにも売主様にも損が出ない形にしておく。そのうえで、審理の期間を見込んで決済日を遠めに置きます。
▶ 買取が親本人の利益になる場面もある
正直に書きます。買取のほうが親本人のためになる場面は、あります。再建築不可(建て替えができない土地)や、長屋で切り離しが難しい家。雨漏りで内覧に耐えない家。控除の期限が目前で、市場に出す時間がないとき。こうした場合は、説明書に理由を書けば、買取でも許可の道はあります。仲介と買取の違いは、こちらで詳しく書いています
→ 「大阪の不動産売却|仲介と買取の違いと選び方を徹底比較」
ただ、知っておいてほしいのは、後見が付いた物件は「買取に流れやすい」構造があることです。業者の側から見ると、買取は価格を自分で決められて、許可の書類も整えやすく、手離れがいい。それは業者の都合であって、親本人の利益とは別の話です。特定の会社の話ではありません。仕組みとして、そうなりやすいのです。
▶ 仲介で市場に出して、許可を取る条件
じゃあ、仲介で市場価格を目指しながら許可を取るには、何が要るのか。私たちが考える条件は3つ。この記事では「裁判所に見せられる3点セット」と呼びます。
1.根拠を書いた査定書(価格の出し方が第三者に説明できる)
2.レインズ(不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み)への登録と、登録証明書
3.販売記録(問い合わせ数・内覧数・2週間ごとの報告)を、裁判所に見せられる形で残す
ここで、私たちの「囲い込みをしない」という方針が、そのまま効いてきます。囲い込みとは、売却を任された物件を自社で抱え込み、他社からの購入希望を通さないこと。それをしないというのは、言い換えれば「市場に出した記録が、そのまま裁判所に見せられる」ということです。私たちは買取の商品を持たない売却専門なので、後見付きの物件を自社の買取に流す動機がそもそもありません。レインズの登録証明書の見方はこちら
→ 「レインズ登録証明書ってなに?大阪市不動産売却で絶対に確認すべき必須の1枚」
「後見人が付いたら安く買い叩かれるんじゃないか」という不安への、私たちなりの答えがこれです。裁判所が見るのは査定書。だから、3点セットがそろっていれば、市場価格で売る道は残っています。
では、この一連の流れは何か月かかるのか。控除の期限に間に合うのか。次の章で、時計を重ねて逆算します。
第5章:4つ目の時計。申立てから決済までを「3年目の年末」に重ねて逆算する
▶ 後見の時計の中身
大阪家庭裁判所の資料と、複数の解説で示されている期間を並べるとこうなります。
| 工程 | 目安 | 出典・フラグ |
| 申立ての準備(診断書・戸籍・登記されていないことの証明書・財産目録などをそろえる) | 2〜4週間 | 推測。司法書士さんに頼むかどうかで変わります |
| 受理面接の予約と面接(書類は面接日の1週間前までに提出) | 予約状況による | 大阪家裁の資料 |
| 審判まで | 1〜2か月程度(鑑定があればさらに) | 大阪家裁の資料 |
| 審判の確定 | 通知を受け取ってから2週間 | 大阪家裁の資料 |
| 初回報告(財産目録と収支予定表の提出) |
確定後1か月以内 |
大阪家裁の資料 |
| 査定書・販売活動・契約書(案) | 物件と価格による | 私たちの範囲 |
| 処分許可の申立て → 審判 → 決済 | 審理の期間を見込む | 大阪家裁の資料 |
全部を足すと、半年から1年。これは複数の解説で繰り返し出てくる幅で、私たちの実感とも大きくは外れていません。ただし、途中で買主さんが待てなくなって離れる、というのが、この時計のいちばんのリスクです。だから第4章のとおり、契約書に許可の条件を入れ、決済日を遠めに置いておくんですね。
| 施設に入った年 | 控除の期限 | 今から後見を申し立てる場合 |
| 2023年 | 2026年12月31日 |
残り3か月半。後見の申し立てからでは、正直、間に合いにくいです |
| 2024年 | 2027年12月31日 |
今から始めれば、余裕をもって組めます |
| 2025年 | 2028年12月31日 | 急がなくてよい。ただし親の状態は待ってくれません |
| 2026年 | 2029年12月31日 |
同上。第6章の「待つか」の判断が現実味を持ちます |
2023年入居の方へ。間に合わない場合は、期限を過ぎても家は売れます。控除が使えなくなるだけです。税額がどれくらい変わるかは前編と、取得費が分からない場合の記事に委ねます
→ 「大阪市の不動産売却で税金が数百万増える|取得費不明の5%ルール」相続後に使える「空き家特例」は要件も期限も別物なので、そちらも前編を見てください。
第6章:「終われる後見」は2028年末まで。今申し立てるか、待つか、家族信託は間に合うか
▶ 改正で何が変わるか、いつからか
成年後見制度を見直す改正民法が、2026年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。施行(実際に使えるようになる日)は「公布から2年6か月以内」と決まっていて、これから政令で定められます。言い換えると、遅くとも2028年12月24日までには施行されます。
変わる中身の柱は3つ。後見・保佐・補助の3つの類型を「補助」に一本化し、必要な支援だけを個別に設計すること。一度始めると終われなかった終身制を見直すこと。後見人の交代を柔軟にすること。「実家の売却の手続きが終わったら後見を終える」という使い方が想定されています。
ただし、ここは隠さずに書いておきます。すでに始まっている後見に、新しい仕組みがどう適用されるのかは、この記事を書いている時点では未定です。法務省の公表を待つしかありません。施行日が決まったら、この記事は更新します。
▶ 判断表:待てる条件、待てない条件
「せっかく終われる後見になるんやから、待ったほうが得ちゃう?」。そう思うのは自然です。ただ、待てるかどうかを決めるのは制度ではなく、家計です。
| 条件 | 待つことを考えてもよい | 待たないほうがよい |
| 親の預金で施設費用の差額を賄える期間 | 2年以上ある | 2年もたない |
| 3,000万円控除の期限 | 2028年12月31日以降 | 2026〜2027年12月31日 |
| 親の状態 |
安定している |
揺れが大きく、Aの道が閉じかけている |
| きょうだいの合意 | まだ時間が要る | すでにそろっている |
ここで、施行日の「その先」を見ておいてください。仮に施行が2028年12月だとしても、そこから申し立てて、審判が出て、売り出して、処分許可を取って決済する。第5章の時計がそのまま乗ります。実際にお金が入るのは、2029年の後半以降になり得ます。
第3章の家計表に戻ってみましょう。施設費用と年金の差額が月12万円、預金が600万円(いずれも想定値)なら、報酬を入れなくても4年ちょっとで底をつきます。「2年以上ある」の条件は満たしそうに見えますが、2028年末から売れるまでの1年を足すと、ぎりぎりです。数字を入れると、「待てる」「待てない」が案外はっきりします。
第7章:まとめ+今日からやるべきこと
▶ 「後見の前の4つの確認」
| 確認 | あなたが用意するもの | 判断できること |
| ①今なら本人が売れるか | 司法書士さんの面談結果・主治医の診断書 | A(本人が売主)かB(後見が要る)か |
| ②後見人は誰になるか | 親の財産額・親族関係・候補者の有無 | 専門職が付く前提で動くか |
| ③報酬はいつまで続くか |
親の年齢・預金・施設費用 |
月2〜6万円×想定年数と、待つ場合の見通し |
| ④年末に間に合うか |
施設の入居日・申立て予定日 |
3年目の12月31日までに決済できるか。無理なら代替 |
▶ 今日できること
封筒を1つ用意してください。そこに、次の4つを入れます。
1.親の診断書(手元になければ、主治医に依頼するメモを書く)
2.実家の登記事項証明書(法務局の窓口かオンラインで取れます)
3.施設の入居契約書(月額と入居日が書いてあるページ)
4.親の預金通帳のコピー
そして封筒の表に、入居日と「3年目の12月31日」の日付を書きます。これで、④の確認は今日のうちに終わります。第3章の家計表も、この封筒の中身だけで埋められます。




