検査済証がない大阪市の戸建てを売る|買主のローンから逆算して取る2枚
2026/10/04
「検査済証はありますか?」。実家の査定の帰り際、担当者にそう聞かれて、初めてその言葉を知った方は多いと思います。家中の書類箱をひっくり返しても見つからない。建てた工務店はもう無い。しかも前の日には「書類が無くても現金で買い取りますよ」という電話まで来ている…。不安になって当然です。
この記事では、検査済証が無い大阪市の戸建てを売るときの段取りを、順番にお話しします。家の中で何を探し、大阪市役所で何を取り、どんな売り方を選ぶか。軸は「書類があるか」ではなく、「買主がその家でお金を借りられるか」から逆算することです。
この記事で分かること
・検査済証が無い家が、実は珍しくない理由
・家の値段が「買主の借り方」で変わる仕組み
・大阪市役所で取れる「代わりの2枚」と、その取り方
・自分の家に合う売り方(仲介/条件を示して仲介/買取と並べる)の選び方
・契約が流れないための、買主への伝え方と書類のそろえ方
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で不動産の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷です。業界に入って20年、宅地建物取引士として、古い戸建ての書類箱を売主様と一緒に何度も開けてきました。売る側だけの立場から、正直に書きます。
目次
第1章:「検査済証はありますか?」と聞かれても慌てなくていい理由が分かる
▶ よくある場面:査定の帰りの電車で
10月の土曜日の夕方。東淀川区の実家で2社目の訪問査定を終えて、阪急の電車に揺られている57歳のAさん(仮名)を想像してみてください。
「いくらで売れますか?」と聞いたはずが、担当者の最後のひと言は「検査済証はありますか?無いと、買主さんのローンが少し難しくなるかもしれません」でした。押し入れの書類箱に入っていたのは、権利証と固定資産税の通知書だけ。スマホで「検査済証 ない 売却 大阪市」と打つと、出てくるのは難しい定義の説明か「買取ならすぐ現金化」ばかりです。
もしあなたが今これに近い状況なら、まず深呼吸してください。ここから順番に整理していきましょう。
▶ 検査済証と確認済証、1行ずつ
言葉の説明は短くします。
・確認済証:家を建てる前に、設計が建築基準関係規定に適合すると確認されたことを示す書類
・検査済証:工事後の完了検査で、建物が建築基準関係規定に適合すると認められたことを示す書類
確認済証は「建てる前のOK」、検査済証は「建てた後のOK」。今回見当たらないのは、後者のほうですね。
▶ 1990年代の家なら、無いのは珍しくない
国土交通省の資料では、以前は完了検査率が低く、その後に上昇した経緯が示されています。古い家で検査済証が見当たらないときは、こうした時代背景も踏まえて確認します。出典:国土交通省・完了検査に関する資料。
これは当時の全国の傾向で、1990年代の家すべてが未検査という意味ではありません。Aさんの実家のような1994年築の家でも、交付後に失くしたのか、受検・交付されていないのかは、個別に記録を確かめます。検査済証が見当たらないだけで、違法な建物とは決まりません。
▶ 「無い」には3つの種類がある
ひと口に「検査済証が無い」と言っても、確認したいことは3つあります。③は①②と重なることもある、現在の建物の状態の話です。
1. もらったけれど失くした:完了検査は受けている。紙だけが行方不明
2. そもそも完了検査を受けていない:当時は珍しくなかったケース
3. 増築などで、後から図面と合わなくなった:検査は受けたが、その後の工事で中身が変わっている

①か②かは、家の中を探しただけでは分かりません。ここを確かめるのが、第4章で取りに行く市役所の記録です。ただし、古い記録が残っていない場合もあり、見つからなかったことだけで「検査を受けていない」とは断定できません。
③の増築が主な悩みの方は、登記と現況のズレも絡んできます。こちらの記事で詳しく書いています → 未登記の増築がある大阪市の戸建てを売る。家の前の道に問題があるなら家の前の道が私道だったを。再建築が難しいと言われたなら、note の再建築不可で断られた実家も参考になると思います。
▶ 再発行はできない。だから「別の紙」で示す
ここで1つ、先に知っておいてほしいことがあります。検査済証は、失くしても再発行ができません。大阪府の案内でも、再発行の代わりに役所の台帳に残っている記録の証明で代える、という扱いになっています。
なので「検査済証を取り直そう」と動く必要はありません。基本線は「手元の書類と役所の記録で、確認できる事実を示す」。台帳の証明は過去の交付記録を示すもので、検査済証の再発行でも、現在の建物の適法性を保証する紙でもありません。大阪市内の取得方法は第4章で紹介します。
20年この仕事をしてきて、古い戸建ての書類箱から検査済証がきちんと出てくることのほうが、正直なところ少ない印象です。慌てなくていい、というのはそういう意味です。
では、なぜ査定の担当者は「ローンが難しくなるかも」と言ったのか。次の章で、家の値段と買主のお金の関係を一緒に見ていきましょう。
第2章:家の値段を「買主がお金を借りられるか」が左右する仕組みが分かる
▶ 買主のお金には3つのルートがある
家を買う人が代金を用意する方法は、大きく分けて3つです。
1. 現金:自己資金だけで買う
2. 銀行の住宅ローン:民間の金融機関から借りる
3. フラット35(中古):住宅金融支援機構と民間金融機関が組む、全期間固定金利の住宅ローン
住宅ローンを使って買う人にとって、②③の借り方が使えるかは大きな問題です。現金の買主だけでなく、借りて買う人にも検討してもらえる材料を揃えることが大切になります。
▶ 銀行の住宅ローンで見られること
金融機関はお金を貸すとき、買う家を担保(返せなくなったときの備え)にします。その家が法律に合っているかどうかは、貸す側にとって気になるところです。
2003年(平成15年)には国土交通省が銀行などの団体に、新築の建物への融資で検査済証を活用するよう協力を求めています。貸す側が「建てた後のOK」を気にするのには、こうした経緯があります。
とはいえ、検査済証が無い中古の家にどこまで貸すかは、金融機関ごと・商品ごとに扱いが違うことが多いです。ここは私が「この銀行なら大丈夫」と言える話ではありません。最後は、買主が相談する金融機関が判断します。
▶ フラット35で見られること
フラット35で中古住宅を買う場合は、原則として住宅金融支援機構の技術基準に適合することを示す適合証明が必要です。検査済証が無いという理由だけで、一律に利用できないと決まるわけではありません。必要な書類や検査は、適合証明検査機関または適合証明技術者に確認します。
ここで分けたいのは、建物の技術基準の確認と、買主本人を含めた融資審査です。適合証明が取れても、金融機関・住宅金融支援機構の融資審査で承認されるとは限りません。また、適合証明は建築基準法への適合性を証明する書類ではありません。出典:フラット35・中古住宅の物件検査。
▶ 2025年4月の法改正で、買主の見方が変わった
もう1つ、時代の変化もお話ししておきます。2025年4月施行の改正で、いわゆる「4号特例」の対象が見直されました。木造2階建てなどの大規模な修繕・模様替えも、建築確認の対象になっています。主要構造部の一種以上について過半を修繕・模様替えする工事が目安で、水回りや内装だけの工事がすべて対象になるわけではありません。出典:国土交通省・木造戸建ての大規模リフォーム。
建築確認が必要になる工事では、既存建物の状態を確認する資料が大切になります。「建てた当時は適法で、その後の法改正により現在の基準に合わなくなった既存不適格」と「違反」は別の話です。適用される基準や緩和の有無は、建物と工事内容に応じて建築士などに確認します。買主のリフォーム計画によっては、書類と現況の整理が検討のしやすさを左右すると思っています。
▶ 結論:借りられる買主が減ると、値段に効く
検査済証が無いことそのものが、値段を下げるわけではありません。値段に効くのは、「その家でお金を借りられる買主」が減ることです。
Aさんの実家で考えてみます。内覧に来たのが、住宅ローンで買うつもりの共働きのご夫婦と、現金で買える人の2組だったとします。ご夫婦の銀行が「この家は書類が足りないので」と慎重になれば、残るのは現金の1組だけ。比べる相手がいなくなると、値段の話はどうしても買う側のペースになりやすくなります。
売主側で長くやってきて、買主のローン審査が書類のところで止まってしまう場面は何度も見てきました。だから先に材料を揃えて、借りられる買主の数をできるだけ減らさない。これがこの記事の芯です。
では、その材料はどこにあるのか。次の章は、まず家の中から探していきましょう。
第3章:家の中で探す紙と、自分の家の「段階」が分かる
▶ 探す紙は3つだけ
探すのは、次の3つです。
1. 確認済証:一番大事。ここに書いてある「確認済証番号」が、市役所で記録を取るときの鍵になります
2. 検査済証:あればもちろん一番ですが、無くても次の手があります
3. 設計図書:平面図・立面図・配置図など、建てたときの図面一式
この中で特に探してほしいのは確認済証です。検査済証は見つからなくても、確認済証の番号さえ分かれば、市役所で記録を調べられるからです。
▶ 置き場所の定番
古い家の書類は、だいたい次のような場所に眠っています。
・建てたときの工務店やハウスメーカーの名前が入った、大きな封筒やファイル
・権利証(登記済証)と一緒に、輪ゴムで束ねられた書類の束
・住宅ローンを組んだ銀行の書類(金銭消費貸借契約書の控えなど)の袋の中
・仏壇の引き出し、たんすの一番下の段、押し入れの天袋
ご両親がローンを組んで建てた家なら、銀行に出した書類の控えと一緒に確認済証の写しが入っていることがよくあります。権利証の束だけ見て「無かった」と決めずに、銀行の袋まで開けてみてください。
奈良に住む妹さんと、年末に実家で一緒に片付ける予定がある。そんな方は、その日に「この3つを探す」と決めておきましょう。ただの片付けが、売却の準備に変わります。
▶ 今日やること:番号をスマホで撮る
確認済証が見つかったら、番号が書いてある面をスマホで撮っておいてください。「第◯◯号」と書かれた番号と、交付された日付が写っていれば十分です。原本はクリアファイルに入れて、権利証と同じ場所に保管しておきましょう。
どちらも見つからなかった方は、家族に「この家を建てたのは何年ごろ?どこの工務店だった?」と聞いて、メモしておいてください。市役所で番号を探すときの手がかりになります。
▶ この紙が、買主の銀行に渡す材料になる
確認済証の番号と日付があれば、「建築確認は受けている」と紙で示せます。市役所の記録があれば、「完了検査を受けたかどうか」も根拠つきで答えられます。買主やその銀行が最初に気にするのは、まさにこの2点です。
手元の紙で段階が決まったら、次は市役所です。次の章で、大阪市役所で「代わりの2枚」を取る段取りを具体的に組んでいきましょう。
第4章:大阪市役所で「代わりの2枚」を取れるようになる
▶ 窓口と受付時間
窓口は、大阪市役所の3階、計画調整局の建築企画課(窓口5)です。最寄りは地下鉄御堂筋線・京阪の淀屋橋駅。
受付は平日の9時00分〜11時45分と、13時00分〜17時00分です。お昼の時間帯は受付していないので、午前中に行くなら11時45分までに着くようにしてください。土日・祝日は開いていません。
▶ 確認済証番号が「鍵」
2枚とも、申請には確認済証番号が必要です。第3章で番号を撮っておいた方は、その写真を見せればスムーズです。
番号が特定できないままでは申請できません。ただ、番号が分からない方も、あきらめなくて大丈夫。市役所には番号を調べる検索システムの端末があり、建物の位置から番号をたどれる地図(プロット地図)もあります。窓口で相談もできます。
その場合は、建物の住所が分かる地図を持っていきましょう。あわせて、建物と土地の登記事項証明書(法務局で取れる、不動産の登記の内容を書いた証明書)も用意しておくと安心です。
おおむね昭和55年(1980年)以前に建った建物は、閉鎖事項証明書(今は使われていない古い登記の記録)が要る場合もあります。築年数の古いご実家なら、法務局で先に取っておくと二度手間を防げます。
▶ 番号が分かれば、オンライン申請もできる
確認済証番号が分かっている場合は、大阪市の行政オンラインシステムから申請して、郵送で受け取ることもできます。費用は交付手数料に加えて送料140円から(重さで変わります)。支払いはクレジットカードやPayPayに対応しています。
これは遠方に住む相続人にとって、かなりありがたい仕組みです。実家は大阪市内でも、ご自身は吹田市、妹さんは奈良市。そんなご家族でも、番号さえ分かれば誰も平日に休みを取らずに済みます。
▶ 古い年代は、記録が無い場合もある
1つ正直にお伝えしておくと、建った年代などによっては、必要な記録が残っていない場合があります。制度や持参資料の一般的な確認は事前にできますが、大阪市では電話・FAX・メールで個別の確認番号や交付記録の照会には回答していません。番号が分からない場合は窓口の検索端末・地図などで調べます。出典:大阪市・建築計画概要書等の閲覧と証明書の交付。
記録が出てこなかったときは、調べた窓口・資料・範囲を残しておきましょう。「未検査と判明した」のか、「交付記録を確認できなかった」のかを分けて伝えます。それ自体が、次に必要な調査と売り方を考える材料になります。
▶ 大阪市以外の物件と、擁壁がある家
ここで書いた窓口や手数料は、大阪市内の物件の話です。吹田市・豊中市など北摂や、阪神間の各市の物件は、それぞれの市の建築指導の窓口で確かめてください。
また、敷地に擁壁(土を支える壁)がある家は、建物とは別に擁壁の検査済証が問題になることがあります。こちらは擁壁のある北摂・阪神間の家は売れない?で詳しく書いています。
2枚が取れた場合は、過去に確認・交付された内容を整理できます。ただし、2枚とも現在の適法性や融資可否を証明するものではありません。次の章では、その段階ごとにどんな売り方を選べばいいかを、1枚の表で見ていきます。
第5章:段階ごとに「仲介で出す/条件を示して出す/買取と並べる」を選べる

「書類が無いなら、買取しかないのかな」。前の日の電話を思い出して、そう感じている方もいるかもしれません。この章では、その一本道から外れて、ご自分の家の段階に合った売り方を選べるようにします。選択肢が並んで見えると、買取の電話にも落ち着いて向き合えます。
▶ 段階×売り方のマトリクス
まず全体を1枚で見てください。
| 仲介を検討 | 追加調査を検討 | 買取額と比較 | |
| 検査済証あり | 現況も確認して説明 | 増改築等の状況による | 希望条件に応じて比較 |
| 交付記録を確認できた | 記録を添えて説明 | 現況と計画による | 希望条件に応じて比較 |
| 交付記録を確認できない | 確認できた範囲を説明 | 必要な調査を建築士に相談 | 費用・期間も含めて比較 |

台帳に検査済証の交付記録が出た家は、その記録を添えて仲介を検討できます。ただし、その後の増改築や現在の状態も確認が必要です。紙が見つかっただけで、融資が通る・通常どおり売れると決まるわけではありません。
悩ましいのは、完了検査や検査済証の交付記録を確認できなかった家です。ここには3つの道があります。
▶ 道①:無いことを示して、仲介で出す
一番シンプルなのは、確認できた資料を添えて仲介で売り出し、興味を持ってくれた買主に書類の状況を早めに伝える方法です。「検査済証は手元に無く、市で調べた範囲では交付記録を確認できていません」など、分かっている範囲を正確に説明します。
届く相手は、現金で買える人、建て替える前提で土地として見る人です。検査済証が無くても扱いのある金融機関で借りる人にも、十分に届きます。1990年代の家はもともと「無い」のが珍しくないので、正直に伝えること自体がマイナスになるとは限りません。
▶ 道②:条件を示して出す(必要な現況調査を検討する)
もう1つの道が、建築士などに既存建物の調査を相談することです。2014年の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は、2025年4月に「既存建築物の現況調査ガイドライン」へ統合されています。出典:国土交通省・既存建築物の現況調査。
現行のガイドラインは、増改築などに当たり、既存建物の状況を調べて建築確認等に活用するためのものです。調査報告書は検査済証の再発行ではなく、融資を保証する書類でもありません。売却のために何を調べるかは、買主の工事計画や金融機関が求める資料と照らして決めます。
費用と時間をかける前に、使い道を確かめましょう。
・調査を検討する場面:建物を使い続ける予定で、増改築の計画や融資審査に向けて追加資料が必要なとき。建築士・金融機関・検査機関等に、必要な調査内容と報告書の扱いを先に確認します
・費用対効果を慎重に見る場面:解体して土地として売る予定など、調査結果を活用する見込みが小さいとき
フラット35を使う場合も、この調査だけで適合証明や融資承認が得られるわけではありません。費用や期間は、家の大きさ・図面の有無・調査範囲で変わります。担当者と用途を整理し、建築士などの見積もりを見てから決めるのがおすすめです。
▶ 道③:買取の金額と並べる
3つ目は、買取業者の提示額を、仲介の見込み額と並べて比べる方法です。
買取業者が「書類が無くても買い取れます」と言えるのは、再販売するまでのリスクや手間を、自社で引き受けるからです。そのぶんは提示額から引かれています。これは悪いことではなく、「早く・確実に・手間なく」を買っている、という仕組みです。
大事なのは、買取の金額だけを見て決めないこと。仲介ならいくらくらいの見込みで、どれくらいの期間がかかりそうか。それを同じ机に並べて、差額と時間を天秤にかけて選んでください。仲介と買取の違いそのものは、大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行で詳しく書いています。
▶ 私が両方を同じ机に並べられる理由
最後に、私の立場を1回だけお話しさせてください。
私は売却専門で、自社で家を買い取ることはしていません。売主様が買取を希望されるときや、買取のほうが売主様のためになるときは、高く買ってくれる買取業者を探します。仲介で売っても買取で売っても、私の側の得は大きく変わらない構造です。だから「書類が無いので買取にしましょう」とどちらかに寄せる理由がなく、両方の数字をそのまま並べてお見せできます。
どの道を選ぶにしても、共通して大事なことが1つあります。それが「買主に早めに、正直に伝えること」。次の章で、何をどこに書き、何をいつ伝えるかを見ていきましょう。
第6章:「検査済証なし」を買主に早めに正直に伝え、契約が流れないようにできる

「聞かれるまで黙っておいたほうが、売りやすいのでは?」。この章では、その考えがなぜ危ないのかと、伝えるときの具体的な伝え方をお話しします。担当者と「どう伝えるか」を決めるときの、たたき台として使ってください。
▶ 隠すと、契約が白紙に戻ることがある
黙っておきたくなる気持ちは分かります。でも、私はおすすめしません。
たとえば、売買契約後の本審査で書類が足りず、買主の融資が承認されないことがあります。そこで確認するのが「ローン特約」です。融資が通らない場合の扱いを決める条項ですが、否決されれば必ず自動的に白紙になるわけではありません。対象の融資、申込義務、承認期限・解除期限、解除の方法など、契約条件によって扱いが変わります。出典:不動産適正取引推進機構・売買契約に関するQ&A。
そうなると、売り出しからやり直しです。引っ越しの段取りも、妹さんとの分け方の話も、全部振り出しに戻ってしまいます。ローン特約の仕組みはローン特約で白紙に?で詳しく書いています。
▶ 広告に書くこと、買主に伝えること
ここは分けて考えています。
私は、検査済証が無いこと自体は、販売図面やSUUMOなどの掲載文には書いていません。一方で、融資や工事計画の判断に関わるため、関心を持った買主には資料を揃えて個別に早く説明します。広告に載せるかどうかと、買主への説明が必要かどうかは分けて考えています。
一方で、建ぺい率・容積率がオーバーしている、建築基準法に違反している点がある、増築部分が未登記になっている、といったことは販売図面や掲載文にも書きます。買主が借りられるかどうかや、買ったあとの建て替え・増改築に直接響くことだからです。未登記の増築については、未登記の増築がある大阪市の戸建てを売るで詳しく書いています。
検査済証が無いことは、興味を持ってくれた買主に、内覧や購入申込みの前後の早い段階で、銀行の事前審査や売買契約より前にお伝えします。告知書(物件状況報告書。売主様が家の状態を買主に伝える書面)にも書いておきます。
▶ 伝え方の例
たとえば、段階Bで完了検査の記録が無かった家なら、買主にはこんなふうにお伝えします。
「建築確認済証あり(番号◯◯、平成◯年◯月◯日)。検査済証は手元にありません。大阪市で調べた範囲では交付記録を確認できていません。取得できた建築計画概要書・台帳記載事項証明書の写しをお渡しします」
ポイントは、「無い」とだけ伝えずに「何があるか」を並べることです。買主やその銀行から見ると、「無いことは分かった。代わりにこれだけの材料がある」と判断の入口に立てます。逆に「検査済証はありません」とだけ伝えると、それ以上調べる前に候補から外されてしまうことがあります。
▶ 知っていて告げなかった事実は、免責されないことがある
中古の戸建てでは、契約不適合責任を免除する特約を付けることがあります。契約不適合責任とは、引き渡した家が契約の内容と違ったときに売主が負う責任のこと。ただし民法572条では、売主が知りながら告げなかった事実などについて、免責特約があっても責任を免れないとされています。具体的な責任は、事実関係と契約内容によります。出典:民法572条。
検査済証が無いと分かった時点で、それは「知っていること」になります。だからこそ、告知書には細かく書いておくのが、売主様自身を守ることにつながります。告知書の書き方そのものは、note の契約の前に売主が書く2枚にまとめています。
▶ 「買主の銀行に渡せる1セット」を用意する
ここまで集めた紙を、1つのセットにしておきましょう。
・確認済証の写し
・台帳記載事項証明書
・建築計画概要書
・手元にある図面
この4点のうち取得できるものを「買主の銀行に渡せる1セット」として、売り出しの日までにそろえておくのが目標です。取れない資料は、調べた範囲と結果を添えます。内覧に来た買主に渡せて、そのまま銀行の事前審査に持っていってもらえる形にしておくと、話が早く進みやすくなります。
そしてこのセットは、私のお客様だけでなく、他の不動産会社を通じて来た買主にも、まったく同じものをお渡しします。私は囲い込み(売却を頼まれた家を自社で抱え込み、他社の買主を通さないこと)をしません。材料を誰にでも同じように出すことが、そのまま「借りられる買主」を増やし、売りやすさにつながるからです。
私が大事にしている言葉に「買は情報、売は信頼」というものがあります。売主様から見えないところで、担当者が何を書き、誰に何を渡しているか。そこが正直であることが、売却では一番の土台だと考えています。販売図面や掲載文は私自身が作っているので、何を広告に書き、何を買主に個別にお伝えするかも、売主様と一緒に決められます。
ここまでで、探す・取る・選ぶ・書くがそろいました。最後の章で、今日から動けることを3段にまとめます。
第7章:まとめ+今日からやるべきこと
▶ まとめの3行
・検査済証が無いのは、1990年代の家なら珍しくない
・「買主がその家でお金を借りられるか」は、家の値段や売りやすさを左右する材料の1つ
・大阪市役所で2枚の取得を進め、確認できた記録と現在の状態を分けて、買主には早めに正直に伝える
▶ 今日できること
まずは書類箱を開けて、確認済証を探してください。銀行の書類の袋まで開けるのがコツです。見つかったら、番号と日付が写るようにスマホで撮っておきましょう。検査済証や図面が一緒に出てきたら、それも撮っておくと後が楽です。
どちらも見つからなかった場合は、家族に「この家を建てたのは何年ごろで、どこの工務店だった?」と聞いてメモしておいてください。それだけで、市役所で番号を探すときの手がかりになります。
▶ 1週間以内にすること
大阪市役所の3階、建築企画課(窓口5)で確認済証番号を調べ、記録を特定できたら台帳記載事項証明書と建築計画概要書の取得を進めましょう。受付は平日の9時00分〜11時45分と13時00分〜17時00分です。番号が分かっている方は、オンライン申請で郵送してもらうこともできます。番号が分からない方は、住所の分かる地図と、建物・土地の登記事項証明書を忘れずに。
そして、査定を頼んだ担当者に、次の2つを聞いてみてください。
1. 「この家の買主は、どの借り方の人が多そうですか?」
2. 「検査済証が無いことを、買主にいつ・どう伝えますか?」
1つ目には、現金・銀行ローン・フラット35のどの買主が来そうかを、家の古さや価格帯から答えてくれるか。2つ目には、「無い」のひと言で済ませず、何を添えて伝えるかまで話してくれるか。この記事の第2章と第6章が、そのまま答え合わせの物差しになります。
この2問に具体的に答えてくれる担当者かどうか。それが、検査済証の無い家を任せられるかどうかの、1つの目安になると私は考えています。
年末が近い時期なら、役所が年末年始の休みに入る前に動いておくと、年明けの売り出しに間に合わせやすくなります。
▶ 相談したくなったら
ご自分で動いてみて、「うちはどの段階か分からない」「取れた紙の読み方が分からない」。そう感じたら、公式LINEから気軽に声をかけてください。
公式LINE(友だち追加):公式LINEで相談する
見つかった書類の写真を送っていただければ、どの段階にあたるかを一緒に見ます。売ると決めていなくても大丈夫です。サイト(https://heroes-property.jp )やメール(info@heroes-property.co.jp)でも受け付けています。
おわりに
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
「検査済証はありますか?」というひと言は、知らない人にとっては、まるで家そのものに×を付けられたように聞こえるかもしれません。でも実際には、多くの家が同じ状況にあって、代わりに示せる紙も、選べる売り方もあります。
ご両親が建てて、家族で暮らしてきた家です。書類が1枚足りないからといって、その価値まで安く見積もられる必要はないと私は思っています。焦らずに、まずは書類箱を開けるところから。あなたのペースで、一歩ずつ進めていってくださいね。













