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不動産売却で大阪府の老人ホームに入った親の実家を3,000万円控除で現金化する実践ガイド

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老人ホームに入った親の実家、3,000万円控除が使えるのは3年目の年末まで

老人ホームに入った親の実家、3,000万円控除が使えるのは3年目の年末まで

2026/09/11

施設の請求書が届いて、通帳を見て、「あと何年もつんだろう」と計算した夜。そのあとスマホで「実家 売却 3年」と検索して、ここにたどり着いた方も多いと思います。

親が老人ホームに入って空いた大阪市の実家。「相続してから売ればいい」と思っていたら、同僚から「3年ルールがあるらしいよ」と聞いて、急に不安になった。でも税理士さんのサイトを読んでも、「うちは2023年11月に母が入ったから、いつまで?」が自分では答えられない…。

この記事では、親の入居年から「期限の年末」を1つ決めます。そのうえで、期限を過ぎると何が変わるか、売る前に何を確認するか、大阪市で期限から逆算するとどう動くかを、一緒に見ていきます。「今は売らない」も正解に含めたまま書きますので、安心して読み進めてください。

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目次

    第1章:あなたの「期限の年末」を、親の入居年から今日決める

    この章では、「そのうち売ろう」を「◯年12月31日」という1つの日付に変えます。必要なのは、親が施設に入った年だけです。

    ▶ 入居年カレンダー:入居年を入れると期限の年末が出てくる

    親名義の実家を売るときに使える特例が、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」です。マイホームを売ったときに、売った利益から3,000万円まで差し引ける仕組みで、これには期限があります。国税庁のタックスアンサーNo.3302に書いてある要件は、こうです。

    「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売ること。

    言い回しが独特で、一度読んだだけでは頭に入りません。だから私たちは「入居年カレンダー」と呼んで、入居年から期限を引くだけの形にしています。

    親が施設に入った年(住まなくなった年)

    期限の年末

    2023年 2026年12月31日     
    2024年 2027年12月31日
    2025年 2028年12月31日
    2026年 2029年12月31日

    たとえば、お母様が2023年11月に東淀川区の家を出て介護付き有料老人ホームに入ったなら、期限は2026年12月31日。この記事を公開している2026年9月時点で、残りは3か月半ほどです。

    「3年」と聞くと「2026年11月まで」と思いがちです。でも実際は「3年を経過する日が属する年の年末」なので、少しだけ後ろに伸びます。入居月は関係なく、入居した「年」だけで決まる、と覚えておくと楽です。

    ▶ 「住まなくなった日」とは、住民票を移した日ではない

    起算点になる「住まなくなった日」は、施設に入って実家に戻らなくなった日のことです。住民票を施設に移した日ではありません。

    「住民票はまだ実家のままだから、まだカウントが始まっていないはず」。そう思っている方に、ご相談の場でときどき出会います。でも国税庁の要件は、住民票の所在を条件にしていません。住民票がどこにあっても、実際に住まなくなった日から時計は動いています。ここは第4章でもう一度扱います。

    ▶ 「要確認」欄:ショートステイや一時帰宅があった場合

    ただし、次のようなケースは起算日が動く可能性があります。

    ●最初はショートステイ(短期入所)で、途中から本入居に切り替わった

    ●入居後も、週末は実家に帰って泊まっていた時期がある

    ●一度退所して実家に戻り、また別の施設に入った

    こういう場合、「住まなくなった日」がいつなのかは個別の事情で変わります。施設の入居契約書と一緒に、税理士さんに確認してください。私たちも「この日です」とは言い切れません。

    ただ、確認が済むまでは、最も早い日付で仮置きしておくのがおすすめです。遅い方向にずれる分には困りませんが、早い方向にずれると取り返しがつきにくいからです。

    ここまでで、あなたの手元に1つの日付が決まったはずです。じゃあ、その日付を過ぎると何が起きるのか。次の章で分岐表にして見ていきましょう。

    第2章:期限を過ぎると何が変わるか — 生前売却と相続後売却の分岐表

    この章では、「相続してから売っても同じでしょ?」という前提を、要件の違いとして見えるようにします。先に答えを言うと、生前に親名義で売るときの特例と、相続後に子名義で売るときの特例は、名前も要件も期限も別物です。

    ▶ 生前に親名義で売る:3,000万円控除+10年超なら軽減税率

    親が判断能力を保ったまま、親名義で実家を売る場合。第1章の期限内であれば、売却益から3,000万円を差し引ける特例が使えます。

    さらに、親がその家を10年を超えて所有していた場合は、「軽減税率の特例」(タックスアンサーNo.3305)も重ねて使えます。控除後の利益のうち6,000万円以下の部分について、所得税の税率が10%になる仕組みです。国税庁のページにも「重ねて受けることができます」と明記されています。1980年ごろに買った家なら、所有期間の要件は余裕で満たしているはずです。

    大阪市の築45年前後の戸建てなら、売却額が3,000万円を超えることはそう多くありません。要件を満たして期限内に売れれば、譲渡所得税(売って得た利益にかかる税金)が0円になるケースが十分ありえます。

    ▶ 相続後に子名義で売る:使えるのは「空き家特例」で、要件が別物

    では、親が亡くなってから相続して子名義で売る場合はどうか。子はその家に住んでいないので、上の「マイホームの3,000万円控除」は子には使えません。

    代わりに検討するのが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(タックスアンサーNo.3306。通称「空き家特例」)です。こちらも最大3,000万円の控除ですが、要件がまったく違います。国税庁のページから、大阪市の実家で引っかかりやすいものを抜き出すと、こうなります。

    要件

    内容(No.3306より)

    建築年 昭和56年5月31日以前に建築された家であること
    建物の種類 区分所有建物の登記がされている建物でないこと(分譲マンションは原則対象外)
    同居の有無 相続開始の直前に、親以外に住んでいた人がいなかったこと
    老人ホーム入所 要介護認定などを受けて入所した場合は、一定の要件を満たせば対象になりうる
    相続人の数 2024年以降の売却で、相続人が3人以上なら控除は2,000万円まで
    期限 2027年12月31日までに売ること

    見てほしいのは、一番下の期限です。空き家特例は2027年12月31日まで。「相続を待てば同じ控除が使える」と思っていた人ほど、期限と要件の両面で前提が崩れやすい、というのが正直なところです。

    そして建築年。1980年ごろ購入の家なら「昭和56年(1981年)5月31日以前の建築」に当てはまる可能性は高いです。ただし、あくまで登記事項証明書(法務局で誰でも取れる、その不動産の公式な記録)の「新築年月日」で確かめるものです。旧耐震(1981年5月までの古い耐震基準で建てられたこと)のマンションや長屋など、大阪市の築古の実家がつまずきやすい話は、第6章で扱います。

    ▶ 例:売却2,000万円・取得費が分からない場合の差

    ここは「例」として読んでください。実際の税額は、必ず税理士さんに計算してもらうものです。

    仮に、実家が2,000万円で売れたとします。両親が買ったときの売買契約書は見つからず、取得費(買ったときの代金など)が分からない。譲渡費用(仲介手数料など売るためにかかった費用)は70万円だった。取得費が分からないときは、売却額の5%を取得費とみなすルールがあります。利益は概算で2,000万円−100万円−70万円=1,830万円です。

    生前に期限内で売り、3,000万円控除が使えた場合 → 利益1,830万円が控除の範囲に収まるので、税額は0円になりえます

    相続後に売り、空き家特例の要件を満たせなかった場合 → 長期譲渡所得(所有5年超で売ったときの区分)の税率20.315%がそのままかかります。所得税・復興特別所得税・住民税の合計で、概算で370万円ほどになりえます

    同じ家、同じ売却額でも、要件次第で数百万円単位の差が出る可能性がある。これが「相続してからでも同じ」ではない理由です。取得費が分からないときの5%ルールと、資料の探し方はこちらの記事に詳しく書いています

    「大阪市の不動産売却で税金が数百万増える|取得費不明の5%ルール」

    ▶ 判定の代わりに:税理士に持っていく準備リスト4点

    私たちは税理士ではないので、「あなたの家は控除が使えます」という判定はしません。その代わり、税理士さんに持っていくと話が一気に早くなる「準備リスト4点」をお渡しします。

    1.登記事項証明書(法務局またはオンラインで取得。名義・所有権を取得した日・建物の新築年月日が分かる)

    2.親の住民票の履歴、または戸籍の附票(いつからいつまでどこに住んでいたかの公的な記録。第4章で使い方を説明します)

    3.施設の入居契約書(入居日=「住まなくなった日」の裏付けになる)

    4.購入時の売買契約書の有無(あるなら現物、ないなら「ない」と分かっていることが大事)

    この4点があると、税理士さんは「期限」「所有期間」「取得費」を一度に見られます。

    分岐が見えて「じゃあ急いで売らないと」と思った方、ちょっと待ってください。期限より先に確認しておきたいことが3つあります。

    第3章:売る/今は売らない — 期限より先に確認する3つのこと

    この章では、「期限があるから急いで売る」ではなく、3つのことを確認してから決める順番を身につけます。私たちはこれを「売る前の3確認」と呼んでいます。確認した結果、「今は売らない」になっても、それは立派な正解です。

    私たちは買取(不動産会社が自分で買い取ること)を主業にしていない売却専門の会社なので、「売らなくていい」と正直に書けます。売却ありきのサイトだと、ここが書けないんですよね。

    ▶ 確認1:親の意思を聞いて、記録に残す

    一番先に、そして一番大事なのがこれです。家は親のもの。売るかどうかを決めるのは、判断能力があるうちは親本人です。

    「勝手に売るみたいで後ろめたい」という気持ちを、手続きに変えるのが「聞いて、記録に残す」というやり方です。

    施設の面会で、たとえばこんなふうに切り出してみてください。「お母さん、家のことなんやけど、今後どうしたいと思ってる?」。説得ではなく、質問です。「帰りたい」と言うかもしれませんし、「もうええよ、あんたらの好きにして」と言うかもしれません。どちらでも、まずはその言葉をそのまま受け止めます。

    そして、その日のうちにメモを残します。日付、同席した人(弟さん、施設の職員さんなど)、親が実際に口にした言葉。スマホのメモでもノートでも構いません。このメモは、後で弟さんと話すときの土台になります。不動産会社や司法書士さんの本人確認でも役立ちますし、何より、あなた自身の気持ちを支えてくれます。

    ▶ 確認2:介護資金は、売却代金がなくても何年もつか

    次にお金です。ここはファイナンシャル・プランナーの視点で、順番だけお伝えします。

    用意するのは、施設からの直近の請求書、親の年金の振込額が分かる通帳、預貯金の残高です。そして、こう計算します。

    (毎月の施設費用+医療費などの雑費)−(毎月の年金収入)= 毎月の持ち出し額 預貯金の残高 ÷ 毎月の持ち出し額 = 売却代金がなくても何か月もつか

    たとえば持ち出しが月10万円で預貯金が600万円なら、5年。月15万円なら約3年4か月。冒頭の「あと何年もつんだろう」が、ここで初めて数字になります。この「何年もつか」を先に出しておくと、「今すぐ現金が要る」のか「期限内に落ち着いて売ればいい」のかが分かれます。実家の売却を介護費用の柱にするかどうかは、この数字を見てから決めるものです。

    1つ注意点があります。実家を売って現金化すると、介護保険の「負担限度額認定」の預貯金の要件に影響する可能性があります。特別養護老人ホームなどの食費・居住費が軽くなる制度です。この制度の細かい扱いは私たちの専門外です。親が住んでいた区の区役所で「家を売って預貯金が増えると認定はどうなりますか」と聞いてみてください。

    ▶ 確認3:きょうだいの心理的な合意

    法律上、親名義の家を親が売るのに、子どもたちの同意は要りません。でも、心理的な合意がないと、内覧の鍵の管理、残置物の片付け、決済の日の立ち会いといった場面で止まりやすいものです。

    「母が帰りたいと言うかもしれないから置いておこう」という弟さんの気持ちは、間違っていません。だからこそ、第2章の分岐表を弟さんに共有してほしいんです。「売れ」と言うためではなく、「置いておく場合、いつまでにどの要件を確認しておくか」を一緒に決めるためです。

    ▶ 「今は売らない」を選んだ人への宿題

    3つ確認した結果、「今は売らない」になった場合。それでよいと私たちは思っています。ただ、1つだけ宿題を持って帰ってください。

    登記事項証明書を取って、建物の新築年月日を見ておくこと。相続後に空き家特例を使う可能性があるなら、「昭和56年5月31日以前の建築か」が最初の分かれ道になるからです。今日でもできますし、期限が動かない今が一番落ち着いてできます。

    さて、「売る」に傾いた人も「今は売らない」の人も、動く前に解いておきたい誤解が2つあります。次の章では、住民票と親名義の話をします。

    第4章:住民票と親名義 — 動く前に誤解を2つ解く

    この章では、2つの誤解を解きます。「住民票を施設に移すと控除が消える」と「親名義のままでは子は何もできない」です。解けると、あなたが動いてよい範囲がはっきりします。

    ▶ 誤解1:住民票を移すと3,000万円控除が使えなくなる

    「施設に住民票を移してしまったら、もう実家はマイホーム扱いじゃなくなるのでは」。この不安で、住民票を動かせずにいる方がいます。

    国税庁のNo.3302は、住民票の所在を要件にしていません。要件は第1章のとおり、「住まなくなった日」から数えた期限内に売ることです。住民票の場所で期限が変わることも、控除が消えることもありません。

    じゃあ、住民票が実家と違うと何が変わるのか。国税庁のページには、こう書かれています。売買契約の日の前日に住民票が実家と違う場合は、「戸籍の附票の写し」など、そこに住んでいたことを証明する書類を確定申告に添える。第2章の準備リストに「戸籍の附票」を入れたのは、このためです。住民票を移していても、証明書類を1枚足せば済む話なんです。

    なお、住民票を施設に移すかどうかには、税金とは別の制度が絡みます。代表的なのが介護保険の「住所地特例」(施設に引っ越しても、元の市区町村が保険者のままになる仕組み)です。こちらは区役所や施設のケアマネジャーさんに相談する案件として、控除の話とは切り分けて考えてください。

    ▶ 誤解2:親名義のままでは、子は何もできない

    もう1つ。「母名義のまま、私が動いていいんですか」。この質問は、遠方に住む子世代の方から本当によく聞きます。

    答えは、「動ける範囲と、親本人でないとできないことが分かれている」です。宅地建物取引士として、契約と決済で何を確認されるかを踏まえて整理すると、こうなります。

    子が動けること

    ●不動産会社に査定を依頼する

    ●内覧(購入希望者が家を見に来ること)の鍵の管理や立ち会い

    ●不動産会社との日常の連絡、書類のやり取りの窓口

    ●残置物の整理や、近所へのあいさつ

    親本人の意思確認と本人確認が要ること

    ●媒介契約(不動産会社に売却を依頼する契約)を結ぶこと

    ●売買契約を結ぶこと

    ●決済(代金を受け取り、名義を移す手続き)

    売主はあくまで親本人です。だから契約と決済の場面では、親が「売る」と決めていることと本人であることを、不動産会社や司法書士さんが確認します。

    親が施設から出にくい場合、実務ではよく2つの方法が使われます。1つは、親が子に「この家の売買契約について代理を頼む」という委任状を書き、子が代理人として契約に出る方法。もう1つは、決済の前に司法書士さんが施設まで出向いて、親本人と面談して意思と本人確認をする方法です。どちらも珍しいことではありません。委任状の細かい書き方や、司法書士さんとの段取りは、別の記事で丁寧に書く予定です。

    ▶ 「動けるうちに」という位置づけ

    ここまでの話はすべて、「親に判断能力がある」ことが前提です。判断能力が落ちてしまうと、委任状も契約もその場では成り立たなくなります。家庭裁判所で成年後見人(本人の代わりに財産を管理する人)を選んでもらう手続きが必要になります。時間もかかりますし、売却の自由度も下がります。

    だから私たちは、この記事のテーマである「3年目の年末」とは別に、もう1つの期限があると考えています。「親が自分の言葉で『売る』『売らない』と言えるうちに」という期限です。認知症と親名義の売却については、別の記事を準備中ですので、そちらもお待ちください。

    誤解が2つ解けて、動いてよい範囲が分かったところで、いよいよ期限から逆算してみましょう。次の章は大阪市版のスケジュールです。

    第5章:期限から逆算する売却スケジュール(大阪市版)

    この章では、期限の年末を右端に置いて左に工程を並べ、「今月何をするか」を決めます。私たちはこれを「3年目の年末 逆算シート」と呼んでいます。間に合わない場合の選択肢も、正直に書きます。

    ▶ 工程と所要の目安

    売却の工程を期限側から逆にたどると、こうなります。所要の目安は私たちの実務感覚によるもので、物件や時期で前後します。幅を持って見てください。

    工程 内容 目安
    親の意思確認 第3章の「聞いて記録する」 面会1回
    査定〜媒介契約 複数社に査定を頼み、依頼先を決めて契約 2〜4週間
    売り出し〜売買契約 広告を出し、内覧を受け、買主と条件を詰める 2〜3か月
    売買契約〜決済 買主の住宅ローン審査、名義変更の準備 1〜1.5か月

    合計すると4〜6か月。「どのくらいで売れますか」と聞かれたときの、私たちの答えがこの幅です。だから、期限の年の6〜7月までに売り出しを始めておくのが安全圏、というのが私たちの考えです。売却の一般的な期間については、こちらの記事も参考になります

    「大阪の不動産売却の期間は?早く売るための具体的な流れと短縮法」

    ▶ 6〜7か月前:査定と、依頼先を決める

    期限の年の春から初夏。ここでやるのは、査定の依頼と、媒介契約を結ぶ会社選びです。築古の戸建ては、資料だけの机上査定より、実際に家を見る訪問査定でないと現実的な金額が出にくいものです。遠方の方は、帰省の1回をここに使うと効率がいいですね。

    ▶ 3か月前:売り出し中。内覧と条件交渉

    夏から秋。売り出して内覧を受け、買主候補が現れたら条件を詰めます。鍵の管理を不動産会社に任せられれば、この時期は遠方にいたまま、連絡だけで進められることが多いです。

    ▶ 年内に契約まで:2023年入居で、期限が2026年末の場合

    さて、2023年入居で期限が2026年12月31日、いま9月という方。正直に言うと、今から査定を始めて、年内に決済(引き渡し)まで終えるのは、厳しい可能性があります。

    ただ、ここで諦める前に知っておいてほしいことがあります。国税庁のNo.3102では、譲渡した日について、原則は引き渡した日としています。そのうえで、「売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます」と書かれています。年内に売買契約まで進めば、引き渡しが翌年になっても、契約日を譲渡日として申告する道が残りうる、ということです。

    これは個別の事情で適用の可否が変わるところです。「うちの場合にこの選択ができるか」は、契約前に必ず税理士さんに確認してください。私たちが言えるのは、「年内に契約まで」を目標に置くと、逆算がまだ成り立ちうる、というところまでです。

    それでも間に合いそうにない、急いで売り出すと値段を下げざるを得ない。そう判断したなら、第3章の「今は売らない」に戻ってください。急いで安く売るより、相続後の空き家特例の要件を今のうちに確認しておくほうが、手元に残るお金が多くなることもあります。

    ▶ 遠方の子は「何回帰省すれば終わるか」

    東京から大阪へ、有給を使って通う。回数は最小限にしたいですよね。帰省が要る場面を絞ると、多くの場合は次の3回程度です。

    1.親の意思確認+訪問査定の立ち会い(同じ帰省でまとめる)

    2.媒介契約と売り出し前の準備(残置物の方針決め、鍵の受け渡し)

    3.決済(親が動けない場合は司法書士さんの施設訪問と組み合わせる)

    売買契約は、売主と買主が別の日・別の場所で署名する「持ち回り契約」という方法を使うと、帰省を1回減らせることがあります。手付金や日付の注意点はこちらに書いています → 「不動産売却の持ち回り契約とは?手付金や日付のリスクと対策」

    私たちの事務所は新大阪駅のすぐ近くです。JRで新大阪の隣に東淀川駅があり、東淀川区や淀川区の実家、施設、事務所を1日で回る動線が組みやすい立地です。「1回の帰省でここまで進めたい」という日の順番を一緒に考えるのも、私たちの仕事だと思っています。

    スケジュールが見えたら、最後に大阪市の築古実家ならではのつまずきを押さえておきましょう。次の章です。

    第6章:大阪市の築古実家でつまずく3つの点と、買い叩かれないための確認

    この章では、「うちの家は特殊かもしれない」という不安を、確認項目に変えます。そして後半で、施設に入った親の家に営業が集まる仕組みと、買い叩かれないための確認の仕方を書きます。

    ▶ つまずき1:長屋・連棟の戸建て

    大阪市の古い住宅地には、隣の家と壁を共有する長屋や連棟の戸建てが多く残っています。東淀川区や淀川区も例外ではありません。長屋は「売れない」のではなく「売り方が違う」物件で、切り離しや境界の話が先に来ます。査定のときに「これは長屋ですか、独立した戸建てですか」を最初に確認してください。長屋の売り方は、別の記事で詳しくお伝えします。

    ▶ つまずき2:旧耐震の区分所有マンション

    実家がマンションの場合。第2章の表を思い出してください。空き家特例は「区分所有建物の登記がされている建物でないこと」が要件なので、分譲マンションは原則として相続後の空き家特例が使えません。マンションの実家は、生前売却の期限の重みが戸建て以上に大きい、ということです。築40年超の旧耐震マンションでも売れる条件は、こちらにまとめています → 「築40年超の大阪市マンション不動産売却|旧耐震でも売れる5条件」

    ▶ つまずき3:取得費が分からない

    1980年ごろに買った家の売買契約書が、今も残っている家は多くありません。契約書がないと売却額の5%が取得費とみなされ、控除が使えない局面では税額に直結します。探し方はこちら →「大阪市の不動産売却で税金が数百万増える|取得費不明の5%ルール」

    そして残置物。「片付けてから売り出したほうがいい」と思って先に業者さんを呼ぶ方が多いのですが、順番を間違えると損をしやすいです。理由はこちらに書いています

     「大阪市の実家を不動産売却|残置物を先に処分すると損する3つの理由」

    ▶ 施設に入った親の家に、買取の営業が集まる仕組み

    ここからは、代表の紙谷として書かせてください。

    親が施設に入って空き家になった家には、買取の営業が集まりやすい構造があります。郵便物が溜まり、草が伸び、夜に明かりがつかない。それを見て「空き家だ」と分かった業者が、登記事項証明書で所有者を調べ、手紙を送る。違法ではなく、業界では珍しいことではありません。

    こういう手紙には「即現金化」「そのままでOK」と書いてあることが多く、介護費用で不安を抱えている家族には魅力的に見えます。私はここを否定しません。買取が合う事情のご家族も、確かにいらっしゃいます。

    ただ、買取は不動産会社が自分で買って転売する仕組みなので、価格は市場で売る場合より低くなるのが構造です。「買は情報、売は信頼」というのが私の信念です。買う側は情報を集めれば自分で判断できますが、売る側からは担当者の動きが見えず、信頼するしかない。だからこそ、任せる前に「この会社は私の家を市場に出してくれるのか」を確認する方法を、1つだけ持っておいてほしいんです。

    ▶ 仲介なら、レインズ登録証明書で公開状況を確認する

    仲介(不動産会社が買主を探す売り方)で専任媒介・専属専任媒介の契約を結ぶと、不動産会社には物件をレインズに登録する義務があります。レインズは、不動産会社同士が物件情報を共有する全国のネットワークです。登録すると「登録証明書」が発行され、売主はそれを受け取れます。

    さらに、その証明書に書かれたIDとパスワードで、売主自身が自分の物件の「取引状況」を見られます。ここが「公開中」になっているか、他社からの問い合わせが通る状態になっているか。この確認が、囲い込み(他社の購入希望を通さずに自社だけで抱え込むこと)を防ぐ一番シンプルな方法です。登録証明書の見方はこちらに書いています →「レインズ登録証明書ってなに?大阪市不動産売却で絶対に確認すべき必須の1枚」 

    私たちは囲い込みをしないと決めていますので、この確認は歓迎です。「囲い込みはしないですか?」と聞かれたら、証明書と取引状況の画面をお見せする。それだけの話です。

    確認項目が揃ったところで、最後にまとめと、今日からやることを整理します。

    第7章:まとめ+今日からやること

    ここまで長い記事を読んでくださって、ありがとうございます。この章では、閉じた直後に動けるように、やることを3段に分けて置いておきます。

    ▶ この記事の要点

    ●親名義の実家の3,000万円控除は、入居年から数えて3年目の年末まで。相続後の空き家特例は要件も期限(2027年12月31日)も別物

    ●期限より先に、親の意思・介護資金・きょうだいの3つを確認する。「今は売らない」も正解

    ●住民票は控除の要件ではない。親名義でも子が動ける範囲は広く、契約と決済だけ親の意思確認が要る

    ●期限の年の6〜7月までに売り出すのが安全圏。任せる前にレインズ登録証明書で公開状況を確認する

    ▶ 今日できること

    1.親が施設に入った年から、期限の年末を書き出す(2023年入居なら2026年12月31日)

    2.登記事項証明書を取る手配をする(法務局の窓口か、オンラインの登記情報提供サービス)。見るのは「名義」と「建物の新築年月日」の2つ

    ▶ 1週間以内にすること

    1.親に「家をどうしたいか」を聞き、日付・同席者・言葉を記録する

    2.きょうだいに第2章の分岐表を共有し、「売る」「今は売らない」「保留して要件確認」のどれで話し合うかを決める

    3.準備リスト4点(登記事項証明書/戸籍の附票/入居契約書/購入時の契約書の有無)を集め始める

    ▶ 「今は売らない」を選んだ方へ

    登記の新築年月日が昭和56年5月31日以前かどうかを確認して、相続後の空き家特例の入口に立てるかをメモしておいてください。相続した実家を売る流れは、こちらの記事が入口になります →「大阪で相続した実家を売却する流れ!節税特例や名義変更を解説」

    ▶ 相談したくなったら

    ここまでの行動は、すべてあなた自身でできます。そのうえで、「うちの場合、期限に間に合いますか」「この家は仲介で売れますか」「囲い込みはしないですか」。そんな質問が残ったら、私たちに聞いてみてください。売却専門で、囲い込みをしないと決めている会社です。査定から始めなくて構いません。「親と話す前に、順番だけ整理したい」という相談でも大丈夫です。

    おわりに

    親が施設に入った実家のことは、誰に聞けばいいのか分かりにくいものです。税理士さんは税金のこと、ケアマネジャーさんは介護のこと、不動産会社は売ることしか話さない。その隙間に、「うちはいつまで?」「私が動いていいの?」という一番聞きたい質問が落ちてしまいがちです。

    この記事が、その隙間を少しでも埋められていたら嬉しいです。期限の年末は決まりました。でも、その日付に追い立てられる必要はありません。親の言葉を聞いて、数字を出して、きょうだいと分岐表を眺める。その順番で進めば、「売る」も「今は売らない」も、あなたと親御さんが納得できる答えになるはずです。

    最後まで読んでくださって、ありがとうございました。次の面会のときに、家の話を一言だけ切り出してみてください。そこからで十分です。

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