隣の人に「土地を売って」と言われたら?|大阪市で値段を答える前に見る3つの数字
2026/10/14
「もし売るんやったら、うちに言うてな」。片付けの日、お隣の奥さんにそう言われて、うなずいたまま1か月がたった。
先に答えを3行で
1. すぐに値段を答えなくて大丈夫です。お隣だから高く売れる家もあれば、相場どおりの家もあります。
2. 大きな手がかりは「お隣が買うと、その土地で何ができるようになるか」。実現できる使い方と予算を確かめ、相場と必要売価を並べます。
3. 今日は、言われた言葉と日付をメモに残し、「少し考えさせてください」と返すところまでで十分です。
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。売るかどうか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「うちに言うてな」と言われた日に、返事はしなくていい

その場で「はあ、ありがとうございます」としか言えなかった。そのことを気にしている方もいると思います。でも、お隣の一言で決まったことは、実はほとんどありません。この章で、決まったことと、まだ何も決まっていないことを分けてみます。
▶ たとえば、こんな方です
少し具体的に考えてみますね(人物も数字も、説明のための例です)。
Aさん、57歳。メーカーで総務の仕事をしていて、豊中市のマンションに奥さんと大学生の子どもと住んでいます。昨年、お父様が亡くなり、東淀川区の実家を相続しました。妹さんとの話し合いは済んでいて、名義もAさんに替えてあります。
実家は、路地を入った奥の木造2階建て。敷地は18坪くらいです。道路に接している幅が2mに足りないかもしれず、建て替えができるかどうかは、まだ誰にも確かめていません。
9月の週末、片付けに通っていた日のこと。道路側の家に住む70代の奥さんが、門の前で声をかけてきました。
「もし売るんやったら、うちに言うてな。息子が車を置く場所を探してるねん」
お父様の代から何十年も顔を合わせてきたお隣です。Aさんは「はあ、ありがとうございます」と頭を下げて、その日は帰りました。
それから1か月。妹さんから電話で「隣には高く売れるらしいよ」と聞いて、余計に分からなくなりました。いくらと言えばいいのか。高く言ったら欲深いと思われないか。安く言ったら妹に何と説明するのか。夜、リビングで「隣の人 土地 売る いくら」と検索しているのが、今のAさんです。
▶ 決まっているのは「買いたい人が1人いる」ことだけ
ここで一度、落ち着いて整理してみましょう。お隣の一言で決まったことは、1つしかありません。
・決まったこと:この土地を買いたいかもしれない人が、1人いる
・まだ決まっていないこと:値段、売る範囲(全部か一部か)、時期、お隣のお金の用意、誰が契約書を作るか
こう並べると、「返事を待たせて悪い」と感じなくていいのが分かります。むしろ値段だけ先に口にすると、残りの4つを決める前に話の土台が固まってしまいます。
大阪市の路地の奥の家や、狭い土地の家では、お隣が最初の買い手候補として手を挙げることがあります。土地がつながっている人にとっては、使い道が見えやすいからです。だからこそ、最初の一言に慌てて乗らなくていい。私は20年この仕事をしてきて、値段の話は一言で決まるものではない、と感じています。
私も、お隣に買っていただいた売却は何度か経験しています。私からお隣にお声がけしに行ったこともあれば、売主様から「お隣が買いたいと言っているんです」とご連絡をいただいたこともあります。どちらの場合も、最初にしたのは値段を答えることではなく、この記事でお話しする順番で整理することでした。
▶ お隣の言い方を3つに分ける
お隣の言葉には、だいたい3つの型があります。どれだったかで、次にすることが変わります。
1. 値段を聞いてくる:「いくらやったら売ってくれる?」。本気度は高めですが、ここで数字を言うと、それが上限として覚えられやすいです
2. 「いつか」の声かけ:「売るときは声かけてな」。社交辞令のこともあります。急ぐ話ではありません
3. 目的を言う:「息子が車を置きたい」「建て替えるときに広げたい」。これがいちばん大事な手がかりです
Aさんが言われたのは3つめでした。「車を置く場所」という目的は、第2章で2つめの数字を考えるときの材料になります。
▶ 返すときの言い方
その場で何か言わないと気まずい、という気持ちはよく分かります。そんなときは、こんな一言で十分です。
「ありがとうございます。家族とも相談して、また声をかけますね」
断ってもいないし、約束もしていない。でも、ちゃんと受け止めたことは伝わります。そして家に帰ったら、言われた言葉・日付・お隣の目的を、スマホのメモに残しておいてください。1か月もたつと「何て言われたっけ」が意外と曖昧になります。
じゃあ、考える時間をもらったあと、何を見て値段を決めればいいのか。次の章で、3つの数字を一緒に書き出していきましょう。
第2章:値段は3つの数字で考える(相場・隣が買うと増える分・必要売価)

この章では、「いくらで売れますか?」に、自分で答えの幅を出す方法をお話しします。使うのは「相場」「お隣が買うと増える分」「希望する手取りを残すための必要売価」の3つ。私はこれを「隣に答える3つの数字」と呼んでいます。紙を1枚用意して、3行書く欄を作りながら読んでみてください。
▶ ①相場は「売り出しの値段」ではなく「実際に売れた値段」で見る
1つめは相場です。ここで見るのは、ネットに並んでいる売り出し中の値段ではなく、実際に売買が決まった値段(成約価格)です。売り出しの値段には売主様の希望や販売方針も入るため、実際の成約価格と同じとは限りません。
取り方は2つあります。
・不動産会社に査定してもらう:書類やデータだけで出す机上査定と、家を見て出す訪問査定があります。何社かに頼んで、査定額だけでなく「どの成約事例を使ったか」を聞いてください
・国の公開データを見る:国土交通省の不動産情報ライブラリでは、不動産取引価格情報や成約価格情報を地図から探せます。区・町名・広さ・時期の近いものを3つほど拾って、紙に書き写します
よく話に出る「路線価」は、相続税を計算するための値段です。国が毎年出す土地の値段(地価公示)の8割程度を目安に決められていて、時価そのものではありません。相場の代わりにはしないでください(国税庁・路線価等の評価水準)。
Aさんの家のように、路地の奥で建て替えができないかもしれない土地は、一般の買主様にとっては使い道が限られます。だから①の相場は、同じ広さの普通の土地より低く出ることが多いです。ここは正直に受け止めておきたいところです。再建築不可の家の売り方は、こちらの記事でも書いています → 大阪の再建築不可を高く売る方法!損しない売却・買取相場解説
▶ ②お隣が買うと増える分は「お隣の目的」と「道路との接し方」で見る
2つめが、この記事の中心です。お隣にとってあなたの土地は、ほかの人にとってとは違う値打ちを持つことがあります。ただし、いつもそうとは限りません。大きい場合と小さい場合があります。
大きくなる可能性がある例:Aさんのような路地奥の土地です。道路側のお隣と一体で使えれば、駐車場や敷地を広げる余地が生まれるかもしれません。ただし、隣地を買うだけで再建築できたり、広い家を建てられたりするとは限りません。道路の種類・接道の幅・敷地の取り方・用途地域・建ぺい率や容積率などを確認したうえで、実現できる使い道から考えます。条件が整えば、ほかの人よりお隣が高く評価する可能性があります。
小さい例:お隣がすでに広い土地を持っていて、「ついでにあったら便利かな」くらいの場合です。買わなくても困らないので、お隣が出せる額も相場前後になりやすいです。
見当のつけ方は2つ。
1. お隣の目的を聞く(車庫・建て替え・庭・通路)。第1章でメモした一言が、ここで効いてきます
2. 自分の土地が道路にどう接しているかを見る。法務局の地図・測量図を手がかりに、大阪市の窓口や建築士に道路・接道・建築条件を確かめます。図面や道路の種類だけで再建築の可否を決めつけないでください
接道は原則として建築基準法上の道路に2m以上ですが、条件付きの認定・許可制度もあり、個別確認が必要です(大阪市・接道規定の特例)。また、一体利用で増える価値の全額を売値に上乗せできるとは限りません。お隣の資金や代替案、工事・手続き費用も関係します。
ここで出したいのは正確な金額ではありません。「上乗せを話してもいい土地か」と「その大きさのおおよその見当」です。
▶ ③希望する最低手取りから「必要売価」を逆算する
3つめは、希望する手取りを残すために必要な売却価格の目安です。まず「最低いくら残したいか」を決めます。その手取り額を①の相場と直接比べると、費用を引く前と後の数字が混ざってしまいます。そこで、次のように売価に直します。
必要売価の目安=希望する最低手取り+売却に伴う費用・税金+返済が必要なローン残債
費用には、主に次のものがあります。
・仲介を頼む場合の仲介手数料(第5章)
・境界を確かめる測量や、一部を売る場合の分筆の費用(第3章)
・古い家を壊して渡すなら、解体の費用
・登記の費用(住所の変更、古い借金の記録を消す手続きなど)と、司法書士の先生への報酬
・売買契約書に貼る印紙
・利益が出たときの税金(第5章)
金額は家ごとに大きく変わるので、見積もりや登記簿で1つずつ埋めていきます。税金のところは、親から相続した家だと買ったときの値段が分からないこともありますよね。その場合の考え方は、こちらの記事にまとめています → 大阪市の不動産売却で税金が数百万増える|取得費不明の5%ルール
ローン残債があれば、その返済も別に差し引きます。最後の確認式は「手取り=売価−費用・税金−ローン返済」です。税金や仲介手数料は売価によって変わるので、候補価格ごとに試算してください。
この③は、自分が希望する手取りに届くための売価の目安で、買主様が必ず払ってくれる価格ではありません。妹さんに説明するときも、希望と相場を分けて示すと話がしやすくなります。
▶ 3つを並べて、答える幅を決める
3つの数字がそろったら、こう考えます。
| 状況 | 答え方の向き |
| ②が大きい可能性がある(一体利用の効果が確認できる) | ①を土台に、②のうちどこまで売価に反映できるかを交渉する。①が必ず下限になるわけではない |
| ②が小さい(お隣にとって「ついで」) | ①の前後で答える |
| ③の必要売価が①の相場より高い | お隣への売却で希望手取りに届くか、市場に出す場合と同じ費用条件で比べる。届かなければ条件や売却時期も見直す |
Aさんなら、紙はこんな3行になります(説明のための例です)。
・①相場:(空欄。1週間以内に査定かデータで取る)
・②隣が買うと増える分:大きくなる可能性あり。目的は車庫。一体利用の可否・道路・接道条件は確認前
・③必要売価:希望する最低手取りに、仲介手数料・測量・分筆・登記・税金などとローン残債を加えて試算
①が空欄でもかまいません。空欄があると、次に何をすればいいかがはっきりします。
気をつけたいのは2つです。「お隣だから高く」と根拠なく上乗せしないこと。「お隣だから安く」と遠慮して下げないこと。私は売却の仕事で、毎回、成約事例を並べて値段の根拠を作っています。その目で見ても、値段の土台は①の相場です。そこに②をどこまで乗せるかを、お隣と話す。この順に話せば、お隣にもあなたにも、根拠のある値段になります。
①の相場が分からないときは、住所(区と町名まで)と土地の広さを LINE で送ってください。「隣の人に売ってと言われたんですが、いくらと言えばいいですか?」くらいの一言でかまいません。→ 公式LINEで相談する
値段の幅が見えてきたら、次は「どこまで売るか」です。これを決めないと、値段も最後まで決まりません。
第3章:全部売るか、庭や通路の一部だけ売るか
▶ お隣の目的で、範囲は3通りに分かれる
・家ごと全部:建て替えや、土地を広げたい場合
・駐車場になる一角だけ:Aさんのお隣のように「車を置きたい」場合
・通路や庭の一部だけ:出入りを広げたい、日当たりを確保したい場合
「車を置く場所」と言われたAさんの場合、お隣が欲しいのは全部なのか、車1台分の一角なのか。ここを最初に聞いておかないと、第2章で出した数字が全部ずれてしまいます。
▶ 一部を売るなら、土地を分ける手続きと、その前の測量が要る
土地の一部だけを売るときは、1つの土地を登記の上で2つに分ける手続き(分筆)が要ります。分筆は土地家屋調査士の先生に頼む仕事です。その前に、土地の境目がどこかを確かめる測量が必要になることが多いです。
測量では、お隣だけでなく、反対側や裏の家、道路側(役所)とも境目を確かめます。買うのがお隣でも、ほかの家との境目は別の話です。費用と期間は土地の状態で大きく変わるので、まずは土地家屋調査士の先生に見積もりをもらってください。測量の種類の違いは、こちらで書いています → トラブル回避!大阪市不動産売却での現況測量・確定測量の違いとは
古い家だと、境目を示す杭やプレートが見当たらないことも多いです。境界の確かめ方は、こちらの記事が参考になると思います → 大阪の不動産売却|境界確認でトラブルを防ぎ高く売る方法
▶ 一部だけ売ると、残りが売りにくくなることがある
ここは見落としやすいところです。一部を売ったあとの「残りの土地」がどうなるかを、売る前に考えておきます。
たとえば、Aさんの土地で道路につながる細い通路の部分だけを、お隣に売ったとします。すると残りの土地は、道路に出られなくなるかもしれません。そうなると、残った家は今よりもっと売りにくくなります。
建物が残る場合は、建物の建築面積と敷地面積の割合(建ぺい率)や容積率、接道条件などに支障が出ることもあります。登記上の分筆と建築基準法上の敷地は同じとは限らないため、売った後にどこを建物の敷地とするかも確認します。ここは建築士の先生か役所の窓口で確かめてから決めてください。
私は売却専門なので、「売ったあと、残った土地を次に誰が買うか」を考えるのが仕事です。一部売却の話が出たら、残りの出口まで一緒に見ておくと安心です。
▶ 越境があれば、値段と一緒に決める
お隣の屋根や塀、植木がこちらにはみ出している(越境)ことも、古い住宅地ではよくあります。お隣が買うなら、解消しやすい話ではあります。ただ、測量で見つかったときに誰が費用を持つかは、値段と一緒に決めておくのがおすすめです。あとから「それはそっちで」となると、関係がこじれやすいからです。越境の考え方は、こちらの記事で詳しく書いています → 「屋根が越境しています」と言われた大阪市の家|売る前に外せる・直せる・直せないに分ける
範囲が決まったら、次は「いつまでに決めてもらうか」です。お隣との話でいちばん長引きやすいのが、ここです。
第4章:「お金ができたら買う」で半年止まらないために、期限と紙を決める
▶ お隣のお金の用意で、時期は変わる
お隣が買うお金をどう用意するかで、話が進む早さはまったく違います。
・手元のお金で買う:決めてから契約までが早いことが多いです
・銀行で借りて買う:銀行の審査が通るまで、買えるかどうかが決まりません
・家族の援助で買う:援助する人の都合も入ってきます
Aさんのお隣のように「息子さんが車を置きたい」という場合、実際にお金を出すのは息子さんかもしれません。話している相手と、お金を出す人が違うこともあります。誰が買うのかも、さりげなく確かめておきたいところです。
▶ 決めることは3つ
「お金ができたら買うわ」と言われて、半年たっても何も進まない。お隣との話では、こういうことが起きやすいです。悪気がなくても、お隣にとっては急ぐ理由がないからです。だから、次の3つを先に決めます。
1. 返事の期限:「年内に、この値段で買うかどうか、お返事をいただけますか」
2. 希望条件を確認する1枚:名前・希望金額・範囲・返事の期限・資金の用意を書いてもらう。契約締結前の希望条件の確認なのか、拘束力を持つ合意なのかを区別し、担当者に文面を確かめてもらいます
3. 期限を過ぎたらどうするか:まだ契約や独占交渉などの合意がない段階で、「お返事がなければ、市場に出して広く買主様を探します」と方針を共有し、記録も残す
契約書に署名していなくても、口頭や書面の内容・やり取りによって契約成立が問題になることがあります。「申込書だから自由に取り消せる」「期限を過ぎれば自動的に白紙」と決めつけないでください。売る条件に合意する前に、契約を成立させる時点と解除の条件を確認します(法務省・契約の成立)。
▶ 「そんなこと言いにくい」と思ったら
お隣にこんなことを言うのは気が重い。その気持ちはよく分かります。でも私は、先に伝えておくほうが、関係は壊れにくいと考えています。
期限を決めずに待ち続けて、半年後に突然「やっぱりほかの人に売ります」と言うほうが、お隣にとってはずっとショックです。「年内にお返事をもらえなければ、広く探しますね」と最初に言っておけば、それはただの約束になります。
売り出したあとの申込みの受け方は、こちらの記事でも書いています → 申込みが入ったら内覧は止める?|大阪市の家で止める日と掲載を下ろす日
期限と紙が決まったら、いよいよ契約です。お隣と直接やるか、間に人を入れるか。次の章で比べてみましょう。
第5章:契約は個人でするか、間に人を入れるか
▶ 個人どうしでも、売ることはできる
最初にお伝えしておくと、不動産会社を通さず、お隣と直接売り買いすることはできます。法律で禁止されているわけではありません。
ただ、個人どうしだと、ふだん不動産会社が行う調査や条件整理を、当事者が自分で担うか専門家に依頼する必要があります。いちばん大きいのが重要事項説明です。土地の権利や法律の制限(建て替えできるか、道路の種類など)を、宅地建物取引士が買主様に書面で説明するものです。不動産会社が取引に入るときの義務で、個人どうしの売買には、この義務がありません(宅地建物取引業法35条)。
私は宅地建物取引士として、この説明書を書く側にいます。だから、個人どうしの取引で抜けやすいところが、よく見えます。
▶ 個人で進めるときに、売主が用意するもの
・売買契約書:ネットの雛形を使う方も多いです。ただ雛形だと、手付金(契約のときに先に払うお金)、引渡しの日、固定資産税などの精算、境界、不具合の扱いが抜けやすいです。契約書の入手先は、こちらで書いています → 不動産売却の契約書はどこでもらえる?大阪での取得と注意点
・名義を移す登記:司法書士の先生に頼みます
・測量・分筆:土地家屋調査士の先生に頼みます(第3章)
▶ お隣だから「なあなあ」になりやすい3か所
「父の代からの付き合いやし、細かいことを言うのも悪いな」。顔見知りだと、そう思ってつい曖昧にしがちです。とくに次の3か所は、あとで揉めやすいところです。
1. 精算:固定資産税をどの日で分けるか、測量や解体の費用をどちらが持つか
2. 不具合:古い家を残して渡すなら、雨漏りやシロアリがあとで見つかったときにどうするか
3. 境界:どこからどこまでを売ったのか。杭がないまま「だいたいこのへん」で済ませない
この3つを紙に書いておくだけで、10年後、20年後にお互いの子どもの代になっても困りにくくなります。
▶ 税金は「線」だけ知っておく
税金の細かい計算は税理士の先生にお任せするとして、お隣に売るときに知っておきたい線が2つあります。
・相続した空き家の3,000万円の特例:亡くなった親がひとりで住んでいた家を相続して売る場合の特例です。条件を満たせば、利益から最大3,000万円を差し引けます。2024年以後の譲渡で、対象の家屋と敷地の両方を相続・遺贈で取得した相続人が3人以上なら、1人当たりの上限は2,000万円です。お隣への売却なら対象になりうる一方、建築時期、相続後の事業・貸付け・居住への利用の有無、耐震性や家屋全部の取壊し、売値などの条件があります。家を残して庭や通路だけを売る場合も、空き家だから控除を使えるとは限りません。分割売却では1億円の判定に他の売却代金を合算する場合もあるため、範囲を決める前に確認します。期限も2つあります。「その家の期限」は、相続が始まってから3年を経過する年の12月31日まで。「特例そのものの期限」は、2027年12月31日までの売却です(国税庁 No.3306)。自分の家が当てはまるかは、税務署か税理士の先生に確かめてください
・相場より大きく安く売ると:買った側に贈与税がかかることがあります(国税庁 No.4423)。「お世話になったから」と大幅に下げるときは、先に税理士の先生に相談してください
▶ 間に人を入れるなら
不動産会社に入ってもらうと、重要事項説明・契約書づくり・精算の計算・司法書士との段取りを任せられます。その分、費用がかかります。個人で進めるか、人を入れるかは、上の3か所を自分で詰められるかどうかで考えるといいと思います。
私が間に入る場合も、買い手が先に決まっているからといって、引き渡しまでにやることは特に変わりません。重要事項説明・契約書・精算・登記の段取りは、ふつうの売却と同じように進めます。
ただ、広告を出して買主様を探す販売活動をしなくてよい分、仲介手数料を通常の上限額までいただくことはほとんどありません。売主様・買主様それぞれから、売買代金の1%ずついただくことが多いです。これは当社の実績に基づく説明で、一律の料金を約束するものではありません。税込・税別の扱い、実際の金額と業務範囲は、ご依頼時に確認して決めます。
ここまでで、値段・範囲・期限・契約の考え方がそろいました。次の章では、お隣に売る話でよく出る質問に答えます。
第6章:よくある質問
▶ Q. 隣の人なら、いくらで売れますか?
お隣が買うと増える分が大きい土地なら、相場より上の幅で話せることがあります。ただ、決め手になるのは相場の数字です。まず①の相場を、査定か国の公開データで1つ取ってください。上乗せをどこまで考えるかは、第2章の表で見たとおりです。
▶ Q. 断ったら、お隣との関係が悪くなりませんか?
値段で断るより、期限と手順で伝えるほうが角が立ちにくいです。「年内にお返事がなければ、広く探しますね」と先に言っておく形です(第4章)。市場に出す前に一度声をかける、と伝えておくだけでも、受け取られ方はずいぶん違います。
▶ Q. きょうだいや親戚に売る場合も同じですか?
値段を3つの数字で考える方法は同じです。ただし、親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ると、税金の線が変わります。相続した空き家の3,000万円の特例や、マイホームの特例が使えなくなります(国税庁 No.3302・No.3306)。誰が「特別の関係」に当たるかも含めて、先に税理士の先生に確かめてください。
▶ Q. 囲い込みはしないですか?
しません。私が仲介でお預かりする場合は、レインズ(不動産会社どうしで物件の情報を共有する仕組み)に登録します。ほかの不動産会社を通じて来た買主様にも、私に直接問い合わせてくださった方にも、同じ写真・図面・資料をお渡しします。売主様への報告書には、他社からの問い合わせも書いています。実際に、レインズを通じて他社様から購入希望のお客様をご紹介いただき、成約したこともあります。
お隣の話が先にあって、まだ値段がまとまっていないときは、売主様にお渡しする査定書とまったく同じものを、お隣にも見ていただきます。そのうえで「実際に、このくらいの価格で売り出す予定です」とお伝えし、お隣の希望金額をうかがって、売主様にご相談する流れが多いです。売主様とお隣で、違う数字を見ながら話すことはありません。
第7章:まとめと、次にすること
▶ まとめ
・お隣の一言で決まったのは「買いたい人が1人いる」ことだけ。すぐに値段を答えなくていい
・値段は「隣に答える3つの数字」(①相場・②お隣が買うと増える分・③必要売価)で幅を出す
・範囲・期限・契約の紙を、値段と一緒に先に決める
▶ 今日できること
お隣に言われた言葉・日付・目的(車庫・建て替えなど)を、メモに残してください。
・言われた言葉:
・日付:
・お隣の目的:
これだけで、第2章の②を考える材料がそろいます。
▶ 1週間以内にすること
1. ①の相場の数字を1つ取る(不動産会社の査定か、不動産情報ライブラリの成約価格)
2. 登記簿と、あれば測量図・境界の書類を探す
3. きょうだいに「お隣から話が来ている」と共有する
▶ 相談したくなったら
3行を書いてみて、「うちの場合はどうなる?」と思ったら、私にも聞いてみてください。
送っていただくのは2つで足ります。「住所(区と町名まで)」と「お隣に言われた一言」です。相場の取り方と、お隣と話すときの値段の幅を一緒に整理します。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。→ 公式LINE(友だち追加)公式LINEで相談する
相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。
(サイト:https://heroes-property.jp /メール:info@heroes-property.co.jp)
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
「うちに言うてな」。お隣のその一言には、長いご近所づきあいの重みがあります。だからこそ、すぐに数字で返せなかったのは、むしろ自然なことだと思います。
値段は、3行の紙から決めていけば慌てずにすみます。「あの値段でよかったね」と言える着地点は、数字を並べるほど見つけやすくなります。お隣にとっても、あなたにとっても、妹さんや家族にとってもです。
まずは今日、言われた言葉をメモに残すところから。その1行が、気持ちよく話を進める最初の一歩になりますように。
次に読むなら
・大阪の再建築不可を高く売る方法!損しない売却・買取相場解説
こんな方に:路地の奥で、建て替えできるか分からない家を売ろうとしている方
こんな方に:お隣と個人で契約しようか考えている方
こんな方に:①の相場の数字を、まず知りたい方











