自宅兼工場は売れる?|大阪市の家で、機械を外す前に確かめる3つ
2026/10/30
「工場付きの家なんか、売れへんで」。法事の帰りに親戚からそう言われて、実家の話をそれきり止めてしまった。そんな方に向けて、この記事を書いています。
先に答えを3行で
- 売れるかを考える出発点は「誰が買うか」です。価格や建物の状態、使い方の条件も確かめます。買う人は、住む人・建てて住む人・作業場として使う人の3種類です。
- 分かれ目は、親が「届出の要る施設」を使っていたかどうか。使っていた家は、使うのをやめた日から120日の手続きが関わることがあります(くわしくは窓口で確かめます)。
- 今日できるのは、機械はそのままにして、親の書類箱から「届出」「特定施設」と書かれた控えを探すことです。
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。この仕事を20年続けてきて、宅地建物取引士として今は売主様の側だけに立っています。最初に言っておくと、土壌の調査や機械の値段は私には決められません。この記事で書くのは、窓口や専門の会社に何を持って行き、何を聞けばいいか。そして、家を売るときに何を残して何を外すか、です。
読みながら「うちの作業場、このまま見てもらってええのかな」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。機械が残ったままでも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「工場付きは売れへん」と言われたら——買う人は3種類いると知る
▶ 生野区の作業場で、電話をかけかけて
ここからは、架空の例で話を進めます。Aさんは54歳、吹田市に住む会社員です。実家は生野区の鉄骨2階建て。1階はお父さんが40年続けた金属加工の作業場です。旋盤が2台とボール盤、天井にはホイスト(重い物を吊り上げる小さなクレーン)があります。2階が住まいでした。
お父さんは昨年の暮れに工場を閉め、今年の夏に施設へ入りました。家は空き家です。Aさんは月に2回、窓を開けに通っています。シャッターを上げるたび、油の匂いと止まったままの機械が目に入って、気が重くなる。11月の土曜日、廃品回収の業者に電話しかけて、ふと手が止まりました。「この機械、先に捨ててええんかな」。
ここで手が止まったのは、正解だと私は思います。
▶ 買う人は3列に分かれる
工場付きの家を「売れない家」とひとまとめにすると、話はそこで終わります。でも実際には、買う人は大きく3つに分かれます。
| 買う人 | どう使うか | 見るところ |
|---|---|---|
| ①住む人 | 1階をガレージ・土間・部屋に直して住む | 住宅ローンが使えるか・油や匂いが残っていないか |
| ②建てて住む人 | 建物を解体して新しく建てる(建売の業者もここ) | 土地の形・前の道路・再建築の条件・解体にかかる費用 |
| ③作業場として使う人 | 近くの町工場・職人さん・事業をしている方が、作業場のまま使う | 動力の電気・床の強さ・天井の高さ・トラックが入れるか |
同じ家でも、①の人には「直すのが大変な1階」、③の人には「作業場として使える可能性のある家」です。実際に使えるかは設備の状態や法令上の条件を確認します。
▶ 生野・東成・平野は、③の人が近くにいることも
大阪市の各区の資料では、製造業の事業所の数は生野区が市内で1位、平野区が2位、東成区が5位とされています。元のデータは平成26年の経済センサスなので、少し古い数字です。町工場が多い地域なので、近くで作業場を探している人がいることもあります。
ただ、いつも③の人が見つかるとは限りません。1列に絞ると、その人が現れるまで待つことになります。3列すべてに届けておけば、買主様ごとの用途・建築条件・融資条件を確かめながら、売却の可能性を比べられます。
私は売却だけを扱っているので、3種類の買主様のどこか1つに絞らず、同じ情報をそろえて出せます。出し方は第6章で。
▶ 確かめるのは「工場の家の3枚」
自分の家が3列のどこに寄るかは、紙3枚で見分けられます。この記事では、機械を外す前に確かめる3つを「工場の家の3枚」と呼びます。
- 1枚目 親の書類箱にある「届出の控え」(第2・3章)
- 2枚目 機械・電気・床の「仕分け表」(第4章)
- 3枚目 「登記簿と課税明細」(第5章)
どれも機械に触らずに用意できます。次の章は、1枚目を探しに親の書類箱を開けるところから始めましょう。
第2章:親の書類箱で「特定施設」の控えを探す——土壌の手続きが関わる家か見分ける
▶ 怖いのは、対象かどうか分からないから
「工場の土地って、土壌汚染で調査がいるんちゃうの?」。Aさんも、ここがいちばん引っかかっていました。ネットで調べると、難しい法律の言葉と大きな金額の話が出てきて、余計に不安になる。
でも、工場だった土地がすべて同じ手続きの対象になるわけではありません。
▶ 手続きが関わるのは「届出の要る施設」を使っていた家
大阪府の案内では、次のように説明されています。水質汚濁防止法や下水道法で届出が要る「特定施設」のうち、有害物質を使うものを「有害物質使用特定施設」と呼びます。この施設の使用をやめると、土壌汚染対策法第3条により、土地の持ち主などに調査をして報告する義務が出ます。期限は、やめた日から120日以内とされています。府の条例(大阪府生活環境の保全等に関する条例 第81条の4)にも、施設をやめるときの調査の決まりがあります。
ここで1つ、思い込みやすいところがあります。120日の数え始めは、税務署に廃業の届けを出した日ではありません。その施設を使うのをやめた日です。土地の持ち主と工場の主が別の人なら、役所から通知を受け取った日から数えるとされています。自分の家の場合の数え方は、窓口で聞いてください。
分かれ目は、「お父さんが、届出の要る施設を使っていたか」です。旋盤で削るだけの工場なのか、めっきや洗浄、塗装で薬品を使っていたのか。どちらに当たるかは家ごとに違うので、私はここを決めつけません。確かめる先は窓口です。
▶ 書類箱で探す紙5つ
まずは、親が書類をしまっていた場所を開けてみてください。事務所の机の引き出し、2階の押し入れの段ボール、金庫。工場をやっていた方は、役所に出した紙の控えを箱ごと残していることもあります。
| 探す紙 | 表紙・中に書かれていそうな言葉 |
|---|---|
| ①特定施設の届出の控え | 「特定施設設置届出書」「使用届出」 |
| ②下水道の届出の控え | 「下水道」「排除」「除害施設」 |
| ③水質の届出・検査の紙 | 「水質」「排水」「水質汚濁防止法」 |
| ④有害物質の名前が入った紙 | 「有害物質」「トリクロロエチレン」などの薬品名 |
| ⑤薬品・塗料の伝票や納品書 | めっき液・洗浄剤・塗料・溶剤の名前 |
見つかっても見つからなくても、次の3つをメモしてください。
- 工場があった住所(地番まで分かれば地番も)
- 業種(例:金属の切削加工、板金、めっき、塗装)
- 使っていた薬品の名前(分かる範囲で。伝票の写真でもOK)
Aさんの場合、事務所の机から出てきたのは、切削油の納品書の束でした。「届出」と書かれた紙は見当たりません。それでも住所・業種・油の名前をメモして、週明けに電話してみることにしました。
▶ 窓口に持って行く・電話で聞く
大阪市内の土地なら、聞く先は大阪市環境局 環境管理部 環境管理課(土壌汚染対策グループ)です。大阪府の届出先の一覧では、大阪市内の土地は、法律の手続きも府の条例の手続きも、この課が受け持つとされています。府のページを先に見つけると府に電話したくなりますが、大阪市内は市の担当です。
電話で「父の工場の住所で、届出施設の記録があるか知りたい」と伝えれば、話は早いと思います。聞くことは、この3つで十分です。
- この住所に、届出の要る施設の記録がありますか
- 記録があった場合、やめた日から何をいつまでにすればいいですか
- 売る前に、持ち主として気をつけることはありますか
調査の費用や方法、「汚れているかどうか」は、ここではまだ考えなくて大丈夫です。対象かどうかが分かれば、次の道が決まります。
控えがあった家と無かった家で、売る段取りはどう変わるのか。次の章で2本の道を並べてみます。
第3章:控えがあった家・無かった家で、売る段取りはどう変わるか
▶ (a) 対象外と分かった家:ふつうの売却の道へ
届出施設の記録がないだけでは、土壌の手続きが不要とも、汚染がないとも判断できません。過去の使い方、薬品、漏れや埋設の情報、これから行う解体・掘削等も窓口に伝え、法と府条例の対象を確認します。必要な手続きがないと確認できた場合は、その確認結果を整理して売却を進めます。
ただし、工場として使っていたこと自体は、物件状況確認書(売主様が家の状態を買主様に伝える書類)にきちんと書きます。私が売るときは、引き渡したあとの不具合の責任を負わない約束(免責)で売るのが基本です。でも、売主様が知っていて書かなかったことには、その免責が効きません。だから「工場だった」「こんな薬品を使っていた」は、隠さずに書いたほうが売主様ご自身を守ることになります。
▶ (b) 届出施設があった家:120日の手続きの道
記録があった家は、施設をやめたあとの調査・報告の手続きが関わってきます。大阪府の案内では、期限の延長を申し出る方法も示されています。同じ工場として使い続ける場合などは、役所の確認を受けて調査が一時的に免除される仕組みもあります。その場合も定期的な土地利用状況の報告等が必要です。大阪市での提出時期と必要書類は担当窓口に確認します。
ただ同じ案内では、あとで別の使い方に変わると免除が取り消され、もう一度調査の義務が出るとされています。住む人や建てる人に売るなら、ここも窓口で聞いておいてください。
どれに当たるか、延長できるかを判断するのは窓口です。私が言えるのは「売り出す前に、自分の家がどの段階にいるかを窓口で聞いておく」まで。そのうえで、売り出す時期を一緒に考えます。
▶ (c) 大阪市の「区域」の台帳も見ておく
もう1つ、大阪市は、土壌の調査結果や健康被害のおそれに応じて「要措置区域」や「形質変更時要届出区域」等を指定し、告示しています。ここでは後者を例に説明します。土を掘ったり動かしたりするときに、届出が要る区域です。指定の解除も告示されていて、台帳は大阪市環境局 環境管理部 環境管理課で見られるとされています。
区域に入っている土地を売るときは、重要事項説明(契約の前に、買主様に大事なことを説明する手続き)で伝える事項です。第2章の電話のついでに、「この住所が区域に入っていないか」も聞いておくと二度手間になりません。
▶ まだ工場を続けている方へ
これを読んでいるのが工場をやっている本人の方なら、「止める日を決める前に、控えを持って窓口へ」。やめた日から時計が動く手続きがあるので、先に話を聞いておくほうが落ち着いて進められます。
土壌の見通しが立ったら、次は作業場の中です。
第4章:機械・電気・床を「残す・外す・聞く」に分ける——作業場で欲しい人を先に探す
▶ 先に全部片付けると、戻せないものがある
Aさんが廃品回収に電話しかけたのは、「きれいにしないと見せられない」と思ったからでした。
でも、動力の電気の配線や天井のホイストは、一度外すと元に戻すのにお金がかかります。③作業場として使う人にとっては、それが「すぐ使える」理由になることもある。反対に、①住む人や②建てて住む人には要らないものです。だから、外すかどうかは買う人が見えてから決めたほうがいい。私は売る前の大きな工事や撤去を、基本はおすすめしていません。
それに、家財の片付けは査定の前でなくて大丈夫です。機械や家財が残った状態でも査定はできます。ただし、撤去・処理費や引渡し条件によって売却価格や残るお金は変わるため、費用も一緒に見積もります。
▶ 仕分け表の作り方(30分あればできます)
- 作業場の中を、入口から時計回りにスマホで撮る
- 機械ごとに「名前(銘板の写真)」「動くか・動かないか・分からない」を書く
- 分電盤と検針票を撮り、「動力」の契約があるかを見る
- 床にピットやレールがあれば、場所と大きさをメモする
- 薬品・油の缶がどこに何本あるかを書く(中身が分からないものは「不明」でOK)
- 上の表の3列に振り分ける
動くかどうか分からない機械は、無理に動かさないでください。「未確認」と記録し、動作・安全性の確認を誰がいつ行うかも相談します。残す候補に入れた設備でも、使用可能を保証する意味ではありません。売るときは、付帯設備表(引き渡す設備とその状態を書く書類)に「動く・動かない・分からない」をそのまま書きます。
動力の電気の契約は、使っていなくても基本料金がかかる契約もあります。検針票で毎月いくらかかっているかを見て、続けるかどうかは、買う人の向きが見えてから決めても遅くないと思います。
▶ 撮り分けると、3列に届く
私は写真の撮影も内覧の立ち会いも、自分でやっています。工場付きの家なら、③の人向けには動力の分電盤や天井の高さ、トラックが入る間口を。①②の人向けには2階の住まいや土地の形を。同じ家でも、買主様ごとに見せたいところを撮り分けられます。
機械はお父さん個人の物か会社の物か、リースや所有権留保がないかを確認し、権限のある人と撤去・譲渡を決めます。薬品・油・廃液は自分で流したり混ぜたりせず、種類に対応する許可等を確認した処理業者に相談してください。廃棄物に当たる場合は処理委託契約やマニフェスト等も確認します。近くの廃品回収業者なら何でも任せられるわけではありません。
仕分け表ができたら、その写真を1枚だけLINEで送ってみてください。「この機械は残したほうがいい?」といった相談に、写真を見ながらお返事します。→ 公式LINEで相談する
作業場の中が整理できたら、次は①住む人と②建てて住む人に届くかを、書類で確かめていきます。
第5章:住まいの割合と用途地域を書類で見る——住む人と建てる人の線
3枚目は、登記簿と課税明細です。図面・現況と照合し、用途地域の地図も足して、①②の買主様に届く家かを紙の上で確かめます。資料を読むところから始められますが、用途別の面積や現況が分からない部分は専門家に確認します。
▶ 住まいと工場の割合を見る
Aさんが最初に開いたのは、毎年届く固定資産税の通知書でした。課税明細には、建物の「種類」の欄に「居宅」「工場」などと書かれていることがあります。登記簿(法務局で取れる、土地や建物の記録)でも、床面積と種類が分かります。
ここで見たいのは、建物全体のうち、住まいの部分がどのくらいあるか、です。
①住む人が住宅ローンを使うとき、この割合が効いてきます。たとえばフラット35では、住宅部分の床面積が全体の2分の1以上あることが条件です。融資の対象も住宅部分だけとされています。割合だけで利用は決まりません。戸建てでは住宅部分の床面積50㎡以上などの面積要件や技術基準、買主様の審査もあります。登記簿や課税明細だけで住宅部分の面積が分からない場合は、図面・現況を確認して金融機関や適合証明機関に相談します。売る側の税金でも、住まいの特例(3,000万円の特別控除)は原則として本人が住んでいた部分と対応する敷地が対象で、居住割合等による取扱いと適用要件を確認します(国税庁)。
このあたりは、店舗付き住宅の記事でくわしく書きました。税金の細かい計算は税理士さんに確かめてください。→ 店舗付き住宅の住まいの割合と税金
▶ 用途地域で、作業場を続けられるかの手がかりを見る
用途地域(どんな建物を建ててよいかを決めた土地の区分)は、大阪市の都市計画の地図か、市の窓口で確かめられます。大阪府の地図は大阪市が対象外なので、市のほうで見てください。
住宅向けの地域なのか、工場も建てられる地域なのか。これは③作業場として使う人が「ここで仕事を続けられるか」を考える手がかりになります。ただ、今の建物で作業場をどこまで続けられるかは、用途地域だけでは決まらないことがあります。気になるときは、建築の窓口で確かめてください。
▶ 建てて住む人には「解体」の線を
②建てて住む人は、建物を壊すことが前提です。建物の解体・改修では、原則として規模にかかわらず石綿(アスベスト)の事前調査が必要です。「解体部分の床面積の合計80㎡以上」は、調査そのものではなく結果の報告対象となる基準の一つです。改修等にも別の報告基準があります。元請業者等に、工事に応じた有資格者による調査と必要な報告を確認してください(報告制度は2022年4月から)。古い鉄骨の工場だと、屋根や壁の材料を気にされる買主様もいます。
ただ、だからといって売る前に壊す必要はありません。壊してから売るか、そのまま売るかの考え方は、こちらの記事に書いています。→ 古家付きと更地渡しの比べ方
工場の部分をあとから建て増して、登記していない場合もあります。課税明細と登記簿の床面積が合わないときは、こちらの記事を見てください。→ 未登記の増築がある家の確認
▶ 名義がお父さんのままなら
Aさんの家のように、親が存命で名義も親のままなら、売るのは名義人のお父さんです。子どもが窓口になって進める形もよくあります。私の場合は、媒介契約(売却を任せる契約)の段階で、司法書士さんと一緒に親御さんに会いに伺うことが多いです。
3枚がそろうころ、「工場用地としてうちが買います」という話が来ることがあります。次の章は、そのときの考え方です。
第6章:「工場用地として買います」と言われたら——提示額と仲介を並べ、3種類に広く出す
▶ 買取が向く家もある
工場の家には、ポストに「工場・倉庫用地を探しています」というチラシが入ることがあります。知り合いの業者から声がかかることもあるでしょう。早く現金にしたい、機械も薬品もまとめて任せたい。そういう場合は、買取(不動産会社などが直接買い取ること)が向く家もあります。
私は自分で買い取ることはしません。ただ、売主様が買取を望まれるときや、買取のほうが売主様のためになるときは、できるだけ高く買ってくれる買取業者を探します。
▶ 提示額は「3つの数字」で並べる
提示を受けたら、仲介で売った場合と、次の3つを横に並べてみてください。
| 比べる項目 | 買取の提示 | 仲介で売った場合 |
|---|---|---|
| いくらで | 提示額 | 査定額(3〜4社の幅で見る) |
| 何か月で | 提示の決済時期 | 売買契約までと決済・入金までの目安 |
| 手元にいくら | 提示額から撤去費・手数料などを引いた比較用の概算 | 成約見込み額から手数料・撤去費などを引いた比較用の概算 |
この表の概算は、税金・ローン残債・未計上費用を引く前で、最終手取りではありません。双方で同じ費用項目をそろえ、最終的に残るお金と入金日を比べます。工場の家で差が出やすいのは、3行目の撤去費です。機械等を残す条件か、外してから引き渡す条件か。薬品・廃液等の廃棄物処理は、不動産の買取合意だけで適法に任せられるとは限らず、処理責任・許可・方法を別に確認します。第4章の仕分け表を横に置くと、同じ物差しで比べられます。
並べ方のくわしい手順は、こちらの記事に5行の表で書いています。→ 業者買取と仲介の比べ方
査定を3〜4社にするのは、2社だとどちらが普通なのか分かりにくいからです。
▶ 3種類に届けるために、囲い込みはしない
仲介で売るときは、レインズとSUUMOに載せて、①②③の3列すべてに届けます。レインズは、不動産会社どうしで物件の情報を共有する仕組みです。
ここで気をつけたいのが囲い込みです。囲い込みは、売却を任された会社が物件を抱え込んで、他社からの購入希望を通さないこと。工場の家でこれが起きると、どうなるか。たとえば1社が、自分のところの「工場用地を探している業者」にだけ話を回す。すると、住みたい人や建てたい人の目には入りません。3列のうち2列が、最初から消えてしまうんですね。
私は囲い込みをしません。他社からの問い合わせも、売主様への報告書に書いてお伝えしています。実際に、レインズを通じて他社様から購入希望のお客様をご紹介いただいて成約したこともあります。
迷いが残っている方のために、次の章ではよくいただく質問に答えていきます。
第7章:よくある質問
▶ 「工場付きは売れへんって親戚に言われました。本当ですか?」
工場付きだから売れない、とは限りません。買う人は、住む人・建てて住む人・作業場として使う人の3種類います。どの人に寄る家かは、土地の形や前の道路、住まいの割合で変わります。親戚の一言で止まる前に、一度査定で確かめてみてください。
▶ 「機械が残ったまま査定を頼んでいいですか?」
はい、そのままで構いません。むしろ、そのままのほうが「何を残すと価値になりそうか」を一緒に見られます。第4章の仕分け表や、機械の一覧があると話が早いです。
▶ 「父がまだ工場を続けています。閉める前にできることは?」
止める日を決める前に、届出の控えを持って窓口へ行ってみてください。大阪市内なら、第2章の環境管理課です。家の値段の目安を聞くのも、閉める前からできます。
▶ 「土壌の調査はいくらかかりますか?」
家ごとに違うので、私からは言えません。まずは第2章の窓口で「対象かどうか」を確かめてください。法等に基づく調査が必要なら指定調査機関に依頼します。見積もりを頼むときは、次の3つを聞くと比べやすくなります。
- 何を・どこまで調べる見積もりですか(調べる範囲と項目)
- 結果が出るまでに何週間かかりますか
- 報告書は窓口に出せる形でもらえますか
最後に、今日からやることをまとめます。
第8章:まとめ+次のアクション
▶ 今日できること(1つ)
機械には触らずに、親の書類箱から届出の控えを探してください。見つからなければ、「探したけど無かった」とメモするだけでOKです。それも窓口で聞くときの立派な材料になります。
▶ 1週間以内にすること
- 第4章の仕分け表を作る(スマホの写真と紙1枚で十分です)
- 共有する家族(Aさんなら妹さん)に、写真と仕分け表を送る。きょうだいで進めるときの考え方はこちら → きょうだいで実家を売る前の話し合い
- 大阪市環境局 環境管理課に、「この住所に届出施設の記録があるか」「区域に入っていないか」を電話で聞く
▶ 相談したくなったら
ここまでの作業は、この記事だけで進められます。そのうえで「うちの家は、3列のどこに寄りそう?」と思ったら、公式LINEで声をかけてください。
送ってもらうのは「家がある区の名前」と「仕分け表の写真」だけで十分です。売るかどうか、まだ決める必要はありません。
相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。
▶ 次に読むなら
- 住まいの割合や税金をもう少しくわしく知りたい方へ → 店舗付き住宅の住まいの割合と税金
- 工場用地として買取の提示が来た方へ → 業者買取と仲介の比べ方
- 建てて住む人に向きそうで、解体するか迷っている方へ → 古家付きと更地渡しの比べ方
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
親が何十年も働いてきた作業場には、機械の一台一台に思い出が残っています。油の匂いも、使い込まれた作業台も。それを「片付けないと売れない荷物」としてだけ見るのは、なかなかしんどいことだと思います。
でも、その作業場をそのまま使いたい人が、どこかにいるかもしれません。住む人や建てる人に届くこともあります。急いで捨てる前に、書類箱を1つ開けるところから始めてみてください。Aさんのように手が止まったその土曜日が、親の家を納得して次の人に渡すための、最初の一日になりますように。
制度の確認先(2026年10月30日確認):大阪市・土壌汚染対策 / 大阪府・施設廃止時の手続き / 環境省・石綿調査の報告 / フラット35・技術基準 / 大阪市・事業系ごみの適正処理

















