抵当権が残ったままの大阪市の家を売る|決済日から逆算して消す順番
2026/10/10
相続登記のために取った登記簿に、知らない抵当権が残っていた。相手は聞いたこともない個人名か、もう無い会社で、完済した証拠も見当たらない……。「借金が残っているの?」「この家、売れないの?」「年明けに売り出すつもりだったのに、何か月かかるの?」と、頭の中がぐるぐるしていませんか。
この記事は、相続した実家や、昔ローンを返し終えた家の登記簿に、古い抵当権を見つけた方に向けて書いています。残っている抵当権を「3つの箱」に分けるやり方と、決済日から逆に数えて売り出しの時期を決める順番が分かります。
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。売るかどうか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「乙区に、もう1本残っていますね」と言われたら——借金が残っているのか、売れないのかを先に切り分ける

「乙区に、もう1本残っていますね。昭和52年、個人の方です」。相続登記を頼んだ司法書士さんにそう言われて、事務所の空気がすっと冷えた気がした——。そんな方は、まず「借金が残っているのか」「売れない家なのか」を、落ち着いて切り分けるところから始めましょう。
ここからは、ひとりの方を思い浮かべながら話を進めますね(架空の例です)。吹田市に住む57歳のBさん。今年の2月にお母様を見送り、大阪市旭区にある昭和49年築の実家を相続して、売ることになりました。弟さんとは「Bさんが相続して売り、代金を2人で分ける」と話がまとまっています。弟さんには「年明けに売り出すね」と伝えてあります。
そこへ、冒頭の一言です。帰りの電車で登記事項証明書のコピーを膝に置いたまま、「この人の借金、うちが払わなあかんの?」「売れへん家って言われたらどうしよう」と、考えがまとまらない。その気持ち、すごく自然だと思います。
▶ 完済しても、抵当権は勝手には消えない
まず知っておいてほしいのは、住宅ローンを全部返し終わっても、登記簿の抵当権は自動では消えない、ということです。全国銀行協会もそう案内しています。抵当権とは、お金を貸した人が「返してもらえなかったら、この家を売って回収します」と登記簿に書いておく権利のこと。返し終わったら、持ち主の側から「抹消(まっしょう)」の申請をして、はじめて消えます。
乙区に抵当権が残っていることと、今も借金が残っていることは、別の話なんです。昔の人は返し終わったあとに抹消の申請をしないまま、書類を引き出しにしまってしまうことが珍しくありませんでした。登記簿を見ると「抵当権設定」の行はあるのに、その下に「抹消」の行が無いだけ、というケースが多いです。
団信で完済した家の相続登記と売却の順番は、別の記事でも整理しています。あわせて確かめたい方はこちらをどうぞ → 団信でローンが消えても、すぐには売れない|夫名義の大阪市の家を妻が売るまでの順番
▶ 決済の日に、確実に抹消できる段取りが前提
では、抵当権が残ったままでも売れるのか。ここは正直にお伝えします。抵当権が付いたままの家を、そのまま買う人は基本的にいません。買った家が、他人の借金の担保になったままでは困りますからね。
だから考え方を少し変えてみてください。「売れない家」ではなく、「決済の日(代金を受け取って家を引き渡す日)に、確実に抹消できる段取りを整える家」なんです。売却だけを仕事にしている私から見ると、問題は「売れるかどうか」ではなく「いつまでに消すか」という時間の話。ここが分かると、やることが一気に具体的になります。
ここで「抹消の申請」と「法務局での登記完了」は分けて考えます。必要書類と条件を司法書士が確認し、決済当日に所有権移転とあわせて抹消を申請する取引もあります。古い抵当権は、事前に抹消を終えておく必要があるかを個別に確認します。決済前に必ず登記簿から消えていなければならない、という一律の話ではありません。
じゃあ、Bさんの家の2本の抵当権は、それぞれどのくらい手間がかかるのか。次の章で、自分の抵当権を3つの箱に分けてみましょう。
第2章:自分の抵当権は「3つの箱」のどれか——相手と書類の有無で決める
▶ 用意するもの:登記事項証明書(登記簿)
手元に登記事項証明書があれば、それを使います。無い場合は法務局で取れます。手数料は、窓口で書面で頼むと1通600円です。オンラインで請求すると、郵送で受け取れば520円、窓口で受け取れば490円です(法務省の案内。2025年4月からの額)。大阪市内の物件でも、全国どこの法務局の窓口でも取れますし、オンラインなら家から頼めます。
▶ 2つの質問で、箱を決める
書き写したら、1本ずつ2つの質問に答えます。
・Q1:お金を貸した相手(抵当権者)は、今もいる? 連絡がつく?
・Q2:抹消に使う書類(銀行から届く「解除証書」や委任状などの封筒)は、手元にある?
この答えで、次の3つの箱に分かれます。私はこれを「抵当権の3つの箱」と呼んでいます。
| 箱 | 中身 | よくある例 | 売り出しへの影響 |
| 箱1 | 相手も書類もある | 最近完済して、銀行からの封筒が手元にある | 書類と条件を確認し、決済当日に抹消申請する場合も。売り出しと並行できるか確認 |
| 箱2 | 相手はいるが、書類がない | 完済から年数が経った/封筒をなくした/銀行が合併した/旧住宅金融公庫 | 完済と相手の協力を確認。再交付・追加手続の日数を聞いて、並行できるか判断 |
| 箱3 | 相手が分からない、いない | 個人名で行方が分からない/貸した会社がもう無い | 司法書士の見立て(何か月かかるか)が出るまで、契約の日を決めない |

Bさんの家は、公庫の1本が箱2(相手は今もいるが書類が見当たらない)、個人名の1本が箱3(相手が分からない)。1軒で2つの箱にまたがっています。古い家では、こういうこともあります。箱は「家ごと」ではなく「抵当権1本ごと」に決める、と覚えておいてください。
ちなみに、今まさにローンを返している最中の家は、箱1の仲間です。売った代金でローンを返して、司法書士が条件と書類の受領を確認して、同じ日に抹消を申請する流れがあります。売却代金だけで完済できない場合は、自己資金や債権者との調整が必要で、同じ段取りとは限りません。残りのローンが売却代金で返せるかどうかは、この記事では深入りしません。気になる方はこちらを読んでみてください → 不動産売却で大阪府の住宅ローンが残っている家を安全に手放す実践ガイド
この表の右の列「売り出しへの影響」を並べられるのは、販売の日程を持っている売る側だからこそ。司法書士さんは消し方のプロで、私は売り出しと決済の日程のほうを見ています。両方がそろうと、計画が立つんです。
ご自分の家がどれに当たるか分からないときは、LINEで状況を2〜3行送ってください。たとえば「実家の登記簿に、昭和52年の抵当権が残っていました。相手は父の知り合いの個人名です。年明けに売り出せますか?」くらいで大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
箱が決まったら、次は中身です。まずは手間が読みやすい箱2から見ていきましょう。
第3章:箱2「完済したのに書類がない」——再発行と本人確認の日数を先に数える

実家の片付けをしながら、仏壇の引き出し、たんすの奥、お父様の書類カバン……。「完済」「解除」「抹消」と書かれた封筒を探して、休みの日がまるごと消えてしまった。そんな経験をした方も多いと思います。
見つからなくても、自分を責めなくて大丈夫。何十年も前の封筒が残っていないのは、ごく普通のことです。書類をなくしたからといって、行き止まりでもありません。ここでは、箱2の抵当権に何週間を足せばいいのかを数えていきます。
▶ 抹消の書類は、再発行を頼める
完済すると、銀行などから抹消に使う書類一式が届きます。中身は、解除証書(「この抵当権はもう要りません」という書類)や銀行の委任状です。銀行が抵当権を付けたときの登記済証(登記識別情報)も入っています。
このうち解除証書や委任状は、なくしたり、そのまま使えるか確認が必要になったりしたら、貸した側の金融機関に再発行を頼めます。ただ、時間がかかるのは覚悟しておいてください。三菱UFJ銀行の案内では、再発行に約3〜4週間かかるとされています。ほかの金融機関も、数週間は見ておくのが安心です。
▶ 登記済証(登記識別情報)は再発行されない
登記済証(登記識別情報)のほうは、再発行されません。なくした場合は、法務局から相手に確認の通知を送る方法(事前通知)など、代わりの方法を使います。事前通知の回答や登記の審査が必要になるため、通常より日数がかかります。「必ず1〜2週間で終わる」とは考えず、決済前に完了させる必要があるかも含めて確認してください。司法書士さんに本人確認の書類を作ってもらう方法もあり、こちらは追加の費用がかかります。
ご自身の家の権利証(持ち主として受け取った登記済証)が見つからない、という場合も同じ考え方です。こちらは売るときの所有権の移転で使う書類なので、別の記事で詳しく書いています → 不動産売却の登記手続きと大阪府で確実に進めるための全知識
▶ 銀行の名前が変わっている、公庫だった場合
昭和や平成の初めに借りた銀行は、合併や名前の変更で、今は別の名前になっていることがよくあります。この場合は、今の窓口がどこかを探す一手間が入ります。登記簿に書かれた銀行名と、今の銀行名を並べて、問い合わせ先を確かめるところからです。
Bさんの家のように「住宅金融公庫」と書かれている場合、公庫の業務は今の住宅金融支援機構が引き継いでいます。機構の公式案内では、必要書類の到着確認後、約3週間で抹消関係書類を発送するとされています。これは登記完了までの期間ではありません。登記済証などがない場合は原則として事前通知の手続きが加わり、旧公庫名義のままなら抵当権移転登記が先に必要な場合もあります。相続人用・司法書士用などの申請書を確認し、追加手続きと日数を司法書士さんと一緒に確かめてください。
▶ 費用の目安
抹消の登記にかかる国の税金(登録免許税)は、不動産1個につき1,000円です。土地と建物で2個なら2,000円ですね。これに司法書士さんへの報酬が加わります。報酬は事務所によって幅があるので、見積りをもらって確かめてください。
▶ 箱2は、売り出しと並行しやすい
箱2でも、相手がいるだけで消せると決まるわけではありません。完済などの抹消原因と、相手の協力、必要書類を確認して、はじめて日程が読めます。だから、司法書士さんに「何週間で書類がそろいそうか」の見立てをもらえれば、売り出しと並行して進められることが多いです。
決めておきたいのは、封筒を探す・銀行に電話する、を売り出しの何週間前に置くかです。長年の経験から言うと、こういう「待ち時間のある作業」は、気づいた日にすぐ始めておくのがいちばんの近道です。売り出してから慌てて探すより、売り出す前から余裕をもって準備するほうが、ずっと気持ちが楽ですよ。
Bさんのように年明けの売り出しを考えているなら、書類の再発行に数週間かかるうえ、途中に年末年始の休みも挟みます。11月のうちに、公庫の窓口への問い合わせだけでも済ませておくと安心です。
箱2は、相手と必要条件を確認し、書類と日程を整える箱でした。次は、多くの方がいちばん不安になる箱3、相手がいない古い抵当権です。
第4章:箱3「相手がいない古い抵当権」——売り出す前に司法書士へ聞く3つ

Bさんの2本目、「昭和52年・個人名」の抵当権。お母様から「お父さん、知り合いにお金借りたことあるらしいわ」と聞いた覚えはあります。でも、その方がどこの誰で、今もお元気なのかは分かりません。ネットで調べると「休眠担保権」という難しい言葉と、条文がずらっと並んだページばかり。「供託金が何百万円もかかるらしい」という噂まで目に入って、ここで手が止まってしまう方、本当に多いと思います。
その怖さを、計画に変えていきましょう。消し方の道筋と、売り出す前に司法書士さんへ聞く3つの質問をお伝えします。
▶ 消し方は、相手の状況で分かれる
休眠担保権とは、長いあいだ放っておかれて、相手もはっきりしない古い抵当権のことです。消し方は、相手の状況によって大きく3つに分かれます。
1つ目は、相手(亡くなっていればその相続人)が見つかった場合。事情を話して、一緒に抹消の申請をしてもらいます。
2つ目は、相手が見つからない場合。供託(法律の要件を満たして法務局にお金を預ける手続き)や、裁判所の手続きを使って消す道があります。休眠担保権について供託を使って単独で抹消する方法には、相手の所在が分からないこと、弁済期から20年以上経過していることなどの要件があります。単に古い、連絡がつかないというだけで使えるわけではありません。
3つ目は、貸した相手が会社で、すでに解散している場合。この場合、2023年4月に新しい道ができました(不動産登記法70条の2)。一定の条件を満たせば、供託をしなくても持ち主だけで抹消を申請できます。条件は、会社が解散してから30年、返済の期限から30年が経っていることです。あわせて、法令に沿った調査をしても会社の後始末をする人(清算人)の所在が判明しないこと、なども求められます。
どの道が使えるかの判断は、司法書士さんの仕事です。条文を自分で読み込む必要はありません。「こういう道がある」と知っておくだけで、相談のときの話がずっと早くなります。
▶ 供託の額は「債権額+利息+損害金」
供託の道を使うとき、いくら預けるのか。これは、登記簿に書かれた債権額に、利息と損害金を足して計算するとされています。利率を一律に年6%と置くことはできません。登記の内容、利息・損害金の定め、適用される法令や期間によって確認が必要です。
昭和の登記だと、債権額は数十万円など、今の感覚では小さく見えることもあります。ただ、利息や損害金は年数で積み上がるので、思ったより大きくなることもありえます。ここで自分で電卓をたたくのはおすすめしません。条件によって計算が変わるので、司法書士さんに見込みを出してもらいましょう。
▶ 司法書士に聞く3つの質問
箱3の抵当権があると分かったら、売り出す前に、司法書士さんへ次の3つを聞いてください。
1. 「この抵当権は消せそうですか? どの方法になりそうですか?」
2. 「何か月くらい見ておけばいいですか?」
3. 「費用と、供託が要るならその見込みは、いくらくらいですか?」
消せるか・何か月か・いくらか。この3つの答えが、第6章で作る逆算表にそのまま入ります。逆に言うと、3つが分からないうちに売り出しや契約の日を決めるのは、地図を持たずに出発するようなもの。期間は相手の状況で大きく変わるので、私も「何か月です」とは言えません。だからこそ、見立てを聞いてから日程を決める、という順番を守ってほしいんです。
相続登記を頼んでいる司法書士さんがいれば、まずその事務所に聞くのがいちばん早いです。Bさんも、乙区のことを教えてくれた事務所にそのまま3つの質問を送れば大丈夫。頼める司法書士さんがいない方には、私から司法書士の先生を紹介することもできます。
この3つの質問は、司法書士さんの記事にはあまり出てきません。消し方の記事としては要らないからです。でも、売る側にとっては「いつ売り出せるか」を決める、いちばん大事な材料。ここが、売却の現場から見た使い方です。
抵当権の話はここまで。でも、実は登記簿には、もう1か所見ておいてほしい行があります。
第5章:もう1行、所有者欄の住所と名前——2026年4月の義務化と、同じ日に片づける理由

この章は短めです。抵当権のついでに、持ち主の欄(甲区)の住所と名前も確かめて、同じ司法書士さんにまとめて頼む段取りをお伝えします。
最後に引っ越したのは、いつでしたか。登記簿の住所は、家を買ったときのままかもしれません。
▶ 2026年4月から、住所・名前の変更登記が義務に
2026年4月1日から、住所・名前の変更登記が義務になりました。引っ越しや結婚で住所・名前が変わったら、2年以内に登記簿も変える、というものです。正当な理由なく放っておくと、5万円以下の過料(行政上のペナルティ)の対象になります。4月より前に変わっていた分も対象で、こちらは2028年3月31日までに変えればいいとされています(法務省の案内)。
ただ、ネットでよく見る「すぐ罰金」という話ではありません。法務省は、いきなり過料ではなく、まず法務局から変更するよう知らせる(催告する)運用だと説明しています。慌てなくて大丈夫です。
▶ 売るときは「登記簿の住所」と「今の住所」がつながっている必要がある
売るときは、登記簿に書かれた持ち主の住所と、今の住所がつながっていることを示す必要があることが多いです。何度も引っ越していると、住民票の除票(前の住所が分かる書類)が要ることもあります。戸籍の附票(住所の移り変わりが分かる書類)を求められる場合もあります。
相続で名義を移す場合は、相続登記でBさんの名前と今の住所が新しく入るので、新しい名義人の住所は整理されます。ただし、亡くなった方と登記名義人が同一人物であることを示す住所のつながりなど、別の資料が必要になる場合はあります。意外かもしれませんが、気をつけたいのは自分名義の家を売る方のほうです。昔ローンを完済した家を住み替えで売るなら、抵当権と住所の両方が古いまま、ということもありえます。
▶ 抹消と同じ日に頼むと、手間が1回で済む
抵当権の抹消を司法書士さんに頼むなら、住所・名前の変更も同じタイミングで頼んでしまうのが楽です。書類の準備や事務所とのやり取りをまとめやすくなります。詳しい書類は、登記の手順をまとめた記事に書いています → 不動産売却の登記手続きと大阪府で確実に進めるための全知識
ちなみに大阪市内の登記は、区によって大阪法務局の本局・北出張所・天王寺出張所の3つに担当が分かれています。私の事務所がある淀川区は、北出張所の担当です。物件の区がどこの担当かは、大阪法務局の「管轄区域一覧」で確かめられます。
これで材料はそろいました。いよいよ、決済日から逆に数えて、売り出しの時期を決めていきましょう。
第6章:決済日から逆算する——売り出し・契約・決済と抹消を1枚に並べる

いよいよ、この記事の本題です。「決済日からの逆算表」を作って、箱ごとに「売り出してよい週」「契約してよい週」を決めます。「消えるまで何もできない」でも「とりあえず売り出す」でもない、ちょうどいい順番を自分で決められるようになります。
▶ 決済には、確実に登記を進められる書類と条件が要る
まず、動かせない事実を1つ。相続した家は、遺産分割協議書(誰が相続するかを決めた書類)ができていれば、相続登記の前でも売り出せます。媒介契約(不動産会社に売却を頼む契約)→売り出し→売買契約まで進められるんです。ただし決済には、相続人から買主へ所有権を移し、抵当権を外せる状態が必要です。相続登記を先に整えるのか、抹消を事前に完了するのか、決済当日に抹消申請できるのかは、司法書士・金融機関と確認します。法務局での登記完了と決済当日の申請を混同しないことが大切です。
ゴールの日は「決済日」。そこから逆に数えればいいわけです。書類収集から必要な登記手続きまで、数週間から数か月、事情によってはそれ以上かかることがあります。この幅を、箱ごとに読んでいきます。
▶ 箱ごとの考え方
箱1・箱2は、司法書士さんの見立てがあれば、売り出しと並行して進められる場合が多いです。箱2なら、書類の再発行の数週間に少し余裕を足して、決済日までに間に合うように並べます。
箱3は、司法書士さんの見立て(何か月か)が出る前に、契約の日を決めないでください。見立てが出たら、次の2つから選びます。
・決済日にたっぷり余裕を持たせた契約にして、抹消と並行して売り出す
・抹消を終えてから売り出す
どちらがいいかは、見立ての確かさと、売主様の事情で変わります。いつまでに代金が必要か、空き家の維持がどれくらい負担か、といった事情です。
私の場合、抹消が決済に間に合わないおそれがあるときは、まだ売り出しをかけないか、決済日を確定させる前に司法書士さんに日数を確認してから決済日を決めます。それでも思わぬ事情で間に合わなくなったときは、買主様にお願いをして、引渡しを延ばす覚書を交わしたこともあります。ただ、これは買主様のご理解があってできたこと。最初から当てにしてよい方法ではありません。
Bさんなら、「来年の夏までに引渡しを終えて、弟に代金を渡したい」がゴールです。公庫の1本(箱2)は、再交付の約3週間に、事前通知や移転登記が必要かを確認して日数を足します。決めどころは、個人名の1本(箱3)。見立てが出るまでは契約の日を空けておき、出た日数を夏から左へ引いて、どちらの道なら間に合うかを比べます。逆算表の上では、2本のうち長くかかるほうが、売り出しの月を決めることになります。
もう1つ、日程で忘れやすいのが年末年始です。法務局は12月29日から1月3日まで、銀行も大みそかから三が日はお休み。年明けに売り出したいなら、10〜12月の作業日は思ったより少ないと考えておいてください。遠方にお住まいで、決済の日に大阪へ来るのが大変という方は、こちらの記事も参考になると思います → 遠方から大阪市の実家を売る|大阪に来るのは何回?来る日と任せる日
▶ 私の場合:登記簿は2回取り、古い抵当権は書類しだいで順番を変える
私は、媒介契約のときと売買契約の前の2回、その時点で最新の登記簿を取って、抵当権の欄と持ち主の欄を確かめています。
古い抵当権が残っていた家も、実際にありました。抹消の書類が手元にあった家は、抹消の手続きと販売を同時に進めました。書類がなく時間がかかりそうだった家は、先に抹消の手続きを進めて、めどが立ってから販売を始めました。書類があるかないかで、売り出す時期が変わる。まさにこの記事の「箱」の分け方どおりです。
▶ 抵当権のことは、買主に早めに、同じ資料で伝える
抵当権が残っていることは、隠さずに買主様へ早めに伝えます。「今こういう抵当権が残っていて、司法書士さんの見立てでは◯か月で消える見込みです」と伝えるんです。見立ての書面を添えて説明するのが、いちばん誠実だと私は考えています。
この説明と資料は、他の不動産会社を通じて来た買主様にも、まったく同じものをお渡しします。私は囲い込み(売却を頼まれた物件を自社で抱え込み、他社からの購入希望を通さないこと)をしません。抵当権のような「説明が要る事情」がある家ほど、誰に対しても同じ情報を出すことが、売主様を守ることにつながると考えています。
▶ 「権利関係が難しいので買取で」と言われたら
古い抵当権があると分かったとたん、「権利関係が難しいので、買取にしましょう」と言われることがあります。買取とは、不動産会社が自分で家を買い取ることです。早く現金になる反面、一般の買主様に広く売る仲介より、価格は低くなりやすいのが正直なところ。
だから、言われたままに決めないでください。次の2つを並べて比べるのがおすすめです。
・抵当権を片づけて、仲介で広く売り出す道(時間はかかるが、価格の上を狙いやすい)
・急ぐ事情があるなら、できるだけ高く買ってくれる買取業者を探す道
私は自社で買い取ることはしないので、どちらかに寄せる理由がありません。両方を並べてお見せします。売主様が買取を望まれる場合や、買取のほうが売主様のためになる場合は、高く買ってくれる業者を探します。提示額を受け取ったときの比べ方は、こちらの記事に書いています → 大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行
ここまでで、箱を決めて、日数を聞いて、逆算表に並べるところまで来ました。最後に、今日から動ける形にまとめましょう。
第7章:まとめ+次のアクション——今日・1週間以内・相談したくなったら
▶ この記事のまとめ
この記事でお渡ししたのは、「抵当権の3つの箱」「司法書士に聞く3つの質問」「決済日からの逆算表」の3つの道具です。
・完済しても、抵当権は勝手には消えない。残っているのは「借金」ではなく「抹消の手続き」であることが多い
・決済当日に抹消申請する場合もある。事前完了が必要か、当日申請できるかを司法書士に確認し、必要な準備から逆算する
・乙区の1本ごとに、「相手は今もいる?」「書類は手元にある?」の2つで3つの箱に分ける
・箱1は書類と条件を確認して決済当日に申請する場合も、箱2は完済・協力と再交付・追加手続の日数を確認、箱3は司法書士の見立てが出るまで契約の日を決めない
・司法書士さんには「消せるか・何か月か・いくらか」の3つを聞き、その答えを決済日からの逆算表に入れる
▶ 今日できること
まず、手元の登記事項証明書の乙区を開いてください。抵当権1本ごとに「受付年月日」「抵当権者の名前」「債権額」の3つを書き写します。それができたら、2つの質問で箱を決めます。
あわせて、「完済」「解除」「抹消」と書かれた封筒やはがきを、実家と自宅のどこから探すかを家族で決めておきましょう。Bさんなら、弟さんにLINEで「お父さんの書類、どこかで見たことない?」と一言送るだけでも十分な一歩です。
▶ 1週間以内にすること
司法書士さんに、第4章の3つの質問を送ってください。相続登記を頼んでいるなら、その事務所へ。頼める先がなければ、私から紹介することもできます。次に、売り出したい月(または引き渡したい月)を決めて、逆算表に週を書き込みます。住所が何度か変わっている方は、住民票の除票や戸籍の附票が要るかどうかも聞いておきましょう。同じタイミングで聞けば、二度手間になりません。
きょうだいで代金を分ける予定の方は、分け方の話し合いに必要な材料も、この1週間で一緒にそろえておくと安心です → きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料
▶ 相談したくなったら
送っていただきたいのは、乙区の写真(または、受付年月日と抵当権者の名前のメモ)と、物件の住所だけです。それだけで、「どの箱に当たりそうか」「売り出しをいつにするか」の相談から受けます。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。→ 公式LINE(友だち追加)公式LINEで相談する
お電話なら 06-6842-7377(10:00〜19:00・水曜定休)でも受け付けています。
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
登記簿に知らない名前を見つけたときの、あの胸のざわつき。誰にも言えないまま、弟さんや家族に話した予定だけが先に進んでいく感じは、本当にしんどいものだと思います。
でも、ここまで読んだあなたは、もう「何が分からないのか」が分かっています。箱を決めて、3つを聞いて、決済日から数える。やることは、それだけです。
古い抵当権は、親御さんが一生懸命に家を建て、返し終えたあとに登記だけが残っている場合もあります。まずは、その事実を確かめるところからです。その跡をきちんと片づけて、気持ちよく次の持ち主に渡せるように。迷ったときは、いつでも声をかけてください。










