大阪市の店舗付き住宅を売る|厨房と看板を外す前に決める順番
2026/10/06
シャッターの閉まった1階に、鉄板とカウンターがそのまま残っている。風通しに行くたびに、商店街の人から「この家、どうするの?」と聞かれる。とりあえず業者を呼んで全部外してもらおうか…と、スマホで撤去業者を探しかけている方もいるかもしれません。
この記事は、大阪市で店を閉めた親御さんの家(1階が店・2階が住まいの「店舗付き住宅」)を相続した方に向けて書いています。厨房や看板を外す前に、何をどの順番で決めればいいのかが分かります。
この記事で分かること
・店舗付き住宅には「住む人」と「店を開く人」の2種類の買主がいること
・住まい部分の割合を、手元の書類で測るやり方(1/4・1/2・90%の3本線)
・厨房・看板などの設備を「残す・外す・買主に聞く」に仕分ける方法
・商店街の家だけにある確認ごとと、閉店のあとに動くお金の話
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。売るかどうか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「店の付いた家は売れない」と言われたら、まず買主が2種類いると知る
▶ 日曜の夕方、環状線の車内で
ここからは想定の例として、Aさん(仮名・52歳)の話から始めさせてください。お父さんは生野区の商店街で、長くお好み焼き屋をやっていました。3年前に店を閉め、2階で一人暮らしを続けたあと、去年の秋に亡くなりました。相続人はAさんと、東京にいる弟さんの2人です。
月に一度、吹田のマンションから実家に風を通しに行くAさん。この前、向かいの八百屋さんに言われたそうです。「ここ、店ごと買いたい人おるんちゃう?」。帰りの環状線で「店舗付き住宅 売却 大阪」と検索してみたものの、出てくるのは「売却は可能です!」という似た記事ばかり。肝心の「鉄板を外してから売ったほうがいいのか」は、どこにも書いていません。
もしあなたも似た場面にいるなら、業者に電話する手を、いったん止めてみてください。
▶ 売りにくいと言われる3つの理由
店舗付き住宅が「売りにくい」と言われるのには、ちゃんと理由があります。
1. 買主が限られる:ふつうの家を探している人の多くは、1階に厨房のある家を最初から候補に入れません
2. 買主のローンが限られる:住宅ローンは「住むための家」に貸すお金です。店の部分が大きいと、借りられる額や借り方に制限が出やすくなります
3. 設備の扱いが決まっていない:鉄板・ダクト・看板を付けたまま売るのか、外すのか。そこが決まっていないと、買主は値段を考えられません
逆に言えば、この3つに順番に答えていけば、売り方は組み立てられます。1は第2章、2は第3章、3は第4章で一つずつ見ていきます。
誰に売るか、住まいの割合はどれくらいか、設備をどう仕分けるか。この記事では、この順番を「外す前の3段」と呼びます。撤去業者に電話するのは、3段目が終わってからでも遅くありません。
▶ 大阪市には「空いている家」が多い。だから順番が大事
大阪市の空き家は29万4,600戸。住宅全体の16.1%、およそ6軒に1軒です(令和5年住宅・土地統計調査)。Aさんの実家がある生野区だけでも、空き家は2万890戸あります。
出典:大阪市・令和5年住宅・土地統計調査の概要。賃貸用なども含む空き家全体の数字で、店舗付き住宅だけの数ではありません。
空いたままの家が多い街で買主に選んでもらうには、「誰に向けて売るか」を先に決めておきたいところです。店舗付き住宅の場合、その「誰」が2種類いる。ここが、ふつうの家と一番違うところです。
じゃあ、その2種類の買主とは誰なのか。次の章で、あなたの家がどちらに向くのかを一緒に見ていきましょう。
第2章:買うのは「住む人」か「店を開く人」か——自分の家の買主像を2列で描く
▶ 住む人は「店の部分を住まいに直す前提」で見る
住む人は、1階の店部分をリビングや駐車スペースに直すつもりで内覧に来ます。気にするのは「直したらいくらかかるか」と「住宅ローンが使えるか」の2点です。
この買主にとって、厨房の設備はたいてい外すもの。ただし、外す費用を誰が持つかは交渉で決まります。売主様が先に撤去費を払うと、両方に売れたかもしれない家を、自分で片方に絞ることになります。
▶ 店を開く人は「居抜き」を探している
もう一方の買主は、そこで商売を始めたい人です。飲食店・美容室・教室など、業種によっては「居抜き」を好みます。居抜きとは、前の店の内装や設備が残ったままの状態のこと。開店にかかる費用と時間を抑えられるからです。
この買主が見るのは、人通り・間口・用途地域、そして設備が動くかどうか。用途地域とは、その土地で建てられる建物や開ける店の種類を決めた、市のルールです。お好み焼き屋の鉄板やダクトは、同じ業種の人には「ありがたい」設備になりえます。
▶ 自分の家はどっち? 立地と間口で分ける目安
ここからは私の見立てで、決まったルールではありません。目安として使ってください。
・商店街の中ほど・間口が広い・人通りがある → 両方に売れる可能性がある。設備は外さず、買主に聞く余地を残す
・商店街の外れ・間口が狭い・住宅街に近い → 住む人に寄りやすい。それでも撤去は売り方が決まってから
・アーケードの真ん中・1階がほぼ全部店 → 店を開く人に寄りやすい。住宅ローンが使いにくい点は第3章で確認
Aさんの実家は商店街の中ほどで、間口は2間(約3.6m)ほど。どちらにも可能性がある家です。
▶ 2種類の買主に、同じ情報を届ける
買主が2種類に分かれる家は、届け方も大事になります。私は売却だけを扱っています。だから、住まいを探している買主様にも、店を探している買主様にも、同じ情報をお出しします。他の不動産会社を通じて来た方にも同じです。この話は第7章でくわしく書きますね。
さて、「住む人」が買主になるなら、住宅ローンが使えるかが気になってきます。その答えは、住まいの部分の「割合」で変わります。次の章で、手元の書類を使って測ってみましょう。
第3章:住まい部分の割合を書類で測る——1/2・90%・1/4の3本線

「割合」と聞くと身構えるかもしれませんが、使うのは小学校の割り算だけです。まず概算の割合を出し、買主のローン・固定資産税・税金の特例をそれぞれ確認します。3つは別の制度なので、同じ割合を出すだけで借入れや特例の適用が決まるわけではありません。
▶ 用意するもの3つ
・登記事項証明書(法務局で取れる、建物の登記の内容を書いた書類):「種類」の欄に「店舗・居宅」などとあります。「床面積」の欄には1階・2階の面積が載っています
・固定資産税の課税明細書(毎年春に届く納税通知書に付いている明細):家屋の床面積と種類が載っています
・建てたときの図面(あれば):店と住まいの境目を確かめるのに使います
登記事項証明書は、相続登記の準備で取っている方も多いはず。課税明細書は、親御さんの郵便物の中から今年の分を探してみてください。
▶ 見る欄と、計算のしかた
手順はこうです。
1. 登記事項証明書か課税明細書で、建物全体の床面積を書き出す(1階+2階)
2. 図面か実際の間取りで、店として使っていた部分(客席・厨房・レジまわり)の面積を出す
3. 全体から店の部分を引いて、住まいの面積を出す
4. 住まいの面積 ÷ 全体の床面積 を計算する
Aさんの実家で試してみます。1階が50㎡で、そのうち表の店が40㎡、奥の台所と浴室が10㎡。2階の住まいが30㎡です。
全体は50+30=80㎡。住まいは10+30=40㎡。40÷80で、住まいの割合はちょうど50%です。
「ちょうど半分? それって良いの、悪いの?」と思った方。この50%は、次に見る3本の線のうち2本の、まさに真上にあります。
ひとつ注意があります。トイレや階段のように、店と住まいの両方で使っていた場所は、どちらに数えるかで割合が動きます。ここは自分で決めつけず、計算した数字を「仮の数字」として持っておいてください。
▶ 3本の線に当ててみる

① 1/2の線:フラット35の割合条件。最低面積も確認する
住宅金融支援機構のフラット35(長期固定金利の住宅ローン)には、店舗付き住宅向けの条件があります。住宅部分の床面積が、全体の1/2以上であること。しかも貸してもらえるのは住宅部分だけです。銀行の住宅ローンは銀行ごとに条件が違うので、ここでは条件が公開されているフラット35を目安にしています。ただし、割合だけでは判断できません。2026年10月時点の利用条件では、戸建て・連続建て・重ね建ては住宅部分の床面積50㎡以上も必要です。Aさんの家は割合が50%でも住宅部分が40㎡なので、この想定のままでは面積条件を満たしません。技術基準や買主の審査も別にあります。売り方を決める前に、図面と現況を金融機関へ見せて確認しましょう。
② 1/4と1/2の線:固定資産税の住宅用地の率
住宅が建っている土地は固定資産税が軽くなります(住宅1戸当たり200㎡までの住宅用地は、税金を計算するもとの額が6分の1に)。大阪市の案内では、4階建て以下の店舗付き住宅の場合、こう決まっています。住まいの割合が1/4以上1/2未満なら土地の半分(0.5)、1/2以上なら土地の全部(1.0)が住宅用地です。1/4未満だと、この軽減の対象になりません。ここで対象にできる敷地は家屋の延べ床面積の10倍までです。また、率1.0は「対象となる土地の割合」で、土地全部の税額が一律に6分の1になるという意味ではありません。
Aさんの家の50%は、ここでも0.5と1.0の境目の上です。市がどう判定しているかは、第6章でお伝えするとおり市税事務所で確かめてください。
③ 90%の線:居住用の3,000万円控除
国税庁の案内では、住んでいた部分が全体のおおむね90%以上なら、全体を住まいとして特例を使えるとされています。おおむね90%未満でも、自分が住んでいた部分については要件を満たせば特例を使える余地があります。90%は特例の入口ではなく、全体を居住用として扱えるかの目安です。共用部分の按分や他の要件も確認します。ただしこれは「自分が住んでいた家を売る人」のための線です。親御さんがまだ住んでいて、親御さん自身が売る場合に関係してきます。Aさんのように相続した家の場合は、別の特例(空き家特例)の話になるので、第6章で触れますね。
▶ 登記と実際が違ったら
測ってみたら、「登記の床面積と、実際の広さが合わない」という家もあります。店を広げたときに増築して、登記をしていないケースです。その場合は、先にこちらを読んでおくと慌てずにすみます。
→ 未登記の増築がある大阪市の戸建てを売る|売り出し前に見比べる3枚 未登記の増築がある大阪市の戸建てを売る|売り出し前に見比べる3枚
ご自分の家がどれに当たるか分からないときは、LINEで状況を2〜3行送ってください。たとえば「生野区の商店街で、1階が父のお好み焼き屋だった家です。鉄板とカウンターがそのままなんですが、外してから売ったほうがいいですか?」くらいで大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
割合が分かったら、いよいよ1階の設備です。次の章では、厨房や看板を一つずつ仕分けていきます。
第4章:厨房・ショーケース・看板を「残す・外す・買主に聞く」に仕分ける
▶ 鉄板の前で手が止まる
Aさんが一番迷っていたのが、店の真ん中にある鉄板付きのカウンターでした。お父さんが毎日磨いていたもので、外すのは寂しい。でも、残しても誰が使うのか分からない。弟さんに聞いても「姉ちゃんに任せる」だけ。
こういうときは、思い出の重さとは別に、「買主にとってどうか」で一度並べてみると整理しやすくなります。
▶ 設備の3仕分け表

| 仕分け | 判断のしかた | 例 |
| 残す | 動く・買主に価値がある・外すと元に戻しにくい | 換気ダクト、給排水の配管、グリストラップ(排水から油を分ける装置) |
| 外す | 危険・故障・衛生問題は専門家へ相談し、撤去の要否を決める | 故障機器や腐敗物など。食品処分と本体撤去は分け、ガス機器はガス会社に確認 |
| 買主に聞く | 人によって「宝」にも「ゴミ」にもなる | 鉄板、カウンター、看板、テント |
手順は簡単です。店の設備を端から写真に撮り、ノートに設備名を書き出します。そこに「動くか」「危なくないか」「人によって価値が変わるか」の3つの丸をつけていくだけ。丸のつき方を見て、3つの列に仮仕分けします。未確認なら未確認と書き、残す物・外す物の最終決定は買主とも確認して、撤去する人・費用負担・期限を契約書類に残します。
▶ 「外す」の前に、安全・所有者・リースを確認する
まず、設備が家の所有者の物なのか、リース品・貸与品ではないかを契約書や銘板で確認します。相続人間の意向もそろえ、自分たちの判断だけで返却や処分をしてよい物かを確かめてください。
ガス機器や中身の残った冷蔵庫は、安全と衛生のために早めに手を打ちます。ただし、ガス機器だから全部外すということではありません。ガスの停止や切離しはガス会社に確認し、食品などの中身の処分と、冷蔵庫本体の撤去は分けて考えます。業務用の冷蔵・冷凍機器でフロン類を使う物を廃棄するときは、回収などの手続きもあるため専門業者に相談します。
一方、鉄板やカウンターのような「買主に聞く」の列は、売り方が決まるまで待ちます。撤去の見積りも、このタイミングで取れば十分です。先に外してしまうと、居抜きで探している買主が来たときに、もう戻せません。ここは家財の片付けと同じ考え方です。家財の片付けの順番は、こちらで書いています → 大阪市の実家を不動産売却する際に残置物を先に処分すると損する3つの理由
▶ 残すなら、付帯設備表にこう書く
設備を残して売るときは、「付帯設備表」(売る家に何が付いていて、それが動くかどうかを書く書類)に正直に書きます。たとえば、こんな書き方です。
・換気ダクト:有・2023年の閉店まで使用。閉店後の状態・動作は未確認
・鉄板(カウンター一体):有・閉店後は未使用のため動作未確認
・冷蔵ショーケース:撤去予定(引渡しまでに売主が撤去)
あわせて、雨漏りやシロアリなど家の状態を書く「告知書」(物件状況報告書)も書きます。私が販売するときは、この2枚を売主様と一緒に、できるだけ細かく確かめるようにしています。
というのも、免責の特約を付けて売る場合でも、効かない部分があるからです。免責とは、引渡し後の不具合の責任を売主様が負わない約束のこと。売主様が知っていて書かなかったことには、その免責が効きません。「閉店してから鉄板に火を入れていない」「ダクトの奥は掃除していない」。知っていることは、そのまま書いておく。それが結局、売主様を守ることになります。
設備の仕分けができたら、次は商店街の家ならではの確認です。売り出してから「え、それも?」とならないように、次の章で洗い出しておきましょう。
第5章:商店街の家だけにある確認——看板・テントの越境、組合、用途、増築

ふつうの住宅街の家ではあまり出てこない、「商店街の家ならでは」の確認ごとがあります。チェックリストにしたので、売り出す前に一度目を通しておいてください。それだけで、あとの慌て方がまったく違ってきます。
▶ アーケードの下で見上げてみる
次に実家へ行ったら、店の前に立って上を見上げてみてください。看板、テント、ひさし。毎日見ていたはずなのに、「どこまでが自分の家なのか」は意外と意識していなかったりします。商店街の家は間口が狭く、隣と壁がくっついていることも多い。だからこそ、境目の確認が大事なんです。
▶ 商店街の家のチェックリスト
□ ① 看板・テント・ひさしが、道路や隣の家にはみ出していないか
道路の上に出ている看板やテントには、許可を取って出しているものもあります。許可の書類があれば探しておきましょう。隣の敷地にかかっている場合は、売るときに「越境」(建物や物が境界を越えていること)として買主に伝える必要が出てきます。越境と言われたときの分け方は、こちらで書いています → 「屋根が越境しています」と言われた大阪市の家|売る前に外せる・直せる・直せないに分ける
□ ② 商店街の組合やアーケードの負担金・退会の手続き
商店街によっては、組合の会費やアーケードの維持費を負担していることがあります。決まりは商店街ごとに違います。組合の事務局に「父の名義で何か払っていましたか」「売るときに必要な手続きはありますか」と、一度聞いておいてください。
□ ③ 用途地域で、開ける店の種類が変わる
「店を開く人」に売る場合、その土地の用途地域で開ける業種が変わります。大阪市の地図サイト「マップナビおおさか」(https://www.mapnavi.city.osaka.lg.jp/osakacity/ )なら、住所から用途地域を調べられます。市も「参考図」としている地図なので、正式な確認は市の窓口で。調べた画面をメモしておけば、買主への説明の下書きにそのまま使えます。
□ ④ 店の改装・増築が、登記と合っているか
店を広げたり、奥に部屋を足したりしていると、登記と実際が違うことがあります(第3章のリンク先の記事を参照)。建てたときの検査済証が見つからない家もあるでしょう。工事のあと、役所や検査機関の検査に合格したことを示す書類です。見つからなくても、進め方はあります。→ 検査済証がない大阪市の戸建てを売る|買主のローンから逆算して取る2枚
□ ⑤ 隣と壁を共有する「連棟」かどうか
商店街には、隣の家と壁や屋根がつながった連棟の建物も多くあります。連棟の場合は、建て替えや解体のときに隣の家との話し合いが必要になるので、買主が気にするポイントです。わかる範囲で「隣とつながっているか」をメモしておきましょう。
▶ 遠くに住んでいても進められる
このチェックリスト、全部を自分の足で確かめるのは大変ですよね。Aさんのように吹田から通う方もいれば、弟さんのように東京にいる相続人もいます。
私の事務所は新大阪にあるので、生野区や東成区、西成区のような商店街の多い区へも伺いやすい距離です。相談はLINEや電話で受けて、現地の確認は私が伺う、という進め方もできます。大阪に来る日と任せる日の分け方は、こちらで書いています → 遠方から大阪市の実家を売る|大阪に来るのは何回?来る日と任せる日
物の確認が終わったら、次はお金です。店を閉めたあとに動く税金や支払いを、次の章で整理しましょう。
第6章:閉店のあとに動くお金——固定資産税・空き家特例・消費税・買取の提示
▶ ① 固定資産税:1月1日の状態で決まる
固定資産税は、毎年1月1日時点の持ち主と状態を基準に、その年度分を判定します。たとえば2027年1月1日の状態は2027年度分の判定に関係します。第3章で見たとおり、店舗付き住宅の土地の税額は「住まいの割合」で変わります。
店を閉めただけで率が変わるのかどうかは、家によって扱いが違う可能性があるので、市税事務所に確認してください。また、年内に店部分を住まいに改装すると割合が変わることもあります。改装するか、そのまま売るかを、年末までに考えておくと落ち着いて動けます。用途変更や増改築などがあった場合は住宅用地の申告も必要なので、市税事務所で手続きと期限を確認してください。
固定資産税と売る日の関係は、こちらで書いています → 大阪市の家を売る日の固定資産税|4月1日から数える?契約前に見る1行
空き家の状態が続いたときに市から届く通知については、こちらです → 空き家の通知が届いた大阪市の実家、年内に何を決める?段階と4択
▶ ② 空き家特例:使えるかどうかを「聞く」
親御さんが住んでいた家を相続して売るときには、「空き家特例」が使えることがあります。相続した空き家を売ったときに、利益から最大3,000万円を差し引ける特例です。期限は「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」と、制度の適用期限である2027年12月31日の両方を満たす必要があります。2024年以後の譲渡で、対象の家屋と敷地の両方を相続等で取得した相続人が3人以上なら、控除上限は1人当たり2,000万円です。
Aさんのお父さんは2階に一人で住んでいましたが、それだけで対象と決まるわけではありません。相続直前に主として居住用だった家屋に当たるか、店部分がその時どう使われていたかも確認します。ただし、昭和56年5月31日以前に建てられた家であることなど、ほかにも条件があります。そのうえで、1階の店の部分にまで使えるのかどうかは、家ごとの事情で答えが変わります。私が勝手に「使えます」とは言えない部分なので、この記事では「使えるかどうかを税理士さんに聞くこと」だけをお伝えします。
さらに、相続後から譲渡まで事業・貸付け・居住に使わないことなどの条件があります。「売れるまで店を貸す」「短期間だけ再開する」を先に進めると特例を使えなくなる場合があるため、先に税理士へ確認してください。耐震基準への適合または取壊し等、売却代金1億円以下、確定申告などの条件もあります。
Aさんの相続は2025年という想定なので、個別期限は2028年末ですが、現行制度の適用期限は2027年末です。延長を前提にせず、早いほうから逆算します。売出しだけでなく譲渡までの予定を立てましょう。
▶ ③ 消費税:親御さんが納めていた事業者なら確認を
親御さんが店で消費税を納める事業者だった場合、建物の店部分を売るときに消費税の話が出てくることがあります。相続した人の状況によって扱いが変わるので、ここも税理士さんに確認してください。
▶ 税理士さんに聞く3つの質問
長年この仕事をしてきて、感じることがあります。税理士さんに相談するときは、「何を聞くか」を先に書いておくと、話がぐっと早く進むんです。そのまま持って行けるように、3つにまとめておきます。
1. 「父が一人で住んでいた店舗付き住宅で、建てたのは昭和◯年、閉店と相続は◯年です。空き家特例の対象になりますか。店の部分の扱いと、うちの譲渡期限も教えてください」
2. 「父は消費税を納める事業者でした。建物の店部分を売ったら、相続した私やきょうだいに消費税はかかりますか?」
3. 「住まいの割合は(第3章で出した数字)%です。この割合で、税金の計算は変わりますか?」
このメモに、登記事項証明書と課税明細書のコピーを添えて持って行けば十分です。建てた年は、登記事項証明書の「原因及びその日付」の欄で見当がつきます。きょうだいで相続した家の進め方は、こちらにまとめています → きょうだいで相続した大阪市の実家、「全員の同意」の前に揃える4つの材料
▶ ④ 「うちで買い取ります」と言われたら
店舗付き住宅は、買取業者から「現状のままで買い取ります」と声がかかることがあります。撤去も片付けもいらないので、心が動くのは自然なことです。
ただ、その提示額だけを見て決めるのはもったいない。仲介で売った場合の見込みと並べてから決めてください。私は自社で買い取ることはしません。ただ、売主様が買取を希望されるときや、そのほうが売主様のためになるときは、高く買ってくれる業者を探します。そのうえで、仲介の見込みと並べてお見せします。並べ方は、こちらで書いています → 大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行
お金の整理ができたら、最後は「どう見せて、誰に届けるか」です。次の章で、不動産会社に確認しておきたいことをまとめます。
第7章:情報の出し方で売れ方が変わる——店の部分をどう見せ、誰に届けるか
▶ 買主が2種類いる家ほど、情報を広く出す
第2章で見たとおり、店舗付き住宅の買主は「住む人」と「店を開く人」に分かれます。どちらの買主も、1社の不動産会社のお客さんの中だけにいるわけではありません。
だからこそ、売り出した家の情報はレインズに登録して、他の不動産会社にも広く見てもらう。そこが出発点です。レインズとは、不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組みのこと。もし1社が情報を抱え込んでしまうと、ただでさえ少ない買主に届きません。売れるまでの時間も、値下げの幅も、売主様の負担になります。
▶ 不動産会社に聞いておきたい3つの質問
「囲い込みはしないですか?」とストレートに聞くのは、少し気が引けるかもしれません。そんなときは、次の3つを聞いてみてください。
1. 「レインズには、いつ登録してもらえますか? 登録した証明の書類はもらえますか?」
2. 「他の不動産会社から『この家を見たい』と言われたら、どう対応されますか?」
3. 「他の会社の買主さんから申込みが入ったら、自社の買主さんと同じ扱いにしてもらえますか?」
答えがはっきりしている会社なら、まず安心していいと思います。レインズへの登録をご自分で確かめる方法は、こちらで書いています → 不動産売却時のレインズ登録は自分で確認できる?透明性と確認手順を詳しく解説
▶ 写真は「住む人向け」と「店を開く人向け」で撮り分ける
店舗付き住宅の販売で、私が特に大事だと思っているのが写真です。同じ家でも、見る人によって知りたい場所が違うからです。
・住む人向け:2階の部屋、奥の台所と浴室、日当たり、収納。店部分は「直したらこれくらいの広さが使える」と分かる引きの写真
・店を開く人向け:表の間口と人通り、看板の位置、厨房の設備、ダクトや給排水の位置
私は写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、自分でしています。Aさんの家のような家なら、2種類の買主それぞれに向けた写真と図面をそろえます。どちらの方が見ても「自分のための家だ」と思える資料にするためです。
そして、その写真・図面・付帯設備表・告知書のセットは、他の不動産会社を通じて来た買主様にもお渡しします。中身はまったく同じものです。申込みが入ったときの扱いも、自社の買主様か他社の買主様かで変えません。私は囲い込みをしません。買主が2種類に分かれる家ほど、それが売主様のためになると考えているからです。
ここまでで、決めることと順番はそろいました。最後の章で、今日からできることにまとめます。
第8章:まとめと次のアクション
▶ 覚えておきたい3行(外す前の3段)
・買主を2列で考える:あなたの家を買うのは「住む人」か「店を開く人」か、または両方か
・割合を書類で測る:住まいの割合が、1/4・1/2・90%のどの線の上にあるか
・外すのは売り方が決まってから:危険・衛生問題は専門家へ先に相談。所有者・リースを確認し、鉄板や看板は買主とも相談
▶ 今日できること
・登記事項証明書か固定資産税の課税明細書を探して、建物全体の床面積を書き出す(登記事項証明書は法務局でも取れます)
・次に実家へ行ったとき、店の設備を端から写真に撮る(スマホで十分です)
▶ 1週間以内にすること
・撮った写真を見ながら、設備を「残す・外す・買主に聞く」の3仕分け表に書き込み、きょうだいと共有する
・第6章の「税理士さんに聞く3つの質問」をメモにして、相談の予約を入れる
・商店街の組合に、負担金や手続きがあるかを一度聞いておく
▶ 相談したくなったら
物件の住所(だいたいで結構です)と、1階の店の写真を2〜3枚。それだけ送っていただければ、どちらの買主に向く家かの見立てから受けます。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。→ 公式LINE(友だち追加)公式LINEで相談する
お電話の場合は 06-6842-7377(10:00〜19:00・水曜定休)へどうぞ。
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
店を閉めた親御さんの家には、鉄板の焦げ跡やカウンターの傷のひとつひとつに、家族の時間が残っています。だからこそ、「早く片付けなきゃ」と焦る気持ちも、「外すのは寂しい」という気持ちも、どちらも自然なものだと思います。
全部を一度に決めなくて大丈夫です。今日は床面積を書き出すだけ、次は写真を撮るだけ。それだけでも、撤去業者に電話する前に、ちゃんと一歩進んでいます。
お父さんやお母さんが長く守ってきた店が、次の誰かの暮らしや商売につながっていく。そんな手放し方ができるように、この記事が少しでもあなたの役に立てばうれしいです。












