セットバックが要る大阪市の家を売る|後退済みかを確かめる順番
2026/10/07
査定書の価格の横に、小さく「要セットバック 約2.6㎡」。担当者からは「道が細いので、買取のほうが早いかもしれませんね」と言われた。…いくらで売れるのかを聞きたかっただけなのに、モヤモヤが残ったまま、という方もいるかもしれません。
この記事は、大阪市内で前の道が4m未満の家を売ろうとしている方に向けて書いています。売り出す前に「後退が済んでいるか」「何㎡減るか」をどの順番で確かめればいいのかが分かります。
この記事で分かること
・「セットバックが要る」は「建て替えできない」ではない、ということ
・大阪市の道の名前(2項道路・附則5項道路・建築線道路)の調べ方
・後退が済んでいるかを、現地と書類で見当をつけるやり方
・減る面積を自分で計算する式と、査定・広告での扱われ方
・壊すか建てたまま売るか、「買取しかない」と言われたときの聞き方
書いているのは、大阪市淀川区・新大阪で家の「売却」だけを扱っている株式会社ヒーローズプロパティの紙谷一徳です。業界に入って20年、宅地建物取引士として売主様の側で仕事をしてきました。写真撮影も販売図面づくりも内覧の立ち会いも、私が自分でしています。
読みながら「うちの場合は?」と思ったら、公式LINEに一言どうぞ。売るかどうか決める前でも大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
目次
第1章:「セットバックが要る」は、建て替えできないという意味ではない
▶ 帰りの阪急電車で
想定の例として、Aさん(仮名・52歳)の話から始めさせてください。お母さんが去年亡くなり、東淀川区の実家をAさんが相続しました。昭和50年に建った木造2階建てで、土地は約66㎡。前の道は、車1台がやっと通れるくらいの幅です。
10月の平日の夜、Aさんはパートの帰りに阪急電車の中で査定書を開きました。気になったのは、価格の横の「要セットバック 約2.6㎡」という1行。検索してみると、出てくるのは用語の説明と相続税の話ばかりで、「で、うちは売れるの?」には誰も答えてくれません。
この記事では、Aさんの家を例にして一緒に順番を見ていきます。数字はすべて例え話のための想定です。
▶ セットバックとは、敷地の端の「細い帯」を道路として扱うこと
建築基準法では、家を建てる敷地は原則として建築基準法上の道路に2m以上接する必要があります。道路の幅は原則4m以上ですが、例外的に道路と扱われる細い道もあります。ただ、大阪市の古い街には、法律ができる前から家が並んでいた4m未満の道がたくさんあります。
そこで、こうした道のうち役所が指定したものは「道路とみなす」ことになっています(建築基準法42条2項。こう指定された道を「2項道路」と呼びます)。その代わり、原則として、法上の道路中心線から水平距離2mの線が、建築基準法上の道路境界線とみなされます。今見える舗装の真ん中とは限りません。また、この線が決まるだけで、土地の所有権や登記上の境界が自動的に移るわけではありません。建て替えるときは、その線より道側には家も塀も門も建てられません。この「下がること」をセットバック(道路後退)と言います。

▶ 再建築不可とは、困っているものが違う
「セットバックが要る」だけで、再建築不可と決まるわけではありません。後退に加え、接道や用途・規模などの条件を満たせば、建て替えを検討できます。後退する帯の面積と、残った敷地で建てられる計画を確認しましょう。
| セットバックが要る家 | 再建築不可の家 | |
| 建て替え | 後退と他の建築条件を満たせば検討できる | 現状の条件では原則できない。認定・許可等の可能性は個別確認 |
| 確かめるもの | 後退する帯・残る敷地・接道等の条件 | 接道等の支障と、改善や認定・許可等の可能性 |
| 買主の目線 | 「残る面積で何が建つか」 | 「今の建物をどう使うか」 |
前の道がそもそも建築基準法の道路ではない、接している幅が2mに足りない、という家は、現状では原則として建て替えが難しくなります。個別の認定・許可や接道条件の改善の可能性も含め、市の窓口・建築士に確認する話になります。
出典:大阪市・敷地と道路との関係。
再建築不可の場合は別の記事にまとめています → 不動産売却で損しない大阪府再建築不可物件の高値売却術
前の道が個人の持ち物(私道)の場合は、こちらも合わせて読んでみてください → 家の前の道が私道だった|大阪市の戸建てを売る前に見る3枚と、承諾書はいつ取るか
私は売却だけを扱っていて、建築や解体の工事は請け負っていません。だから「建て替えれば解決です」にも「そのまま買い取りで」にも寄りません。まず「どっちの話か」を分けるところから始められます。
この記事では、売り方を決める前に確かめることを「名前・幅・済み」の3点にまとめました。名前は前の道の種別(第2章)、済みは後退が終わっているか(第3章)、幅は何㎡減るか(第4章)です。この3つがそろうと、査定書の1行を自分の言葉で読めるようになります。
じゃあ、自分の家の前の道は何という道なのか。次の章で、1つ目の「名前」の調べ方を見ていきましょう。
第2章:前の道の「名前」を確かめる——2項道路・附則5項道路・建築線道路
▶ 大阪市には「附則5項道路」と「建築線道路」がある
前の道が4m未満のとき、大阪市の区分で出てくる名前は主に2つです。
・2項道路:第1章で書いた、道の中心から2m下がる道
・附則5項道路:幅4m未満の狭い市道で、戦前の「市街地建築物法」という古い法律で建築線(ここから先に建ててはいけない線)が一括で指定された道。大阪市の資料では、当時の大阪府の規則で「道の中心線から2mの線」を建築線にしたと説明されています
もう一つ、「建築線道路」という名前もあります。こちらも昔の建築線の指定で境が決まった道で、船場や生野区巽、平野区加美、住吉区苅田、東住吉区矢田などにあります。ただ、大阪市の区分では「幅4m以上の道」の側に入っていて、2項道路とは前提が違います。名前を調べて建築線道路だったら、後退の話になるのかを窓口で聞いてみてください。
聞き慣れない名前ですよね。私も新大阪の事務所から、淀川区・東淀川区・西淀川区の路地をよく歩きます。昭和の街並みが残る場所ほど、この話が出てきやすい印象があります。
附則5項道路も、大阪市の拡幅補助(第6章で書きます)の対象になっています。後退の話が出る道だ、ということです。ただ、実際にどこまで下がるかは、道ごとに扱いが違うことがあります。「うちは下がる必要がありますか」と大阪市の窓口で聞くのが一番確かです。
▶ 調べ方は2つ
1. マップナビおおさか(大阪市の地図サイト)で住所を入れて、道路の種別が載った地図(指定道路図)を見る → https://www.mapnavi.city.osaka.lg.jp/webgis/index.html
2. 大阪市役所の計画調整局 建築指導部 建築企画課に備え付けの「道路参考図」を窓口で見る
サイトで見て分かりにくいときは、窓口で地図を見ながら確かめるのが確実です。住所と地番が分かるもの(固定資産税の通知書や登記の書類)を持っていくと話が早く進みます。調べ方の細かい手順は、noteにも書いています → 再建築不可で断られた実家。壊す前に「断られ方」を3つに分ける
Aさんの場合、マップナビおおさかで実家の住所を入れると、前の道は2項道路と出ました(例え話です)。これで「名前」の手がかりが得られました。ただし、指定道路図は参考図で、正確な幅・境界や現況を証明するものではありません。現地と食い違う場合は、市の道路判定窓口で確認します。
出典:大阪市・道路種別と道路判定等。道路種別は電話・FAX・メールでは回答していないため、地図と資料を持って窓口へ。
▶ 豊中・吹田や阪神間の家なら
北摂や阪神間の家は、大阪府や各市が出している指定道路図で確かめます。名前の付け方は市によって違いますが、「2項道路なら原則として法上の中心線から2mの線を道路境界とする」という基本は共通です。4m未満の道すべてが2項道路という意味ではありません。片側だけの後退なども含め、その市の窓口で確認します。
道の名前が分かったら、次はいよいよ現地です。「もう下がっているのか、まだなのか」を確かめに行きましょう。
第3章:後退は「済んでいる」か「まだ」か——現地で見る3つ、取り寄せる2つ
▶ なぜ「済んでいるか」が大事なのか
昭和の家でも、前に一度建て替えたり増築したりしていれば、そのときに下がっていることがあります。逆に、建てたときのまま一度も下がっていない家もあります。
法上の道路境界線と現況を照合して後退済みと確認できれば、買主様は残る敷地で何ができるかを考えやすくなります。塀が下がって見えるだけでは、有効面積は確定できません。まだなら、建て替えのときに塀や門を動かすことになるので、その手間も含めて値段を考えます。同じ「要セットバック」でも、話の進み方が変わるんです。
▶ 現地で見る3つ
① 塀・門柱・植木の位置をメジャーで測る
通行の安全が確保できる範囲で、今の道幅と塀どうしの距離を測り、どこからどこまで測ったかを写真に残します。ただし、今の道幅の半分をそのまま法上の中心線にはできません。向かいだけが後退済みなどの場合は位置がずれます。資料で確認した法上の中心線から塀まで2mなら後退済みの手がかり、1.6mなら未後退の手がかりになりますが、現地採寸だけで確定せず、③の並びと記録を市の窓口・専門家に照合してもらいます。
② 道の境や中心を示す印を探す
道路の端や真ん中に、金属の鋲(びょう)や小さなプレートが埋まっていることがあります。「後退用地」などと書かれた表示がある家もあります。見つけたら写真に撮っておきます。ただし、その印が何の境界や測点を示すものかは、記録と照合するまで決めつけないでください。
③ 両隣と向かいの家を見る
最近建て替えた両隣や向かいの家で、塀が道から一段下がっていて、その手前がアスファルトになっていないか。周りが下がっているのに自分の家だけ道に出ている、という並びはよくあります。
最後に、正面・左・右の3方向から写真を撮ります。これだけで、あとで誰かに相談するときの材料がそろいます。
日曜の昼、Aさんも実家の前でメジャーを当ててみました。見た目の道の真ん中から塀までは約1.6mというメモになりました。両隣は建て替えのときに塀が一段下がっていて、Aさんの家だけが道に出ている並びです。「うちは、まだかもしれない。中心線を資料で確かめよう」。数字と並びは相談材料になります。後で基準となる道幅と中心線を確認した結果、塀まで1.6mだった、という想定で第4章の計算へ進みます。
売り出しを任せていただくときは、私も現地で道幅と塀の位置を一緒に測ります。ご自分で測った数字と照らし合わせれば、査定書の数字にも納得しやすくなります。

▶ 取り寄せる2つ
1. 建築計画概要書:過去に建築確認(建てる前の役所のチェック)を受けたときの記録です。当時、どこまで下がって建てたかが分かる場合があります。記載は当時の計画であり、工事がそのとおり完了した証明ではありません。現況や検査記録と照合します。大阪市では閲覧・交付に確認済証番号が必要で、昭和47年度以前は概要書がありません。住所・建築時の地番や登記資料を持ち、市役所3階の建築企画課5番窓口で記録の探し方を相談してください
2. 地積測量図や道路の境の記録:法務局で取れる測量の図面や、道との境を決めたときの書類です。これも古い家ではないことがあります
書類がなくても、売れないわけではありません。「ないことが分かった」のも大事な情報で、測量が要りそうかどうかの判断につながります。
▶ 見落としやすい落とし穴
建物は下がっているのに、塀や植木、エアコンの室外機だけが下がった部分に出ている家もあります。売るときに「これは動かしますか」という話が出ることもあるので、写真で確かめておくと慌てずに済みます。売り出しの前に塀を動かしたり、下がった部分を整備したりするかどうかは、物件によって私の答えも変わります。道の並びや買主様の層を見てから、一緒に決めましょう。
もう一つ、よく聞かれることがあります。下がった部分は、多くの場合、登記の上では売主様の名義のままです。大阪市の拡幅補助でも、原則として所有権は移らず、整備した後も持ち主が管理する扱いになっています。
ご自分の家がどれに当たるか分からないときは、LINEで状況を2〜3行送ってください。たとえば「東淀川区の実家で、査定書に『要セットバック約2.6㎡』と書かれていました。前の道は3mくらいです。もう下がっているのかどうかも分かりません」くらいで大丈夫です。→ 公式LINEで相談する
済んでいるかの見当がついたら、次は3つ目の「幅」です。何㎡減るのかを、自分の手で計算してみましょう。
第4章:何㎡減るかを自分で計算する——敷地だけでなく「建てられる大きさ」も変わる
▶ 式に当てはめる
以下は、両側へ中心振分けで後退する2項道路で、基準となる中心線・後退前の道幅が確認でき、道幅と間口がほぼ一定の長方形の帯になる場合の概算です。後退済み部分をもう一度差し引かないよう、66㎡に後退部分が含まれる想定にしています。今の見た目の幅だけでは確定できません。
この前提で使う式は2つです。
・後退する幅 = 2m −(道幅 ÷ 2)
・後退する面積 = 後退する幅 × 間口(道に接している長さ)
Aさんの家で計算してみます。道幅は約3.2m、間口は約6.5mです。
・後退する幅:2 −(3.2 ÷ 2)= 2 − 1.6 = 0.4m
・後退する面積:0.4 × 6.5 = 2.6㎡
・残る敷地:66 − 2.6 = 約63.4㎡
査定書の数字と同じになりました。もし違っていたら、基準とした中心線・幅、後退済み部分の扱い、敷地の形状が違うのかもしれません。「どの資料の、どの線から、何mで計算していますか」と担当者に確認します。

▶ 向かいが川や線路なら「片側だけ」下がることも
向かい側が川・崖・線路などで、そちらは下がりようがない道もあります。その場合、法律では反対側(こちら側)だけで4m分を確保する決まりです(一方後退)。計算は「4m − 道幅」になり、下がる幅が大きくなります。大阪市での細かい運用は道ごとに違うことがあるので、該当しそうなら窓口で確かめてください。
▶ 「建てられる大きさ」も変わる
ここは見落とされやすいところです。建ぺい率(敷地に対して建物を建てられる広さの割合)も、容積率(敷地に対する延べ床面積の割合)も、下がった後の面積が土台です。
もう一つ、前の道が12m未満だと、道幅に決まった数字を掛けたものが容積率の上限になります。掛ける数字は用途地域(街ごとに決められた建物の使い方のルール)で変わり、住宅の多い地域では0.4か0.6です。大阪市の取扱いでは、第一種・第二種中高層住居専用地域などが0.4です。風致地区を除く第一種・第二種住居地域や準住居地域は0.6とされています。
仮にAさんの家が0.4の地域にあって、道幅を4mとして計算すると、4 × 0.4 = 160%です。都市計画で200%と決まっていても、上限は160%になります。0.6の地域なら4 × 0.6 = 240%なので、200%のままです。
0.4の地域だった場合、Aさんの家ではざっくりこんな差が出ます(計算値)。
| 下がる前の見た目 | 下がった後・道幅を考えた後(0.4の地域の場合) | |
| 敷地 | 66㎡ | 約63.4㎡ |
| 容積率 | 200% | 160%(道幅4mとして) |
| 延べ床の上限 | 132㎡ | 約101.4㎡ |
左の132㎡は、後退と前面道路の制限を無視した単純計算で、以前は合法的に132㎡建てられたという意味ではありません。この想定では、制限を織り込んだ容積率上の目安が約101.4㎡になる、という比較です。高さ・斜線・建ぺい率など他の制限で、実際に建てられる大きさはさらに変わります。0.6の地域でも、敷地が減る分だけ132㎡が約126.8㎡になります。2項道路の場合、容積率の計算では道幅を4mとして考えます。どの地域に当たるかは、大阪市の窓口や建築士さんに確かめてください。
▶ 道の真ん中が決まっていないとき
道の中心線がはっきりしていない場合は、測量図や過去の記録を調べ、必要に応じて現地測量と市の担当窓口との確認・協議を進めます。測った人が単独で自由に線を決めるわけではありません。土地家屋調査士さん(土地の測量と登記の専門家)や建築士さんと連携し、向かいの家の立ち会いが必要になることもあります。必要なときは、私から土地家屋調査士さんをご紹介しています。境界の確かめ方と測量の種類は、こちらの記事で書いています。
・境界確認 → 不動産売却で大阪府の境界ポイント確認が売却成功のカギとなる理由とトラブル防止策
・測量 → 不動産売却で大阪府物件の現況測量と確定測量を使い分けてトラブル回避する具体策
私は査定書を書く側として、「何㎡で見ているか」をお客様と同じ式で共有するようにしています。数字の根拠を隠さないことが、「売は信頼」の一番手前にあると思っているからです。
これで「名前・幅・済み」がそろいました。面積が分かれば、値段の話ができます。次の章では、査定と広告で何が変わるのかを見ていきましょう。
第5章:査定と広告で変わること——「有効面積」で見る買主と、隠せない表示
▶ 買主様は「下がった後の面積」で土地を見る
建て替えを考える買主様は、下がった後に残る面積(有効面積)で土地を見ます。66㎡の土地でも、63.4㎡の土地として値段を考えるわけです。
まず面積の差だけを単純に金額へ置き換えるなら、後退面積 × 仮の土地単価という試算ができます。これは実際の値下がり額を算定する公式ではありません。たとえば、仮にその辺りの土地が1㎡あたり30万円だとすると、2.6㎡ × 30万円 = 約78万円。単価は場所によって大きく違うので、この数字はあくまで考え方の例です。
ただ、前の章で見たように「建てられる大きさ」も変わるので、実際の値段の差はこの式だけでは決まりません。どんな家を建てたい買主様が多い場所か、で変わってきます。
▶ 隠して高く売る道はない
広告では、セットバックが要ることを書く決まりがあります(不動産の表示に関する公正競争規約という、業界の広告のルール)。後退する部分が土地面積のおおむね10%以上となる場合は、そのおおむねの面積も表示します。Aさんの家のように後退部分が敷地の約4%でも、「要セットバック」の表示は外せません。
私は、後退部分の割合が小さくても、セットバック部分があればその面積を広告に書くようにしています。買主様が最初から「下がった後の面積」で考えられるようにするためです。
契約の前には、重要事項説明(宅地建物取引士が買主様に大事な点を説明する手続き)でも伝えます。隠して高く売るという道は、そもそもありません。それなら最初から正直に出して、「下がった後でもこれだけ建てられます」と見せたほうが、買主様も安心して検討できます。
▶ 査定額が会社ごとに違うときは
査定額が会社によってバラバラなときは、金額より先に次の2つを並べてみてください。「後退面積を何㎡で見ていますか」「下がった後の面積で計算していますか」。前提がそろえば、差の理由が見えてきます。比べ方はこちらの記事にまとめています → 査定額が3社で違う大阪市のマンション|媒介契約の前に並べる順番
▶ この資料は、どの買主様にも同じものを
私が売り出しを任せていただいたときは、後退面積の計算、現地の写真、道の種別をまとめた資料を作ります。「名前・幅・済み」を1枚にしたものです。この資料は、他の不動産会社から来た買主様にも、まったく同じものをお渡しします。レインズ(不動産会社どうしが物件情報を共有する仕組み)を通じて来た方でも同じです。私は囲い込みをしません。情報が同じなら、どこから来た買主様でも同じ土俵で検討できるからです。
私は買主様側の建築を請け負わないので、後退面積を小さく見せる理由も、大きく見せる理由もありません。そのまま出すだけです。
値段の筋道が見えたら、最後の大きな分かれ道です。壊してから売るか、建てたまま売るか。次の章で一緒に並べてみましょう。
第6章:壊してから売るか、建てたまま売るか——補助の期限と「買取しかない」の聞き方
▶ 大阪市の補助は2つ
| 狭あい道路の拡幅補助 | 細い道沿いの古い家の除却補助 | |
| 中身 | 対象工事の実費と市の基準額の低い方の2/3以内 | 対象費用と市の基準額の低い方に補助率を掛け、上限を適用。戸建ては対策地区で上限105万円/戸、重点対策地区で上限170万円/戸。一部区域は別条件 |
| 申請の期限 | 原則として工事契約予定日の30日前、かつ2026年12月28日まで | 着工予定日の40日以上前、かつ2026年12月28日まで |
| 完了報告の期限 | 2027年2月26日まで | 2027年2月26日まで |
| 注意 | 原則、交付決定後に工事契約へ。申請前に契約した場合の特例は市へ確認 | 申請前の工事契約は原則対象外。契約済みの場合の例外や着工時期は市へ確認 |
金額は一律支給ではありません。除却補助の対策地区は原則として昭和25年以前の木造住宅等が対象で、補助率は1/2以内。重点対策地区は昭和56年5月31日以前の木造住宅等で4/5以内ですが、一部区域は2/3以内・戸建て上限100万円/棟など別条件です。Aさんの昭和50年築という想定だけでは、対象とは決まりません。場所・築年・道路条件をそろえて確認します。
拡幅補助でも対象道路・区域や対象工事に条件があり、昭和26年以降に築造した塀等の撤去費は対象外です。申請最終日まで待てば間に合うという意味ではなく、契約・着工から逆算します。除却補助の請求期限は2027年4月30日です。
出典:大阪市・狭あい道路拡幅促進整備事業、大阪市・狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度(2026年10月7日確認)。
窓口は大阪市 都市整備局 住環境整備課(06-6208-9235)です。どちらも年度の予算の範囲で、条件があります。「先に壊しちゃった」だと受けられないことがあるので、業者と契約する前に一度電話してみてください。解体業者さんを探すときは、私からご紹介することもできます。
▶ 壊すかを決める3つの問い
壊したほうがいい家も、建てたまま売ったほうがいい家もあります。正直、家ごとに答えが違います。次の3つを家族で話してみてください。
1. 今の家に、まだ住める状態か:雨漏りや傾きがひどくなければ、リフォームして住みたい買主様もいます
2. その辺りの買主様は、建て替える人と住む人のどちらが多そうか:新築が並ぶ通りなら建て替え派が多い印象です。古い家に手を入れて住む人が多い通りなら、住む派が多いでしょう
3. 期限までに解体と完了報告が間に合うか:12月28日の申請から逆に数えると、10月のうちに方向を決めておきたいところ
空き家の片付けや、空き家の通知が届いたときの話、リフォームの見積書の見方は、それぞれこちらに書いています。
・残置物の片付け → 大阪市の実家を不動産売却する際に残置物を先に処分すると損する3つの理由
・空き家の通知 → 空き家の通知が届いた大阪市の実家、年内に何を決める?段階と4択
・売る前のリフォーム見積書(note)→ 売る前のリフォーム見積書、ハンコの前に。直す・頼む・壊す・そのままを分ける
なお、2025年4月から、木造2階建て等で行う法上の「大規模の修繕・模様替」にも建築確認が必要になりました。主要構造部の一種以上の過半を修繕・模様替する工事が対象で、水回り設備の交換などすべてのリフォームが対象という意味ではありません(4号特例の縮小。小さな木造住宅で、建築確認の審査の一部を省けていた特例が狭まったこと)。リフォームして住む買主様でも、計画によっては道の話が出てくることがあります。確認申請が必要だから一律に新築と同じ後退工事が必要になる、とも限らないため、既存建物の扱いを含めて建築士に確認します。
参考:国土交通省・建築確認の対象見直し。
▶ 「道が細いので買取で」と言われたら、聞く3つ
Aさんが言われた「買取のほうが早いかも」。買取業者に売るのが合う家も、実際にあります。ただ、理由を聞かずに決めなくて大丈夫です。次の3つを聞いてみてください。
1. 後退面積を何㎡で見ていますか
2. 仲介で売り出したら、どんな買主様を想定しますか
3. 買取の金額と、仲介で売れたときの手取りの差はいくらですか
この3つに答えてもらえれば、「早さ」と「手取り」のどちらを取るかを、自分で選べるようになります。1つ目は、第4章の式で出した数字とそのまま比べられます。提示額の並べ方はこちらにも書いています → 大阪市の家を業者に売るか仲介か|提示額を受け取ったら並べる5行
私は自分で買い取ることはしません。そのうえで、買取のほうが売主様のためになる場合は、できるだけ高く買ってくれる買取業者を探します。「買取しかない」と言われていた家を、仲介で売り出して買主様が見つかったこともあります。だから、仲介か買取かは、後退面積と残る敷地を見てから一緒に決めましょう、とお伝えしています。
ここまでで、確かめる順番は全部そろいました。最後の章で、今日からやることをまとめます。
第7章:まとめ+次のアクション
▶ まとめ3行
・セットバックが要るだけで再建築不可とは限らない。後退と他の建築条件を確認する
・値段は、下がった後の有効面積と、建てられる大きさで決まる
・名前・幅・済みを確かめてから、売り方を決める
▶ 今日できること
査定書の「要セットバック」の行に印を付けてください。そして、道幅と間口が書いてあれば書き写し、第4章の式で後退面積を出してみます。査定書の数字と合うかどうか、それだけで十分です。
▶ 1週間以内にすること
・マップナビおおさかで、前の道の種別を見る
・実家に行ったら、メジャーで道幅と塀の位置を測り、印を探して、正面・左・右の写真を3枚撮る
・補助を考えるなら、2026年12月28日の申請期限を家族と共有しておく
▶ 相談したくなったら
査定書の写真と、前の道の写真を1枚送っていただければ、後退面積の見方から一緒に確かめます。相談したからといって、売る・私に頼むを決める必要はありません。相談には代表の私が2日以内を目安にお返事します。営業電話はしません。
→ 公式LINE(友だち追加)公式LINEで相談する
お電話なら 06-6842-7377(10:00〜19:00・水曜定休)でも受けています。
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
「要セットバック」の1行は、小さな字のわりに、気持ちをざわつかせますよね。でも、中身を分けてみると、後退する部分は敷地の端の帯で、前提が確認できれば何㎡かを概算でき、済んでいるかは現地と書類を照合して確かめられます。分からないものが分かるものに変わると、「買取しかないのかな」という不安も、少し落ち着いてくるはずです。
全部を一度にやらなくて大丈夫です。今日は査定書に印を付けるだけでも、一歩前に進んでいます。あなたの家にとって納得のいく売り方が見つかるよう、この記事が少しでも役に立てばうれしいです。













