家を売った後に雨漏り|大阪市で責任が残る線と売る前に決める順番
2026/10/09
告知書の「雨漏り」の欄に並ぶ、「有・無・不明」の3つの丸。親が屋根を直したと聞いた気はするけれど、いつ・どこを・誰がかは分からない。担当者の「免責で売るから大丈夫ですよ」も、どこまでが大丈夫なのかが見えない……。
この記事では、家を売った後に雨漏りの責任が残る「2つの線」が分かります。あわせて、自分の家の雨漏りを「5つの状態」に仕分けるやり方と、売り出す前に決める順番もお伝えします。
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。売るかどうか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:売った後に「雨漏りしています」と言われたら何が起きるか——請求の4つの形を知る

家を売った後に雨漏りが見つかったら、買主様から何を求められる可能性があるのか。まずは4つの形に分けて見てみます。怖さの正体が分かると、手の打ちようも見えてきます。
春に実家を引き渡して2か月。梅雨入りした6月の夕方、知らない番号からスマホが鳴ります。「東淀川区の家を買った者です。2階の和室の天井から、水が落ちてきていて……」。
売ったら終わり、と思っていた方ほど、ここで頭が真っ白になりますよね。売却代金はもう自宅のローンの繰上げに回した。いったい何を言われるんだろう。いちばん怖いのは、たぶん「何を求められているのか分からない」ことなんです。
▶ 2020年4月から「契約不適合責任」に変わった
2020年4月に民法が改正されて、昔の「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という言葉は「契約不適合責任」に変わりました。契約不適合責任とは、売った家が、契約で約束した中身と合っていなかったときに売主が負う責任のことです。
この改正で、買主様が売主に求められることが、はっきり4つの形に整理されました。

1つ目は「直してください」。雨漏りの修理をしてほしい、という求めです。2つ目は「そのぶん安くしてください」。直してもらえないなら、代金を一部返してほしいという形です。3つ目は「かかったお金を払ってください」。修理費や、濡れた家財の損害などです。4つ目は「契約をなかったことにしてください」。雨漏りが重くて住めない、というような場面で出てくる形です。
4つを自由に選べるわけではなく、それぞれ条件があります。代金減額は原則として相当の期間を定めて修理を求めても履行されない場合など、損害賠償は売主に責任を帰せる事情がある場合などです。解除にも催告などの条件があり、軽微な不適合では原則できません。引渡し後に新たに生じた雨漏りまで、自動的に売主の責任になるわけでもありません。
条文の番号は覚えなくてかまいません。「直して/安くして/払って/なかったことに」の4つだけ、頭の片隅に置いておいてください。
▶ 通知は原則「知ってから1年」。請求の条件・時効・特約は別に見る
民法566条では、種類・品質の契約不適合について、原則として買主様が知った時から1年以内に売主へ通知する必要があります。「引渡しから1年」ではありません。これは通知の期限で、通知すれば必ず請求が認められるわけではなく、請求ごとの条件や消滅時効も別に確認します。売主が引渡し時に不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合は、この1年の通知制限の例外です。
ただ、これはあくまで民法の基本形です。個人の売主が家を売るときは、契約書の特約で、この責任を負わない形(免責)にすることがよくあります。「引渡しから◯か月」と期間を区切る形もあります。売った後の責任は、契約書の中身と、免責を制限する法律、実際に何を知り・伝えていたかを合わせて見ていきます。
20年、売主様の側でこの仕事をしてきて感じることがあります。売った後の連絡で売主様がいちばん困るのは、自分の契約書に何が書いてあるかを知らないまま、話が進んでしまうことです。逆に言えば、売る前に契約書の1行を見ておくだけで、怖さはずいぶん小さくなります。
じゃあ、「免責」にしておけば、この4つは全部なくなるのか。次の章で、免責でも責任が残る線を一緒に見ていきましょう。
第2章:免責で売っても責任が残る2つの線——「知っていて書かなかった」と「書いたことと違った」

免責の特約をつけて売っても、売った後に責任が残る場面があります。この記事では、売主様が特に気をつけたい代表的な「2本の線」に絞って説明します。
弟さんから「免責で売るって言うてたやん。それやったら何も心配いらんやろ」とLINEが来る。そう言われると、そうなのかなと思いつつ、どこかで引っかかる。その引っかかりは、正しい感覚だと私は思います。
▶ 個人の売主は「免責」で売れる。私も基本は免責です
個人の売主が家を売るとき、「売主は契約不適合責任を負わない」という特約(免責特約)をつけることができ、原則として有効です。築年数がたった家ほど、どこかに傷みがあるのは当たり前。だから売主様を守るために、この特約をつけて売ることはよくあります。
私が売るときも、基本は「売主様の契約不適合責任と、設備の保証は免責」という形で売っています。具体的にどんな文言で契約書に書くかは、物件ごとに決めています。
ここまで聞くと、弟さんの言うとおりに見えますよね。でも、免責があっても責任を問われる場面があります。ここでは、代表的な2つを見ていきます。
▶ 線1:知っていたのに、書かなかった
1本目の線は、民法572条にあります。ざっくり言うと、こうです。免責の特約をつけていても、売主が知っていて買主に告げなかった事実については、責任を免れられない。
たとえば、去年の大雨で2階の押入れの天井から水が染みてきたのを知っていた。でも「書いたら値下げされそう」と思って、告知書に「無」と書いた。この場合、免責の特約があっても、売った後に責任を問われる可能性が残ります。
▶ 線2:書いたことが、事実と違った
2本目の線は、告知書に事実と違うことを書いたときです。告知書は物件状況報告書とも呼ばれる、売主が家の状態を買主に伝えるための書類です。たとえば「雨漏りは直した」と書いたのに、実は直していなかった。こうした場合は、故意・過失のある誤った説明によって買主様に損害が生じるなどの事情があれば、契約不適合責任とは別に、説明義務違反の責任を問われることがあります。記載が事実と違うだけで、一律に責任が確定するという意味ではありません。
参考:三井住友トラスト不動産「契約不適合責任の免責と説明義務」(弁護士解説)

2本の線に当たらないのは、「本当に知らなかった不具合」で、しかも「書いたことと事実が合っている」場合です。ここは免責の範囲に入りやすいと考えてください。ただし、免責の効力・範囲は、契約書の文言と法律、個別の事情を合わせて判断します。「知らなかった」だけで必ず免責になるという意味ではありません。
▶ 「現状有姿」は「免責」ではない
もう1つ、よく混ざる言葉があります。「現状有姿(げんじょうゆうし)」、今の状態のままで引き渡します、という言葉です。これは免責とは別物なんです。
東京地裁の令和7年8月18日の判決をもとにした事例を紹介します。売主は不動産業者で、建物は昭和52年に建った木造2階建て。物件状況等報告書には「雨漏りは発見していない」と書かれていました。ところが、引渡しから数週間で屋根から雨漏りが起きます。売主は「現状有姿で引き渡した」と主張しましたが、雨漏りは住まいとして必要な性能を欠くとして、契約不適合と判断されています。これは同社掲載の弁護士解説による紹介で、個別の事実関係を前提にした判断です。
参考:三井住友トラスト不動産「中古の居住用建物の雨漏りと契約不適合責任」
ひとつ断っておくと、これは業者が売主の事例です。宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない買主に売る場合は、宅地建物取引業法40条で、買主に不利な免責などの特約が制限されています。個人の売主の免責特約とは、前提が違う話です。
それでも、個人の売主が持ち帰れることが1つあります。「現状有姿」と書いてあるだけでは、免責にはならないということです。契約書の案に「現状有姿」の言葉しかなく、「契約不適合責任を負わない」という一文が見当たらない。そんなときは、担当者に「免責の条項はどこですか」と聞いてみてください。
免責で売っている私が、なぜわざわざ「免責が効かない線」を書くのか。免責は「知らないことまで責任を負わなくていい」ための約束です。「知っていることを伏せていい」ための道具ではありません。だから私は、告知書と付帯設備表を、売主様と一緒にできるだけ細かく見ています。付帯設備表は、エアコンや給湯器など、残していく設備の状態を書く表です。
では、線1の「知っていた」とは、どこからを指すのか。相続した家だと、そこがいちばん分かりにくいところです。次の章で、あなたの家の雨漏りを5つに仕分けてみましょう。
第3章:あなたの家の雨漏りはどれか——「雨漏り5つの状態」で仕分ける

ここからは、あなたの家の番です。雨漏りが「5つの状態」のどれに当たるかが分かると、告知書の向きと、売る前にやることが自然に決まってきます。
食卓に広げた告知書。「雨漏り」の欄で、ペンが止まったままですよね。母が「台風のあと屋根屋さんに来てもらった」と言っていた。2階の和室の天井には薄いシミがある。でも、それがいつのものかは分からない。ここで「有」とも「無」とも決められないのは、とても自然なことです。
まずは、下の表で全体を見てください。
| 状態 | 告知書の向き | 売った後に責任が残りやすい場面 | 売る前にすること |
| ①今も漏れている | 有(今も漏れている) | 書かなかったとき | 直すか、書いて価格に織り込むかを決める |
| ②直した・記録がある | 有(修繕済み。いつ・どこ・誰が) | 修理範囲・再発状況の説明が事実と違うときなど | 見積書・領収書・写真を集める |
| ③直したと聞いた・記録がない | 聞いた話として書く(不明+聞いた内容) | 「無」と書いたとき | 家族・近所に聞く |
| ④跡はあるが、いつのものか分からない | 跡があることを書く | 跡を知っていて「無」にしたとき | 現地を一緒に見る |
| ⑤心当たりがない | 質問の意味と確認範囲を明記。判断できなければ不明 | 見ればすぐ分かる跡を見ていなかったとき | 天井・押入れ・小屋裏を一度見る |
▶ ①今も漏れている
雨が降ると、今も天井や窓まわりから水が入ってくる状態です。ここは迷わず「有」です。書かなければ、第2章の線1にそのまま当たります。
売る前に決めるのは、「直してから売るか」「直さずに、雨漏りがあることを書いて価格に織り込むか」の2つのどちらか。どちらがいいかは、修理の見積もりと、その家を買いそうな方(自分で直して住みたい方か、すぐ住みたい方か)で変わります。見積もりを1枚取ってから考えるのがおすすめです。
▶ ②直した・記録がある
過去に漏れて、修理した。見積書や領収書、写真が残っている状態です。告知書には「修繕済み」として、いつ・どこを・どの業者が直したかを書きます。
同じ場所からの再発でも、別の場所からの雨漏りでも、場所だけでは責任は決まりません。引渡し時の状態、伝えた修理範囲・再発状況、契約の約束を確認します。だからこそ、どこを直したかが紙で分かることが、売主様を守る材料になります。
▶ ③直したと聞いた・記録がない
相続した実家で、いちばん多いのがこれかもしれません。「親が直したと言っていた」「近所の人がそう話していた」。でも紙はない。この場合、「無」にはしないでください。聞いた話は、聞いた話として書けます。「平成30年ごろ、台風のあとに屋根を修理したと母から聞いている。業者・範囲は不明」といった形です。
▶ ④跡はあるが、いつのものか分からない
天井にシミがある。でも、今も漏れているのか、昔のものなのか分からない。この状態では、「シミがある」という見えている事実を書くのが基本の向きです。シミを知っていて「無」にすると、線1に近づいてしまいます。
▶ ⑤心当たりがない
家族の誰に聞いても、雨漏りの話は出てこない。この場合も、告知書が「現在の雨漏り」「過去の履歴」「売主の認識」のどれを尋ねているか、担当者と確認してください。確認した範囲で雨漏りも履歴も把握していないなら、その範囲を明記します。住んでおらず判断できない部分は「不明」にし、心当たりがないだけで一律に「無」とはしません。天井や押入れの上、2階の窓まわりを一度も見ずに「無」と書く。あとで、見ればすぐ分かる跡が見つかる。この場面だけは避けたいところです。
▶ たとえば東淀川区の実家なら、③と④
たとえば、東淀川区の築40年を超える木造2階建てを相続した方。母から「台風のあと屋根屋さんを呼んだ」と聞いているけれど、業者も費用も分からない。2階の和室にはシミがある。この家は、屋根の修理については③、和室のシミについては④に当たります。
相続した家の売主様が「知らない」のは、本当に知らないことが多いんです。だから、告知書の欄の前で守る約束は2つだけにしましょう。名づけるなら「仕分けの2つの約束」です。「本当に知らないことを『無』にしない」「知っているのに、面倒だからと『不明』にしない」。この2つは、第2章の線1・線2に近づかないための約束でもあります。守っていれば、告知書はずいぶん書きやすくなります。
今夜できる作業は1つだけ。告知書の雨漏りの欄の横に、鉛筆で①〜⑤の番号を書いてみてください。番号が決まれば、次にやることも決まります。告知書の具体的な書き方(記入例や「不明」の使い方)は、noteで詳しく書いています → 契約の前に売主が書く2枚。告知書と付帯設備表は「不明」と書いていい
雨漏りとは別に、告知の線引きで迷いやすい場面については、こちらの記事も参考になると思います。
・親が自宅で亡くなった大阪市の実家は事故物件?告知の線引きと確かめる3つ → 親が自宅で亡くなった大阪市の実家は事故物件?告知の線引きと確かめる3つ
・「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、売り出し前に見る1枚と告知書の1行 → 「浸水想定区域です」と言われた大阪市の家、値下げ材料になる?売り出し前に見る1枚と告知書の1行
私は写真撮影と内覧の立ち会いを自分でしているので、売り出す前に、天井や押入れの上を売主様と一緒に見ることもできます。③や④の「分からない」を、一緒に少しずつ減らしていけたらと思っています。
ご自分の家がどれに当たるか分からないときは、LINEで状況を2〜3行送ってください。たとえば「父が台風のあとに屋根を直したと聞いたんですが、いつ・どこの業者かは分かりません」くらいで大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
番号が決まったら、次は大阪の家ならではの場面です。原因が自分の家だけとは限らない雨漏り、意外と多いんですよ。
第4章:大阪の家で多い3つの場面——台風で直した屋根、長屋の隣との境、マンションの上の階
▶ 場面1:台風のあとに直した屋根
2018年の台風21号では、大阪でも屋根瓦が飛んだり、ずれたりした家がたくさんありました。そのあとに屋根を直した家は、大阪市内にも少なくないと私は見ています。
火災保険を使って直した場合は、どこかに紙が残っていることがあります。保険会社とのやりとりの書類、屋根業者の見積書、修理前後の写真です。探す場所は次のようなところです。
・火災保険の証券や、保険会社からの封筒が入っている箱・引き出し
・通帳の入金記録(保険金が振り込まれた日と金額が分かれば、修理の時期が絞れる)
・屋根業者の領収書(家計簿や、電話台の横のファイルに挟まっていることも)
見つかった紙は、告知書の「修繕済み」の裏付けになります。私の場合、修理前後の写真や、どこをどう直したかが分かるものがあれば、告知書に添えています。見積書のような金額の書類までは付けません。
自宅の屋根を一度直した方からは、「直したことを書いたら、かえって安くならない?」と聞かれることがあります。正直に言うと、書いたからといって高く売れるわけではありません。ただ、いつ・どこを・どう直したかを紙と一緒に書いておいたほうが、売った後に揉めにくくなる、と私は考えています。買主様にとっても、「何も書いていない家」より「直した記録がある家」のほうが、判断しやすいからです。
▶ 場面2:長屋・連棟の、隣との境
大阪市内には、長屋や連棟(隣の家と壁や屋根がつながっている建物)がまだたくさんあります。こうした家では、隣と接する部分から水が入ってきたとき、原因が自分の家なのか隣の家なのかを切り分けにくいことがあります。
「隣のせいかもしれへんなんて書いたら、角が立つんちゃうか」。そう思って手が止まるのも、無理はありません。
分からないことを、無理に「自分の家の屋根が原因」とも「隣のせい」とも書く必要はありません。「隣と接する部分の天井にシミあり。原因は特定できていない」と、見えている事実と分からないことを分けて書く向きで考えてみてください。淀川区に事務所を構えて、大阪市内の古い戸建てや長屋を見てきました。隣との境の雨漏りは、「分かっていること」と「分からないこと」を分けて伝えるのが、いちばん後に揉めにくいと感じています。
▶ 場面3:マンションの上の階・共用部分からの漏水
マンションの場合、天井から落ちてくる水は「雨漏り」とは限りません。上の階からの水漏れや、外壁・屋上など共用部分(住んでいる人全員で持っている部分)からの漏水のこともあります。自分の部屋(専有部分)の問題か、共用部分の問題かで、話の進み方が変わります。
まずは管理会社に「この部屋で過去に漏水の記録があるか」を聞いてみてください。売主様が覚えていなくても、管理会社に記録が残っていることがあります。大規模修繕で屋上や外壁を直す予定があるかも、あわせて聞いておくと安心です。
・修繕積立金の値上げが決まった大阪市のマンション|大規模修繕の前に売るか後に売るか、先に取り寄せる3枚 → 修繕積立金の値上げが決まった大阪市のマンション|大規模修繕の前に売るか後に売るか、先に取り寄せる3枚
3つの場面に共通するのは、「紙を探す」「聞く」「見る」の3つです。では、これを売り出す前のどの順番でやればいいのか。次の章で並べていきます。
第5章:売り出す前に決める順番——紙を集める、家族に聞く、契約書の1行を見る

売り出すまでの数週間でやることを、順番つきで並べます。この順番で進めれば、手が止まっていた雨漏りの欄が「埋められる欄」に変わっていきます。
年明けに売り出したい。でも、平日は仕事、週末は実家の窓を開けに行くだけで終わってしまう。だからこそ、やることは「売り出す前の4段」に絞りました。上から順に進めてください。
▶ 1段目:紙を集める
最初は紙です。集めたいのは、修理の見積書・領収書、火災保険の書類、修理前後の写真、そして新築のときの図面。図面があると、屋根の形や、水が入りやすい場所の見当がつきやすくなります。
探しても見つからなかったら、それでかまいません。「探したけれど、なかった」とメモに残しておいてください。探した事実そのものが、「知っていて隠した」とは違うことを示す材料の一つになる、と私は考えています。
▶ 2段目:家族に聞く
次に、きょうだいや親戚、ご近所に「いつ・どこを・誰が直したか」を聞きます。LINEなら、こんな一言で十分です。「実家の屋根、母が台風のあと直したって言ってたの覚えてる?いつごろか、どこの業者か分かる?」
聞いた話は、聞いた話として告知書に書けます。誰から聞いたかもメモしておくと、後で見返したときに安心です。きょうだいで相続した家なら、この確認を「全員で売る準備」の一つにしてしまうと、話もしやすくなります。
・きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料 → きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料
▶ 3段目:現地で一緒に見る
紙と話がそろったら、現地を見ます。見る場所は、天井のシミ、押入れの天井、2階の窓まわり、そして点検口があれば、安全に見られる範囲の小屋裏(屋根と天井の間の空間)。屋根に上ったり、無理に小屋裏へ入ったりせず、詳しい調査は専門家に頼みます。雨が降った翌日に見ると、湿り気やシミの広がりに気づきやすいと思います。
スマホで写真を撮っておくのもおすすめです。売り出す前の状態が残るので、売った後に「いつからあったか」で話がこじれにくくなります。私が売却をお手伝いするときは、写真撮影のついでに、売主様と一緒にこうした場所を見ています。
▶ 4段目:契約書の案で「1行」を見る
最後に、担当者から契約書の案をもらいます。見るのは、責任の扱いが書かれた1行。条項でいうと2か所です。1つは「契約不適合責任」の条項。免責なのか、「引渡しから◯か月」のように期間つきなのか。もう1つは「付帯設備」の条項。設備の不具合は別の扱いになっていることが多いので、ここも免責か期間つきかを確かめます。
あわせて、契約から引渡しまでの間に雨漏りが見つかったときにどうするか、が書かれているかも見ておいてください。書かれていなければ、担当者に「その場合はどうなりますか」と聞いておくだけで十分です。
契約後から引渡しまでの間に、告知書(物件状況報告書)や付帯設備表に書いていない不具合が見つかったときは、私の場合、基本は売主様に直していただきます。ただ、引渡しのあとに買主様がリフォームする予定の場所で、そのままでも問題がなければ、直さずにそのままにすることもあります。どうするかは、契約内容を確認し、問題が出た時点で売主様・買主様にご相談してから決め、合意内容を記録します。これは当社での調整の方針で、記載のない不具合をすべて法律上必ず売主様が直す、という意味ではありません。
築5年前後など築年数の浅い家では、売る前にインスペクション(建物状況調査。専門家が建物の状態を調べること)を入れて、保証を付けて売るケースもあります。どの家に合うかは、築年数と建物の状態を見てからの判断になります。
業者に買い取ってもらう場合は、責任の扱いがまた変わってきます。買取と仲介の比べ方は、こちらで書いています。
・大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行 → 大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行
▶ 仕上げた2枚は、誰にでも同じものを
こうして仕上げた告知書と付帯設備表は、他の不動産会社を通じて来た買主様にも、まったく同じものをお渡しします。私は囲い込みをしません。どこから来た買主様にも、同じ紙で同じ説明をしておく。それが、売った後に「聞いていない」を出さないいちばんの近道だと考えています。
私の売り方を1文で言うと、「免責で売る。だからこそ、知っていることは全部書いてもらう」です。私は売却だけを扱っていて、ご依頼をくださるのはいつも売主様です。告知を薄くして契約を急いでも、売った後に困るのは売主様。だから、そうする理由が私にはありません。
ここまでやっても、中古の家である以上、売った後に何かが起きる可能性はゼロにはなりません。だから最後に、「それでも連絡が来たら」を先に知っておきましょう。
第6章:それでも売った後に連絡が来たら——最初に確かめる3つの紙と、その場で言わないこと

売った後に買主様から雨漏りの連絡が来たら、最初に何を見るか。そして、その場で言わないほうがいいこと。先に知っておくだけで、売る前の不安も少し軽くなるはずです。
第1章の場面に戻りましょう。6月の夕方、知らない番号からの電話。「天井から水が……」。ここで慌てて何かを約束してしまう前に、深呼吸をひとつ。見るのは「売った後に見る3つの紙」だけです。
▶ 1枚目:契約書の免責の文言
免責なのか、期間つきなのか。設備は別の扱いになっていないか。第5章の4段目で見た1行を、もう一度確かめます。
▶ 2枚目:告知書と付帯設備表
雨漏りの欄に何を書いたか。ここで、第3章で書いた番号が効いてきます。「③として、母から聞いた修理の話を書いた」「④として、和室のシミを書いた」。そう分かっていれば、線1・線2に当たるかどうかを落ち着いて考えられます。
▶ 3枚目:通知が来た日付
引渡した日、買主様が不具合を知った日、売主に通知が来た日を分けて記録します。契約書で期間を区切っているなら、起算日と、期間内に通知・請求のどちらが必要かも確認します。期間外に見えても、法律上の例外や別の責任が問題になることがあるため、それだけで断りません。日付は、カレンダーや着信履歴、メールを残しておきます。
▶ その場で言わないこと
電話口では、「免責なので関係ありません」とも、「分かりました、払います」とも言わないでください。免責の契約でも、線1・線2に当たるかどうかは、3つの紙を見るまで分かりません。どちらの言葉も、後から取り消しにくいものです。
「状況は分かりました。担当者に確認して、折り返します」と伝え、発見日時・場所・写真・修理前の状況を残してもらいましょう。漏電などの危険や被害の拡大があるときは安全確保・応急措置を優先し、責任や費用の分担は資料を確認して話し合います。そのうえで、仲介した担当者にすぐ連絡しましょう。私が仲介した家なら、話が解決するまで私も間に入ります。
電話を受けたときの具体的な受け答えは、noteで詳しく書いています → 「売ったのに納税通知書が来た」——引渡しの後に売主がする・しない・任せる
もし話し合いがこじれて、内容証明が届くような段階になったら、そこからは弁護士さんに相談してください。内容証明は、送った内容を郵便局が証明してくれる手紙です。
お金のことも、少しだけ。売却代金を受け取ったあと、引渡しからしばらくの間は、代金の一部に手を付けずに置いておく方もいます。どのくらい置くかはご家庭の事情次第ですが、長年この仕事をしてきて、そうしておくと気持ちの余裕が違うと感じています。
ここまでで、売る前と売った後の両方がそろいました。最後に、今日から何をすればいいかを整理しますね。
第7章:まとめ+次のアクション——雨漏りの線は、売る前に引ける

ここまでの話を短く振り返って、記事を閉じたあとにすぐ動けることを3段で並べます。
この記事でお渡しした道具は4つです。
・責任が残る2つの線(第2章):知っていたのに書かなかった/書いたことが事実と違った
・雨漏り5つの状態(第3章):①今も漏れている/②直した・記録がある/③直したと聞いた・記録がない/④跡はあるが時期不明/⑤心当たりがない
・売り出す前の4段(第5章):紙を集める→家族に聞く→現地で一緒に見る→契約書の案を見る
・売った後に見る3つの紙(第6章):契約書の免責の文言/告知書と付帯設備表/引渡し・発見・通知の日付
売った後に雨漏りの責任が残るのは、2つの線が中心でした。その線は、売る前に自分で引けるんです。
▶ 今日できること
・告知書(まだ手元になければメモ用紙)の雨漏りの欄の横に、①〜⑤の番号を書く
・実家の天井のシミや、雨の日のことで思い出せることを、覚えている範囲でスマホにメモする
▶ 1週間以内にすること
・きょうだいや親戚に「いつ・どこを・誰が直したか」をLINEで聞く
・火災保険の書類や、屋根業者の領収書がありそうな箱・引き出しを探す
・担当者に契約書の案をもらい、「契約不適合責任」と「付帯設備」の条項が免責か期間つきかを確かめる
▶ 相談したくなったら
告知書の雨漏りの欄の写真と、物件の住所(築年数が分かれば一緒に)を送ってください。5つの状態のどれに当たりそうか、というところからお話しします。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。ご相談には私が、2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。→ 公式LINE(友だち追加)公式LINEで相談する
お電話の場合は 06-6842-7377(10:00〜19:00・水曜定休)でも受け付けています。
おわりに
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
告知書の「雨漏り」の欄は、たった1行です。でもその1行の向こうには、親が住んでいた家の記憶があります。きょうだいとの話し合いや、これからの家計のことも重なっていて、手が止まるのは当然だと思います。
免責は、売主様を守るための約束です。そして、知っていることを正直に書くことは、その約束をきちんと効かせるためのいちばんの方法だと、私は考えています。全部を一晩で決めなくて大丈夫。今夜は鉛筆で番号を1つ書くところまでで、十分な一歩です。
その家を「ちゃんと売れた」と思って手放せるように。この記事が、そのための小さな手がかりになればうれしいです。










